『深夜に甘い、ひとときを』「……」
現在時刻、午前三時。私はベッドの中で身動きが取れない状況で目を覚ます。
「んー……しののめ……」
その理由は人の名前を寝言で呼んでへらりと笑顔で浮かれている大きな子犬が思い切り抱きついてきているからで。仰向けに大の字で眠る時もあれば、本当に子犬のように丸まって寝息を立てている時もあり。今日はこのパターンですか、と溜めた吐息をゆっくりと吐き出す。
「……幸せそうな顔」
ぽそりと呟いて何とか動かせる掌で彼の柔らかな髪に触れればそっと撫でて。寝直そうにも少し目が冴えてしまったこの状況を少し楽しむことにした。
「神谷」
甘く、名前を呼んで。彼からの反応が何か返ってこないかと触れる髪に指を通して。
「……動けないんやけど、そのまま朝まで寝る気ですか」
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