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    screamwanderer

    @screamwanderer

    ٩(・谷・)و

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    screamwanderer

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    sky二次創作「ケープ振り合うも多生の縁」の
    うちよそオールスター企画「残花の葬列」
    🍠さん🌟さんふさまのキャラと(・谷・)のキャラ達大集合のお話をかかせてもらいました!!
    こちらのキャラ一覧イラストと一緒にみてもらえるとよりわかりやすくなると思います
    https://poipiku.com/4271618/9912663.html
    協力・快諾してくれたお三方、本当に有難うございます!

    #ケープ振り合うも多生の縁
    #sky創作
    skyCreation
    #sky星を紡ぐ子どもたち
    childrenSpinningSkyStars

    うちよそオールスター企画 残花の葬列頭の隅に入れとくとちょっと読みやすくなる用語設定
    覚えてなくても何か知らん単語あるな程度で読み流せます。

    ・星喰
    細かい設定はいっぱい詰まってるんだけどかいつまんで
    skyの惑星で過去に生きてた沢山の精霊が置いて逝った悪意の感情を凝縮した煮凝りのような化け物。結構強い。
    これに飲み込まれると心も体も蝕まれて、死亡するか廃人になるよ!
    今日もどこかで光を渇望して誰かに襲い掛かってるよ!

    色んな星の子の団体の共通敵。
    見つけたら皆でレッツ滅殺☆彡

    ・落陽の子
    星喰に飲み込まれても廃人にならず生還した子。
    物語の中での古い名称。
    とてもいっぱいのデメリット(説明省略)とほんのりある能力開花とステータスUPを背負って生きているかわいそうな子達だよ!

    ・書庫塔
    myワールドでは書庫の施設は複数あり、精霊のいなくなった現在は星の子が組織した団体が管理しています。
    塔ごとに団体が存在し、その方針も管理する団体によってかわります。





    うちよそオールスター企画 残花の葬列

    オリーブやノエが所属する各書庫塔、衛星保護団体、それぞれの見回り部隊から、コアの光を多かれ少なかれ失った星の子達の回収報告が複数あがる。
    ノエ「星喰の仕業なら、共同戦線をはって対処したいが…あれらの後としては妙でな。お二人にもみてもらいたく」
    光を失ってはいるものの、精神の崩壊をおこしていない重症の星の子達が横たわっている。
    オリーブ「違うわねぇ」
    しぐ「星喰の痕跡は感じませんね、コア(魂)の欠損に似てるように見えますが…」
    ノエ「そうか…最悪の事態ではなさそうでよかった。」
    報告があった件数の星喰が発生しているかもしれないと焦燥していたノエが少し安堵する。
    しぐ「結構な数ですね、その割には死亡者はいないと…見つかってないだけかもしれないですが」
    報告書の束と横たわる星の子達をみて呟く
    ノエ「軽症者や会話ができるものは黒い何かに襲われたといっていてね」
    嫌な予感がして手にしていた束をノエに返そうとするしぐ。
    ノエ「星喰でないとなると、ここからは各団体での対処になる。そこで、私達は貴方達にも調査を依頼したい。」
    しぐが嫌だなぁという顔をかくしもせず断りの言葉を吐こうとし
    オリーブ「私の範囲じゃないのよねぇ、あなたが行きなさいな」
    しぐ「っ、俺だって!というかオリーブさん勘違いしてませんか?俺は貴方の部下じゃないですよ、利害関係だけでしょう」
    オリーブ「あら、いいのかしら?あなたが青い片割れだった頃のつけ、まだまだあると思うのだけど」
    しぐ「くっ、過去の自分が恨めしい!」
    返せなかった報告書の束を握りしめ嘆く。
    ノエ「すまないね、まだまだこちらの人員補充が十分じゃなく手が足りないんだ。私個人からになるが報酬に色も付けよう」
    さっさと帰路につくオリーブ見送りながらノエが苦笑する。
    しぐ「…一人そちらの集団訓練に混ぜたいやつがいる。所属させる気はない。」
    ノエ「わかった、融通を利かせよう。」
    しぐ「依頼料も最終的な人数分請求しますからね!!もー、やだよぉ!!わぁぁんっ」
    ノエ「ははは、それも了承した。頼んだよ」
    口ではぐずりながらも束を読み込んでいるしぐの肩を叩き、お互い苦労するなとノエが励ます。


    しぐとノエ達が集まっていた同時刻、一人と二匹で花の採取にむかったダビウムに影が迫る。
    のばされた影をあわい極彩の揺らめきが遮った。
    白銀「美しい花の子よ、きみが手折られるのはもったいない。さぁ、はやくここら離れなさい」
    白い角をはやし黒い蝶と暗黒猫をつれた星の子が優しい声色で逃げろと告げてくる。
    どちらも関わらない方がいいと判断しダビウムは連れの子を抱きよせその場からはなれた。

    レッチェ(マナティ)とツェル(カニ)を抱えながら家である花屋に帰還する。
    ステラ「ダビウムさん、おかえりなさい。庭園つかわせてもらってました」
    先ほど経験した異常な光景から、穏やかな日常に帰還した安堵で強張っていた体が緩む。
    ダビウム「いらっしゃい、ステラさん。今日もありがとうございます、あそこは星の子の気配がないとすぐあらされてしまうから助かってるんですよ。」
    モコ・ロロ「こんにちわー!」
    気を取り直し開店の準備をしていると双子がやってきた。
    ダビウム「モコ、ロロ!いらっしゃいませ、いま準備しますね」
    そこに赤いたなびきが降りてくる。
    しぐ「おー、よかった。そろってるな」
    ちいさな姫をそっとおろしステラの方へいっておでと促す。
    はんなり「すてらちゃぁん、だっこー!」
    ステラ「はんなりさん、しぐさんこんにちわ!」
    ステラに弾力のある衝撃が飛んでくるが、身じろぎせずうけとめる。
    しぐ「皆さん、こんにちわ。ダビウム、悪いけど一室かして。というか君も聞いてくれ」
    普段はのんびりと花笑む茶室に緊張した面持ちが並ぶ。
    しぐ「ちょっと厄介な事がおきてな、一応ここのメンツにも注意喚起しておこうと思って」
    起こっている事をかいつまんで説明し、気を付けてほしいと伝える。
    話をきいていたダビウムの表情が曇る。
    ダビウム「あの…」
    先ほどあった事をダビウムが話す。
    ステラ「そんな!どこかお怪我は?!」
    お互いの手を合わせて震えあがるモコとロロ。
    しぐ「…ふぅん、その白角野郎の特徴と場所おしえてよ」

