Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    komaki_etc

    波箱
    https://wavebox.me/wave/at23fs1i3k1q0dfa/
    北村Pの漣タケ狂い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 148

    komaki_etc

    ☆quiet follow

    ファンクロ/漣タケ

    #漣タケ

    サクラ「見てくれ、ファング、アーモンドの花だ!」
     こんなにたくさん、と木の下でくるくる回ると、ファングが溜息がちに肩を落とす。
    「サクラだ。ちょっと違う」
    「ふうん、違うんだ?」
     ほんのり薄ピンク色の、優し気な花びらが舞う。おいしそうな匂いがする。花びらはきっと食べられないけれど。
    「オレだって詳しいわけじゃねーよ」
    「まあ、そりゃそうだよね」
     ファングが花に詳しいだなんて、そんなハズがない。仕事で庭園に寄ったって、見向きもしないんだから。セブンだって笑うはずだ。
    「……あ」
    「どうしたの?」
    「バラ科だな、アーモンドもサクラ」
    「へえ」
     胸の紋章が躍る。僕らは薔薇に囲まれて生きている。血を吸って真っ赤な、絢爛な花。
    「どっちだっていいや。依頼者もターゲットも、この花を知らずに死んでいくんだろうから」
     地面に落ちた花びらを掬って、ぱっと頭上に広げる。ヴェールみたいだ、と笑みがこぼれた。眉間に皺を寄せているファングは心底不機嫌そうで、僕のお遊びが終わるのを待っている。
    「気が済んだかよ」
    「そうだね。あ、ファング」
     ついてる、と言って、彼の髪に触れた。嫌がられたけど仕方ない。花びらが新しいチャームポイントになってしまうよりよっぽどいいだろう。
    「……ね、花の命って、短いよね」
    「オマエはしぶといだろーよ」
    「どういう意味!」
     儚げな花の影から覗く鋭い眼光に、そういうキミもね、と返す。僕たちは地獄行きは決まっているけれど、まだ当分行く予定はない。
    「……ね。地獄で会ったら、キスしようね」
    「ハッ、誰が」
     僕の頭から花びらをひとつ摘まんで払った彼の手を取って、木々の真ん中まで歩いた。
    「誓いのキス」
    「それよりタバコが吸いてえ」
    「僕の唇より重要なワケ?」
     そんなことより、と遠くの匂いを嗅ぐファングに、ハイハイ、と返事をする。僕らは、今日も明日も、血まみれの花。
     僕たちの胸に散る真っ赤なシルシは、空から舞う薄ピンク色では隠せなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    kurautu

    DONE一週間ドロライさんよりお題「クリスマス」お借りしました!
    雨とクリスマス 初めての恋にあたふたしてほしい
    雨は 冷たい雨が凍りついて、白く儚い雪へと変わる。そんなことは都合よく起きなかった。僕はコンビニの狭い屋根の下で、雑誌コーナーを背中に貼り付けながら落ちてくる雨を見上げていた。
     初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
     傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
    1915