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    Kameiyafwon

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    るつ亀第一話だいたい

    ##るつかめ

    あれから大きな荷物を両手に抱えて、僕の家に二人で持ち帰ってきた。時刻はとっくに十七時を回っている。
    「司くん、今日はもう遅いから帰ったほうがいいんじゃないかい?」
    「ああ、申し訳ないが亀をひと目みたら帰るつもりだ」
    「ん、ちょっと待ってね」
    あのピンクのバケツごと亀くんを持っていく。司くんは目をきらきらさせて、亀くんを覗き込んでいた。
    「よかった、生きているな」
    「親が午前中に動物病院に連れて行ったみたいだけど、特に異常もなさそうだって」
    メモ用紙をひらひらさせれば、司くんはそれを掴んで読む。ほ、と肩を落とすと亀くんの甲羅をちょいちょいと撫でた。
    「良かったな、いい人に拾われたぞ」
    慈愛に満ちるその声は、聖人そのものだ。清らかで、純真で、無垢。
    いい人は君のほうだ。見て見ぬフリをすればいいものを、顔も知らない、存在もモブ程度にしか認識できないような子どもたちのために手を出し、救おうとした。いい人と言わずになんと言うのだろう。
    そんないい人が、僕の恋人だなんて。
    たまらない。
    「亀くんばかりずるいなぁ」
    衝動のままに司くんを背後から抱きしめた。驚いて跳ねる肩に額をぐりぐり押し付ける。
    「類っ、おまえ、放せ!」
    「ええ~」
    ぬくぬく。子ども体温の司くんにくっつくと癒される。ほんの少しだけささくれた心がすぐにぴったり元通りになるくらい。司くんはマイナスイオンを体から発しているに違いない。
    ぐりぐりしていると、諦めたように司くんはされるがままになってしまった。これはこれでつまらないから開放してあげることにする。
    シャッターから出ると、もう空はとっくに暗くなっていて、星が見えにくいこの都会では該当だけが頼りとなる暗さだった。
    「早く住居を作ってやれよ」
    「分かっているよ。また明日」
    「ああ、また明日」
    手を振り合って、ここでお別れする。
    (司くんとの約束どおり、早く亀くんの住居を仕立ててあげないとね)
    生物の環境を整えることは好きだ。だから、多少のめりこんでも仕方ないだろう。
    そこからカスタムなりテラリウムなりにこだわっていたら、みるみる間に時間が溶けていった。
    亀を陸地代わりの石畳に置く頃には、部屋が明るくなってきた。
    ああ、つまりこれは。
    「てつや、だ」
    休日とはいえ、これは流石にやりすぎたかも。
    亀くんの甲羅を撫でてあげると、嬉しそうに首を伸ばしてきた。可愛い。司くんみたいに愛情表現が豊かな賢い子なのかも。
    「ふふ、これからよろしくね」
    お日様に照らされた亀くんは、犬のように口を開けてお返事した。
    あ、返事じゃない、これは餌を催促しているんだと気づいたのが五分後。バイトに出かける二十分前のことだった。
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