    しぐ「この辺かな?」
    ダビウムから聞き出した花畑にしぐ達が降り立つ。
    湯豆腐「嫌な感じは残ってる」
    フユキ「魔法の痕跡もあるね」
    残る気配にカビ子がはんなりを背にのせて警戒する。
    しぐ「当たりかぁ、というか皆お留守番しててほしかったんですが」
    湯豆腐「一人で君を維持できると思っているの?」
    フユキ「魔法の対処もできないでしょう」
    しぐ「ぐうのねもでません…でも本当にあぶないんですよ…」
    冷ややかで優しい二人の言葉にしゃがみ込み花をむしっていじける。
    それもつかの間、木々の方へ殺気をはらんだ視線を向ける。
    何かいる。
    白角「んん-、待ちたまえ。私にその意思はないよ。」
    淡い極彩の角にやわらかく舞うケープをたずさえた星の子が姿を現す。
    警戒を強める面々
    しぐ「…話す気はあるのか?」
    白角「ふーむ、そうだねぇ。おっと、言ってるだろ争う気はないと。その手にかけてる物をおさめておくれ」
    ひらめくケープとおなじようにのらりふらりと動作も言動も怪しい星の子が歩み寄ってくる。
    白角「うんうん、君たちに決めようか。正直手を焼いていたんだ、しかし少し込み入った話になる。もう少し落ち着ける場所で話さないかい?ここはやつの縄張りになってしまっている。」
    少し偵察をしてノエたちに報告と共に投げようとしていたのに、核心が近づいてきた事を察してげんなりしながらしぐが顎で行先を示す。

    件の花畑から川を一つはさむほど離れ、怪しい白い角の星の子と対峙する。
    白角「今あそこら一帯は光を吸う化け物たちの根城になっているんだよ」
    湯豆腐「僕たちと何が違うの?」
    僕らだって闇の花をやき、精霊の残りかすに火を灯し光を吸い集めるものだと言う湯豆腐。
    白角「それは今の理では正しい行動だね。でもあいつらはちがうんだよ、君達や光の生物が体に蓄えた光を根こそぎ吸いつくそうとする落ちた者たちなんだ」
    悲しそうに視線を落とす白銀、対して疑念をこくするフユキとしぐ。
    フユキ「ずいぶん含みのある物言いをしますね」
    しぐ「情報に隠し事のある依頼は商談にあたいしないな」
    白角「それは残念だ、でもねぇこれ以上はこの事態に必要な情報ではないのだよ。もっと私的な…感情的な物さ。私が秘めているのはね。」
    ひらりはらりとケープをゆらし、指先で遊ぶ。
    白角「今を生きる君たちはあれを化け物として狩ってしまえばいいのさ。…落ちたまま存在し続けるのはどちらもつらく悲しい事だからね」
    口をへの字にしたしぐが空を仰ぎ見る。
    しぐ「あー!めんどくせー!!とりあえず、報告に戻るぞ!!そこの白角、お前も来い!!」
    フユキがやれやれと肩をすくめ、お子様達を回収していく。
    白角=白銀「おやおや、デートの誘いにしてはいささか雑だねぇ。それと私は白銀(しろがね)と呼んでもらっているよ。」
    しぐ「うっせーわ、お前みたいなやつそんな上等なもんに誘う訳ねーだろ。縛り上げていかないだけ上品だろうが」


    しぐ「というわけで、訳知りの奴をつれてきました。できればあとはそちらで調理してほしいのですが…」
    白銀「初めまして、こんにちわ。揺蕩う果実に凛々しき指揮者よ。白銀と呼んでくれたまえ」
    ノエ「はじめまして、白銀さん。ノエーリアといいます、どうぞノエと。ここの責任者のようなものです。」
    オリーブ「おやまぁ、めずらしいのをつれてきたわねぇ。久しぶりに見るわ」
    軽く経緯を説明し、白銀をノエに引き渡そうとする。
    ノエ「しぐ君、悪い。星喰でないのならと上からの人員が撤収してしまってね…一から説明する手間も省けるし、戦力的にも彼はそのまま君に任せたい」
    元よりすくなかったノエの手ごまがへり、改めてオリーブに頼んでいる所だった。
    しぐ「シッテター!ソウナルヨネー!!あー、ちきしょう帰って寝てたい!!」
    苦笑するノエに集まってきている情報をお互いに共有し、合間合間に白銀が縄張り情報を訂正していく。
    ノエ「…ずいぶんとその化け物たちは数がいるんだな」
    オリーブ「あなた達は減って…それこそ絶えたと思っていたけれど、まだまだいるのねぇ。」
    嫌悪を隠さない冷えた声色
    白銀「集められ眠りを与えられた子達が扉の崩落で起きてきたのさ。」
    ノエがしかめた顔で白銀とオリーブをみる、しぐがそうでしょうそうでしょうとノエと視線を交わす。
    ノエ「対処するにあたって、情報はあればあるだけ嬉しいのですが」
    オリーブ「何も変わらないわ、むかってくるものを排除するだけよ」
    白銀「彼女の言う通り、何者であるかは君達が欲してる情報とは別物さ。襲ってくる脅威を取り除くことだけに集中すべきだよ」
    しぐがブーイングをしつつ、机に広げられた地図の印を自分の地図に書きうつしていく。
    白銀「そうそう、化け物を討伐した際に何かしら落し物があるんだ。それはしっかり回収してくるとよい。それを使って被害をうけた子達を元に戻す手伝いができるから、あまり時間がたっていると難しいが。」
    ノエ「対処にあたっている者に通達しよう。他には何かないか?期間があるのか?」
    白銀「猶予はあと1週間程度と考えてくれ。あと保護している子達に黒い印が体のどこかにある子はいないか調べてくれないか?一部の物は食べきらなかった子に印をつけて再度狙ってくる習性がある。今はまだ動き回るには十分な糧がなく縄張りに入った獲物を狩っているだろうが、そのうち印を辿ってくるだろうね。印のある子達を隔離して守りを固める事をお勧めするよ。」
    ノエ「それはまた、頭痛のする話だな」
    組織的に動いているとはいえ、戦える星の子は少ない。
    もとより戦える者たちは集団に組みいる事をあまりしない。己で守りたいものが守れるのだ、しがらみが多くなる事はさけるだろう。
    ノエが控えていた部下に伝達を頼み、オリーブに再び頼み込む。
    オリーブ「仕方がないわねぇ、守るのは嫌よ。狩る方なら手伝ってあげるわ。」
    地図をのぞき込み狩場を定め始める。
    しぐ「なぁ、そのマーキングって奪われてなくてもつく事あるのか?ああ、オリーブさん、行くとこちゃんと教えてくださいよ。かぶったら効率悪いですし巻き込まれたくないです…」
    オリーブさんの魔法は根を張り後を引くから受けたくないんだよなぁとこぼしながら、花屋(ダビウム)の事を思い出す。
    白銀「その場合もあるね、心当たりが…ああ、もしかして橙色の花の子の知り合いかい?」
    しぐ「多分同じ子を思い当ってるな」
    舌打ちしながら、机の地図にダビウムが襲われ白銀と出会った花畑の場所の印を上書きする。
    しぐ「ここは俺が行きます。周辺のポイントも行ければいいですがまずは一匹対峙してみないと、どの程度余力があるかわからないので」
    オリーブ「なら私は捨て地の方から潰していくわ、ティゴには孤島からまわるように言っておきましょう。」
    扉にむかう二人に頭を下げるノエ。
    ノエ「助かります、こちらはほとんどを防衛にまわすことになるかと。できるだけ、あなた達のように雇われてくれる方に声をかけてまわってますが」
    オリーブ「ティゴ…見分けつくかしら?」
    しぐ「ひー、おっかねぇ。同士討ちは勘弁して下さいよ!!」
    にっこりと笑ったオリーブの杖がしぐの脇腹を殴打する。

