ぜんぶ、雨のせいそれは、突然の事だった。
銃兎は、理鶯と共に彼のキャンプ地に向かっていた。理鶯の先導で獣道を進み、雑談を交わしながら歩みを進める。ようやく中腹を越えた頃、ふと頬に小さな水滴が落ちるのを感じた。それの意味に気がついたときにはもう遅く、みるみるうちに大粒の雨が二人に降り注いだ。
天気予報では今日雨が降るなどいっていなかった気がしたが、この季節や森の中ではそんな言葉は通用しないのだろう。せめて近くに大きな木でもあれば、と思い周囲を見渡してみるも、雨を防げそうな木などどこにもない。
銃兎は雨に打たれながら理鶯の判断を仰ぐ。すると彼は行き先を指差し、先へ進むことを示していた。「少し急ぐぞ」といい、彼は足取りを早める。こういう状況に馴れている彼の判断は頼もしい。銃兎はその背中を見失わないよう、懸命に道を進んでいった。
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