    ノエの塔の外で待ってもらていたフユキ達に移動しながら状況と方針を説明し花屋に急ぐ。
    しぐ「ダビウム!いるか!?」
    花屋に再び降り立ち叫ぶ。
    ダビウム「どうしたの?」
    驚いて出てくる花笑む茶室のメンバー達。
    しぐ「おい、白角野郎。どこにあるとかわからないのか?引ん剝くようなことはあまりしたくないんだが」
    白銀「白銀と呼んでくれないか。ふむ、少し近くによっていいかい?」
    ダビウム「え、何?」
    警戒して、後ずさるダビウムの横にステラがそっと控える。
    モコ「あ、あの!しろ、がねさん?はじめまして、ボク、モコです!しぐさん慌ててどうしたんですか?」
    前に出たモコのケープをロロが引き戻そうとひっぱる様子を微笑ましく見ながらよろしくねと白銀が手を振る。
    しぐ「あー、ごめん。えっとね」
    頭を搔きながらしゃがみこみモコとロロの視線にあせてどう説明しようか迷う。
    フユキ「焦りすぎ、ダビウムさん。先ほどしぐに話した事で確認したい事がありきました。」
    事情を説明し、白銀がダビウムの体を診ていく。
    白銀「ああ、ここに印があるよ」
    右の二の腕を指し、ダビウムが袖をまくり確認する。
    ダビウム「わっ」
    黒いダイヤのマークが並んでいた。
    白銀「…18か」
    とても小さい声がこぼれた。
    しぐ「それも私的な情報か?」
    ステラ「18?」
    聞き取られたことに驚くがすぐに薄っすらと笑んだ顔に戻し、空を見上げているステラとしぐに視線をやる。
    白銀「(空…?)花のお嬢さんも、君もなかなかのようだね。頼んでよかったよ。一つ提案が」
    レヴ「しぐ!オリーブ!!どっちでもいい、いるかっ!?」
    白銀が言い切る前に、古傷のあるマンタにのった星の子が叫び降りてくる。
    しぐ「おう、俺だけだがいるぞ。」
    身にまとう鮮やかなオーシャンの青とは対照的に顔色が悪いレヴが息を乱しながら、しぐの赤いタビビトケープをすがるように握りこむ。
    レヴ「トロを助けてくれ!」
    絞り出すように叫び、崩れ落ちた。
    ダビウム「レヴ!」
    倒れたレヴをダビウムがかけより、支える。
    しぐ「ダビウム、まかせるわ。ふさま、湯豆腐!ダビウムを手伝ってあげて!あああっモコ!!そこの脱走プリティ達をひっつかまえといて!レディ、トロをおろすよ」
    フユキ「ほいよ、カビ子ーあんまり遠くに行っちゃだめよー」
    カビ子「わかった」
    カビ子が返事はするもののとめる様子もなく、なすがままにはんなりに背負われて遠ざかっていく。
    モコ「あ、え?!まってー??!」
    ロロ「ぐえっ!?ちょっとはなして!僕はここで待ってるって!!」
    モコがロロの首根っこをつかみ、小さな怪獣たちを追いかけていく。
    湯豆腐「レヴさん、鞄あけますよ。」
    湯豆腐が慣れた手つきでレヴの鞄の中を確認しつつ、ダビウムとフユキに指示を出す。
    ステラ「手伝います!レディさん、少し乗りますね」
    ステラがマンタのレディ・エルの上に軽やかに乗り、トロを抱え上げレディから降ろしてやる。
    背に誰もいなくなったレディが咥えていた風車をしぐに投げやり、レヴの元へ飛んでいく。
    しぐ「…?」
    受け取った風車からトロの光の気配がした。
    白銀「ああ、それを貸しておくれ。その子を回復させるのに使えるよ」
    怪訝な面持ちで風車を白銀に渡す。
    大事に風車を手で包み、ぐったりと寝かされているトロの横に座る白銀。
    白銀「25、おつかれさま。光はこの子に返してあげよう」
    一匹の黒い蝶が白銀の手から生じ、風車にとまる。黒いそれが光に塗りつぶされ、見慣れた輝く蝶になりトロのコアに飛んでいき吸収されて消える。
    白銀「おや…光の強い子なんだね、一匹では足りないか」
    追加で4匹同じことが起こり、一匹吸収するたびにトロの顔色がよくなっていった。それに比例して風車からトロの光の気配が消えていく。
    トロ「う゛…レヴ、どこ?」
    ステラ「トロ君!大丈夫?痛むところは?」
    トロ「ステラ先生…?」
    起き上がろうとするトロをステラが支え起こしてやる。
    トロをステラにまかし、白銀に詰め寄った。
    しぐ「今のはなんだ?」
    白銀「言っただろう、落とし物を回収しておくようにと。奪われたコアの光を戻してあげたのさ。時間がたちすぎなければこうやって戻せるのだよ。」
    懐かしむように風車を優しくなでる白銀。
    白銀「まだ少し光を蓄えているね、被害を受けた子に戻してあげなければ」
    しぐ「それは急いだほうがよさそうな経過具合か?」
    白銀「このぐらいなら大丈夫だよ、大体半月程は苦も無く戻してあげれる。扉が壊れたのは1週間ほど前だ、どの子もまだ間に合う。」
    しぐ「…トロ!やられた時の話しできるか?湯豆腐、レヴの具合は?!」
    光の返還が急ぎでないとわかり、目の前の処理へ切り替える。
    トロ「レヴ!!レヴ兄はどこ?!」
    湯豆腐「こっちだよ!おちついて!!」
    まだふらつく足取りで、トロがレヴの所にかけていく。
    トロ「レヴにぃ!」
    毛皮のような大きなケープでレヴを包み隠すようにトロが抱きしめる。
    しぐ「落ち着くまで駄目そうだな」
    湯豆腐の隣に座り、おつかれさんと背中を叩く。
    湯豆腐「レヴ君の手持ちなかったから、君の分の抑制剤をあげたよ。」
    しぐ「あー、うん。まぁそうだろうな、あとで現物で返してもらおう」
    様子を見るにここにくるまでに全部自分で飲んだのだろう。
    この二人は片方が倒れればもう片方も駄目になる。まぁ、自分も人の事を言えない立場ではあるが。

    モコ「しぐさん!はんなりちゃん達捕まえましたよ!!」
    はんなりを掲げ持って葉っぱだらけのモコが帰ってきた。その後ろにくたびれたロロとケロっとしたカビ子が続く。
    はんなり「追いかけっこ楽しかった!!」
    自分を支える一つが満足そうに報告してくる。
    しぐ「そっかー、じゃあ家に帰るまでふさま達の近くにいようね。モコ、ロロありがとうね、おつかれさま。」
    モコからはんなりをうけとり、トロ達が落ち着くまでご自慢の弾力を楽しむことにする。
    カビ子が湯豆腐をじっとみつめて、慌てた様子で湯豆腐が鞄から飲み物やおやつを出している。
    モコ「いいえー!ボクもたのしかったです!」
    ロロ「次は絶対行かないからね!!」
    しぐ「あははは、また遊んであげて。…おい、白角。そこのまるまり団子二人に印はついてるか?」
    そろそろ落ち着いてきてるトロレヴの塊を指す。
    白銀「白銀だよ、黒角君。それともお揃いみたいで気に入ったのかい?」
    しぐ「っ冗談きついぜ!で、どうなんだよ?」
    気持ちの悪い冗談を中和するようにはんなりの海月ヘアに頬をうずめる。
    カビ子に半分こしてもらったおやつの邪魔をされて、はんなりが柔らかい肉球で抗議する。
    白銀「若い狼君の方に一つついてしまっているね」
    しぐ「トロか、やりやすい方についてて助かったな。そういえば、提案ってなんだったんだ?今のうちに聞いてやる」
    はんなりの肉球をもみながら、レヴ達が来た時に言いかけていた事が気になった。
    白銀「トロ君だったか、彼も含めて提案しよう。私と君達の戦力をあわせれば被害少なく討伐可能だろう。逆に言えば戦力を分けてしまうと」
    しぐ「…トロとダビウムを囮に使えって?」
    眠気特有の高い体温になったはんなりをそっと、カビ子に渡す。湯豆腐がはんなりを背負ったカビ子に引っ張られ少し離れた所で待機しているフユキ達に合流しにいった。
    白銀「今の状況で護衛と討伐に分かれるのは悪手だろう、それに二つの印がある。待ち時間もかなり短縮できると思うが」
    印持ちが縄張りに入ればたやすく出てくるだろうねと続ける。
    しぐ「…」
    トロは持ち直せば戦える牙を持った子だからいい。問題はダビウムだ、彼は戦うすべを持っていない。
    今だって、のんきに茶をいれステラ達にひと時の安息を与えている。
    彼とは仲がいいわけではないが、あれはステラさんが大事にしているものだ。それなら可能な限りは俺も彼らを守らなければならない。
    自分以外をここの護りに残したいが、相手の戦力がわからない。一人で戦える相手でなかった場合、二次被害が出る。
    物理的にダビウムの腕をもいでしまおうか?いや、駄目だ。印の効力の範囲がわからない、あとステラさんにすごく怒られそうだ。
    しぐ「…トロ!そろそろ、再起動しろ!」
    毛むくじゃらのケープから覗く、トロの頭に拳を下ろす。
    トロ「っ!さいきどうってなんだ!?むずかしいことばわからないぞ!」
    しぐ「大丈夫そうだな、何があったか言ってみろ。」
    レヴの無事を確認していつもの調子に戻ってきたトロにデコピンをする。
    トロ「ぃったっ!!しぐさっきからひどいぞ!!っいっった?!」
    にっこり笑ってもう一度デコピンをした。
    しぐ「トロ、俺は怒ってるんだがな?差し違えるような戦いをするように仕込んだ覚えはないぞ?」
    ステラ「それにかんしては私も同意します。トロ君、お稽古後で頑張ろうね。…元気になってよかった」
    先生たちに叱られてしょんぼりするトロ。
    トロ「う゛ぅ、見た事ない奴だったんだ!レヴは守れてた、でもあのへんな奴二匹いて、片方の奴がレディを襲ったんだ。」
    しぐ「おい、白いの。レディ…そこの淑女なマンタに印は?トロ、レディは吸われたのか?」
    レヴ「レディは吸われてないよ、トロがかばったからな。」
    薬が効いて意識がはっきりしたレヴがトロの腕から起き上がり加わる。
    レヴ「あいつらずっとトロとレディを狙ってたんだ。それで俺とレディが離脱できなくて…」
    いつもならトロが気を引いている間にレヴとレディは離脱して、トロが戦いやすいようにしているが今回はそのレディも標的で逃げることができず追い詰められた。
    白銀「…印はないよ、トロ君の方が強い光を蓄えていたからだろうね。できれば名前で呼んでほしいのだがなぁ」
    しぐ「お姫様(レヴ)もお目覚めのようで、トロ以外は無事って事か。」
    レヴ「毒杯が欲しいのか?」
    腰鞄の毒薬瓶に手を添える。
    しぐ「やだぁ、女王様のほうじゃん。まぁ、持ち直したようでよかったよ。あとで工房行くから、毒じゃない方補充させてね。」
    レヴ「そうしてくれ」
    トロが白銀寄りに座ろうとしたレヴの腕をつかんで引き戻す。
    トロ「レヴ、そっちだめ。…噛まれた時に、あいつの中に流れたオレの光を辿って、あいつのコアの場所がはっきりわかったんだ。」
    噛みつかれながらそこを一突きして相打ちすることになった
    トロ「しぐ先生、オレは何を倒したんだ?どうしてオレらと同じようにコアがあったんだ?」
    白銀「それは気にする必要はないよ。守りたいものを守り切ったことを誇りなさい。」
    トロ「ほこ?」
    まだ学習していない言い回しを聞き返すトロにレヴが言葉の意味を教えてやる。
    しぐ「…白いの、お前は何者だ?」
    白銀という星の子の形をしたどこか異質な何か、その異質さは自分の同類と似ているようで違う。
    そして話の節々に、今回の討伐対象と一緒のモノのようなきがしてならなかった。
    白銀「君がそれを問うのかい?落陽の子よ。」
    白銀の頬に一瞬にして青い結晶の剣が横切った。ステラも柄に手を伸ばし警戒する。
    しぐ「へぇ、お前はそれを知ってるんだ?」
    白銀に剣を突き出し剣呑に見下ろす、それらを見たトロがレヴを抱えて遠ざかりレディもそれについていく。
    白銀「物は違えど、在り方は似たようなものだよ。君も私もね。あれは成れの果てさ」
    向けられた敵意に静かに優しく笑み返す。
    白銀「君たちは向かってくる脅威を排除しただけ、するだけだよ。しぐ君、君が混ぜられた者たちのように新しく発生する事はない。終わりあるものだ」
    居住まいを正し、ゆっくりと見据える。
    白銀「根絶させ、記憶を残す必要もない。私の事もそうしてもらっていい、できるなら奪われた子達に光を戻した後にしてほしいがね」
    ステラ「しぐさん」
    先ほど一緒に光を戻す様子を見ていたステラが、改めて握りこまれたシグの剣をとめに入る。
    しぐ「…わかってます。ステラさん、力を貸してくれませんか?」
    剣を下ろし、白銀からステラを遮るように歩み寄る。
    ステラ「ええ、私も彼らを、あの場所を守りたいもの。そのためだったら力を使うことに忌避はないわ」
    過去に与えられた恩に報いるために、彼女の日常も守りたい。だが今、そのために彼女が嫌うものに頼らなくてはならない。
    しぐ「ごめんなさい、ステラさん。あまり気分のいい方法が取れそうにありません。」
    ステラ「今ある最善なら仕方ないです。あまり気になさらないで」
    しょんぼりするしぐをステラが励ます。
    白銀「すまないね、巻き込んでしまって。」
    苛立ちのまま睨んだ先にいた白銀が悲しさと悔しさをにじませているのを見て、強張った肩の力が抜けた。
    大きく吸い込んだ息を吐き、頭を振るう。
    しぐ「おーい!ふさま!トロ、ダビウム!ちょっと作戦タイム!!…ステラちゃん、行きましょう。白銀、お前もだ」
    白銀「!」
    ステラの手を取り、お茶休憩を楽しんでいる彼らの所へ歩いていく。
    嬉しそうに立ち上がった白銀を見ない様にしながら。


    白銀「改めまして、白銀というよ。こんな形で出会ってしまって悲しいがよろしくね。それと巻き込んでしまって申し訳ない。」
    各々名乗り挨拶し、席に着く。
    白銀「ああ、そうだ。紹介しとかないとな子がいるんだ。黒曜!いるかい?」
    黒曜「呼んだかの?にゃんだかいっぱいいるんだの」
    どこからともなく猫耳ヘアの翼をもたない小さな星の子があらわれモコ達が驚く。
    しぐとステラにはどのように表れたかとらえていたが、その視線に気づき猫耳の子がしーっと人差し指を口の前にたてる。
    きょとりとしたステラと顔を見合わせて肩竦めた。
    白銀「私はあまり戦いは得意じゃなくてね、この子に補ってもらているんだ。黒曜という」
    黒曜「黒曜だのー!白銀、何匹か終わらせてきたの。ちゃんとこれも持って帰ってきたの!」
    見慣れたアイテムたちが机に広げられる。ただそれらからは複数の光を感じて、違うものに見えた。
    白銀「ありがとう、黒曜。うん、古い光はなさそうだ。よかった」
    黒曜「働かせすぎなんだのー!!」
    白銀の膝の上に座り、彼の前に用意されたお茶とお菓子に手を出す。
    しぐ「えーと、黒曜君もよろしくね?話を進めようか」
    あっさりと黒曜の名を口にした事に白銀が視線をむけてきたが無視して、作戦を話す。

    フユキ「おれとカビ子でダビウム君を守るのね。了解」
    ダビウム「よろしくお願いします。あ、でも動き回らないでいいなら盾にはなれるかも?結構僕頑丈なんです」
    しぐ「ふさまは耐久力はないから期待してるよ、カビ子から抜けてくる奴がいたらだけど。」
    フユキ「紙装甲に高火力は魔術師の美学だからね!」
    しぐ「俺は好きだよ、その美学。カビ子もやる気を出してくれてよかった」
    カビ子がファイティングポーズをしている。とてもキレのある音をだしている。
    しぐ「あとは俺とトロで遊撃して、ステラちゃんはふさま達を気にしつつこちらのとどめに参加してください。」
    ステラ「わかりました!」
    トロ「レヴ、ちょっといってくるね」
    レディの上で横になっているレヴが手を振って答える。
    しぐ「黒曜君は自由に動いて。初めて組むから、変に連携とらない方がいいと思う」
    黒曜「わかったんだの。これもっとないのかの?いっぱい働いてお腹減ったんだの」
    白銀の分を食べ終わり、おかわりを要求する黒曜。
    モコ「えっと、これも食べる?お弁当で持って来たんだけどロロが食べなくて」
    具が詰まったふわふわの白いパンがさしだされる。
    黒曜「もらうんだのー!」
    白銀「すまないね、ありがとう。」
    楽しそうに食べている黒曜の頭をなでる白銀。
    モコ「いえ!むしろ余り物でこちらこそすみません」
    ロロ「僕はちゃんと毎回、用意する前にいらないって言ってるだろ」
    モコ「むー!作るのも食べるのも楽しいのに!」
    モコとロロのやりとりに白銀がニコニコしている。
    それをなんだこいつと横目で見つつ
    しぐ「湯豆腐、レディ、モコ・ロロは、レヴとはんなりをみながら留守番宜しくね。」
    モコ「はい!」
    レディも鳴き返事を返す。
    湯豆腐「はんなりが寝てる間に終わらせてきてよね」
    ぽよぽよすやすやと湯豆腐の膝の上ではんなりが丸まっている。
    ロロ「僕も寝てようかな?」
    レヴ「俺は工房に帰りたいが」
    しぐ「この状況でトロ無しで動き回らないでくれよ。まぁ、トロ借りてくの俺らだけどさ」
    工房まで送り届けられるトロといる事自体が今は危険だ。
    自分が送り届けようにも白銀を他に任すの事は避けたいし、かといって工房への道のりを連れてくわけにいかない。
    湯豆腐「体調的にもまだ動き回らない方がいいよ。ダビウムさん行く前にかけれるもの貸して、レヴ君冷えてる。」
    ダビウム「っ!今とってくるよ!台所もつかっていいから」
    モコ「あ、ボクお湯沸かし直してきますね!白湯なら飲めますか?」
    ロロ「だから!どうして!僕を掴むの!!」
    ダビウムとロロを引きずったモコが店内に入っていく。
    トロが再びレヴを包み、レディが乗ってきたトロに不服だと尻尾を揺らしている。
    レヴ「…お構いなく」
    言えば言うほど騒がしくなると察して大人しくする事にしたレヴ。
    しぐ「…なんかごめん。トロ、すぐ出れるようにしててくれよ?」
    レヴが鞄が投げてきた。
    レヴ「もってけ、毒薬は利きが悪かったが光にはよく反応してた。気をそらすのに使えるはずだ」
    交戦中に光の回復薬をトロに使おうと封を開けた時にレヴが標的になり、それに気づいて投げ捨てた。
    捨てた方に一時期的に誘導できた話をする。
    しぐ「へぇ…湯豆腐、俺の手持ちとレヴの皆に配分するから手伝って」
    湯豆腐「わかった」

    準備を整えたしぐたちが再び件の花畑に降り立つ。
    カビ子が足元から黒い靄を出してうなり声をあげている。
    しぐ「本当にすぐきそうだ。カビ子、どっちからきそう?」
    二方向をカビ子が指差す。
    しぐ「両方来てるのか」
    黒曜「一匹はまだ遠いの、遠い方を僕が相手してくるから近い方をおまえたちがやるといいの。白銀、あれよこすの。」
    白銀の手から大量の黒い蝶があらわれ、黒曜の背中に集まり蝶を模った黒いケープに変化する。
    ステラがその不思議な光景に見入っていた。
    黒曜「いってくるのー!」
    木々を蹴り跳ねながら黒曜が駆けていく。
    しぐ「飛ばねぇんだな?」
    白銀「消費してしまうからね、あの子の強化にも使えるから節約してるのさ」
    しぐ「ふーん、それ俺にもきくの?」
    白銀「試してみないとわからないね、カビ子君としぐ君には可能性はありそうだが」
    フユキ「後にしなさい。」
    しぐ「あい」
    ステラが剣を抜き臨戦態勢に入る。
    しぐ「トロ!来るぞ!!」
    半身が黒く揺らぐ星の子が歩いてくる。
    白銀「38…」
    しぐが一瞬ジト目で白銀に視線をやるがすぐ目の前の敵に戻す。
    トロが一番槍をつけたが、その切っ先は揺らぎを泳ぐだけだった。
    すぐに飛びのき距離をとる。
    トロ「なんだあれ!全然触れた感じがしないぞ!」
    ゆっくりと歩いていたそれがトロをずっと見ている。
    しぐとステラが同時に剣を振りぬき、その衝撃で生じた圧が揺らぎを散らす。
    しぐ「全身が散ったか」
    ステラ「集まってる中心部なら?」
    散った揺らぎがあつまって半身の星の子に戻り始めている、その中心にトロが槍を突き立てるが手ごたえがない。
    トロ「先生!駄目だった!!」
    反撃してこない様子に気を抜いたトロが対象に背をむけた。
    しぐ「減点!」
    トロを蹴り飛ばし飛んできた鱗のようなものを切り伏せる。
    しぐ「これは切れるんだ?こちらに干渉する時がねらい目か」
    鱗はステラとフユキの方にも飛ばされていた。凍った鱗と切られた鱗が散らばっている。
    しぐ「俺と白銀は眼中にないと」
    白銀「君は混ざりものだからね、よっぽど食べるものがない時じゃないと手が伸びないだろうね」
    しぐ「え、俺まずそうなの?」
    トロにむかって飛んでくる鱗を切りながら軽口をたたく。
    白銀「間違いなく美味しくないよ。私も遠慮したい。」
    トロ「しぐ、味も優しくないんだね」
    蹴り飛ばされたトロが戻ってきた。
    しぐ「なんかむかつく!!」
    光薬をトロの頭にたたき割る。
    トロ「ひどい!」
    しぐ「俺は優しくないんだろう?そのまま囮になってろ!ふさま凍らせてみて!ステラさん!!」
    フユキ「ほいよー」
    目論見通り薬と元気なトロの光に的が集中し、それをトロとしぐがしのぎ、鱗が出される瞬間にフユキが本体を狙って氷の魔法を放つ。
    凍って縫い留められたそれをステラが切断する。
    揺らぐことなく切られた断面にコアがみえて追撃を入れようとして寸止めする。
    白銀「おやすみ、38。よく我慢してくれた。」
    いままでゆっくりとしか動かなかった白銀がたくさんの黒い蝶をまとい風のように駆けて、長く鋭く変異した指を対象のコアに突き立て壊し、対象を抱きしめていた。
    白銀「できるなら、君たちの手をこれで汚してほしくないからね。」
    ステラ「あ、危なかった」
    もう少しで白銀ごと切ってしまうところだった。
    しぐ「そのままやっちゃってもよかったのでは?」
    フユキ「返還が終わるまではステイって言ったでしょ」
    しぐ「ワン!でも依頼に後始末は入ってないし」
    ステラ「しぐさん…」
    トロ「しぐ、やっぱり優しくない」
    しぐ「俺より駄犬なやつに言われたくないねぇ」
    ステラ「トロ君は本当に稽古がんばらないとだね」
    ステラの圧がある笑顔にトロが震えあがる。
    白銀「これの回収も終わったよ」
    通常の形に戻った白銀の手に渦巻きを模したペンダントが握られている。
    しぐ「急いだほうがよさそうなのはありそうか?」
    白銀「大丈夫、新しいのばかりだ。」
    一息吐き、黒曜が向かった方角を見る。
    しぐ「あっちの様子を見に行けそうだな。むこうが18か」
    トロのケープをひんむき背中にあった印が消えてるのを確認して、白銀の言動と共に推測する。
    トロ「しぐもひとのこといえない!」
    乱暴に扱われて普段加減について口酸っぱく言われているトロが抗議する。
    しぐ「俺はちゃんと選んでやってる。ダビウム、まだつきあってもらわないとだめだ。」
    一連の出来事に恐怖で固まっていたダビウムが何とか頷きを返す。
    茶化していたが荒事に慣れていないダビウムを和ますことはできなかったようだ。
    白銀「気を引き締め直しておくれ。18は38より気性が荒い、あと足元に注意だ。あれは地面に仕込んでくる。」
    しぐ「ぼかさなくなったな?」
    白銀「もう今更だろう」
    ステラ「あ、あの!私たちは飛べますが、黒曜さんそれだと相性が良くないのでは?」
    しぐ「急ぐか」


    黒曜「やっときたの!」
    短くなったケープを揺らし、黒曜が跳躍して白銀におぶさりその頭を叩く。
    まだ遠くの地面に一面、黒く鋭い杭のようなものが生えているのが見える。
    黒曜「もーつかれたのー!あとはお前らでやるの!!」
    白銀におぶさっていた黒曜が黒く揺らぎ、一匹の暗黒猫にかわって白銀の首にケープのように巻き付いて寝だす。
    ダビウム「?!」
    しぐ「その子やっぱり暗黒猫だったんだ」
    ステラ「ふかふか…」
    フユキ「ダブルケープ」
    白銀「見えてる子がいたんだね」
    茶席で白銀に呼ばれた黒曜は、白銀の陰から暗黒猫で出現しその後すぐに星の子の形に変化していた。
    しぐ「レディにきてもらえばよかったね、空中拠点化が楽だったのに」
    フユキ「あの子おれたちの言う事聞いてくれるの?」
    しぐ「わかんない、レヴが言ってくれればワンチャン?ふさま、カビ子と滞空維持してて!なるべく高めに。余裕があったら魔法で追撃よろしく。」
    カビ子が出した白キャンドルをズイズイしてまかせろと答える。
    しぐ「ステラちゃん、ダビウムをおねがい。おんぶまで開放してたよね?」
    ステラ「はい、この前の採取の時に」
    しぐ「ダビウムごめんな、ちょっと怖いだろうけど本当に囮として使うわ。」
    ダビウム「う、うん。」
    しぐ「トロ、俺らでやるぞ。」
    トロ「わかった!」
    しぐ「ああそうだ、俺の分全部渡しとくね。避けきれなさそうなときどんどん投げて。俺不味いらしいし」
    ステラに光薬を渡しておく。
    白銀「食いつきにくいだけで反撃してくるよ?」
    しぐ「全部叩き潰せば問題ないだろ。というかお前はどうなんだよ?」
    白銀「避けるだけならどうにかするよ。」
    しぐ「…俺はステラちゃんみたいに待たないからな。」
    白銀だけに聞こえるようにつぶやき、剣を構える。
    しぐ「よーし、いっちょいきますかー!向こうもしびれを切らしたようだし」
    近づいてきていた。
    フユキとステラが飛び立ち、しぐとトロが駆けて行く。
    白銀はゆっくりとその後を追う。
    白銀「うらやましいね、こんなに賑やかに終わりをおくってもらえるなんて」
    黒曜「あいつらが生きているうちに終わればいいの」
    白銀「そうだね、今回のが済めばそれも遠くなさそうだ」
    もう残っているほとんどは扉の向こうにいた。固く閉ざされ、かつ自分を入れない様に設定された揺りかご。
    外に残されたのを壊しながら、ずっとその扉が崩れるのを待っていた。
    黒曜「あいつらがいなくなっても僕がちゃんと白銀を終わらせてあげるの。」
    白銀「ああ、頼みにしているよ。でもできれば被害が出ないうちにお願いしたいね。」
    黒くふかふかな毛並みを撫でる。
    黒曜「それは知らんのー、猫と星だと考え方がちがうの」
    力なく笑い、賑やかな葬儀に白銀も参列する。

    しぐ「トロ!お前は本当にその油断癖なおらないなっ!!」
    トロ「先生たちはもうちょっと口でいってほしいぃー!」
    ぶん投げられたトロの声が遠のいていく。
    ステラ「レヴ君がいないからってやる気なさすぎだよ!」
    キャッチしたトロのエナジーを回復させてステラもトロを投げ返す。
    トロ「先生たちがおかしいんだよぉ!」
    落下の勢いをいかし、数を減らして高さを増した杭を叩き壊す。
    しぐ「レヴにしばらく飯抜きでいいって言うからな!!」
    トロ「やだっ!!先生ずるいぞ!!」
    沢山の氷柱がトロとしぐすれすれに降ってくる。
    フユキ「元気なのはいいけど早くしなよ、もうカビ子がお眠なんだけど。」
    しぐ「サーイエッサー!ほらトロ、上官たちがそろそろお冠だぞ」
    トロ「むずかしい!わかるように言え!!」
    どんどん杭を壊し、対象との距離を詰めていく。
    しぐ「怒らせたら俺も止めれない人達に叱られそうだ!飯も食えなくなるぞ!」
    トロ「うぅぅぅ!」
    トロが気合いの入った大回転切りをして対象を隔てていた残りの杭を一掃する。
    しぐが弾丸のように飛び出し、本体を細切れにしてコアをさらけ出す。
    しぐ「白銀ぇ!4秒待ってやる!!!」
    黒い風が届き、長い指がコアを貫いて破壊する。
    白銀「本当に賑やかだね。おやすみ18、私は君がうらやましい。」
    黒い角笛が白銀の足元に転がった。
    しぐ「どいつもこいつも本気で殺る気なくてやりにくいわぁ、おかげでトロもしまらねーしよぉ」
    角笛を拾うためにしゃがんだしぐが小声で悪態をつく。
    白銀「気づいていたか」
    拾った角笛を白銀に渡す。
    しぐ「これでも普段星喰相手してんだぞ。」
    フユキ「そもそも被害者に亡くなった子がいない。」
    ステラ「ああ、やっぱりそうだったんですね」
    気づいていないトロと事情を詳しく知らないダビウムが離れた所で眠く不機嫌なカビ子に対峙して慌てふためいている。
    白銀「…自害できない様に命令されているんだよ。」
    静かに目を閉じた白銀が手の中にある物を握りしめる。
    しぐ「はぁー…いったん報告と確認かねて戻ろうぜぇ。ダビウムとトロのマーキングもはずれたから帰してやりたいし」
    トロはいいとしてダビウムはもう限界だろう。
    ステラ「そうですね。あっ」
    フユキ「おお、いい飛びっぷり」
    カビ子のしっぽアタックでトロが天高く舞っていた。
    しぐ「あいつ、しっぽ持ちと本当に相性悪いな」
    ステラ「レディちゃんにもよく叩かれてますものね…」

    モコ「おかえりなさい!皆さん怪我してないですか?!」
    湯豆腐「おかえり…トロ君だけくたびれてるね?」
    ロロ「よかった、紙がなくなる所だった」
    ロロのメモセットでお絵描きしていたはんなりがカビ子に飛びつく。
    寝ているレディとレヴにトロがふらふらと倒れこみ、驚いて起きたレディのしっぽにひっぱたかれて呻く。
    ダビウム「ただいま、怪我はないよ。気疲れはしちゃったけどね」
    店から出てきたレッチェとツェルを抱きかかえてダビウムが苦笑する。
    しぐ「ロロ、あとでお店教えて。」
    ロロ「気にしないでください、でもお店は教えますね。いいお店なんで」
    しぐ「ありがとうね。ダビウムもおつかれさま、慣れない事させてごめんね。」
    ダビウム「怖かったけど、僕はいただけだから。そっちはまだ終わらないんでしょう?」
    しぐ「うん、白銀と報告いってくるよ。ステラさん、念のためダビウムにつててもらえる?ふさまはお子様達連れて先に帰ってて」
    ステラ「ええ、私はかまいません。」
    フユキ「ほいさー、皆お疲れ様。」
    モコ「じゃあ残れる皆で夕飯にしましょう!キッチンお借りして作っておいたんです!」
    えっへんとするモコ
    ステラ「わぁ、うれしいです!」
    ロロ「食べないけど話は聞きたい」
    しぐ「ははは、皆ゆっくり休んで。また動きがあったら報告しに来るよ。湯豆腐いこうぜー」
    湯豆腐を背負い、穏やかな空間から飛びたつ。白銀がその後をついていく。


    ノエ「待っていたよ」
    オリーブ「ずいぶん遅いのね、ティゴは帰したわよ。」
    愛用の大剣をノエが上機嫌で手入れしている。
    しぐ「…ノエさんも現場にでたんですね。これ俺必要でした?」
    ノエ「ああ、私が外に出れるぐらい人手がなかったからな。助かっているよ。」
    しぐ「中間管理職は大変っすね。白銀、数確認しろ。把握してんだろ?」
    机に並べられている光を蓄えたアイテム達を指す。
    白銀「彼女たちの前ではもう少しぼかしてくれないか?」
    ノエ「聞かなかったことにしますよ、部下も下がらせてあります。」
    白銀「それは…お気遣い頂いて。」
    白銀が数え始める。
    しぐ「ノエさんもしかして出撃許可とってなっぐえっ」
    大剣のみねうちをくらう。
    ノエ「何か言ったかな?」
    しぐ「ナンデモナイデス!」
    腰を抑えながらオリーブの方へ行く。
    しぐ「レヴは無事でしたよ」
    オリーブ「ふーん」
    しぐより背の大きいオリーブがのぞき込んでくる。
    しぐ「不可抗力ですからね?!そこまで可愛がってるなら自分で見てくださいよぉ」
    オリーブ「あの子が渋るから嫌よ」
    しぐ「ノエさぁぁん」
    ノエ「ははは、君もこちら側だな」
    数え終わった白銀が申し訳なさそうに声をかけてくる。
    白銀「少し足らないようだ」
    湯豆腐をつれて扉に向かっていたしぐの肩をノエががっしりとつかむ。
    しぐ「きっ、聞きたくない!!」
    ノエ「私もこれ以上誤魔化せなくてな」
    ちいさいノエが後ろから肩をおさえるものだからエビぞりになるしぐ。
    しぐ「ぐえーっ!さっき同士だったじゃないですか!というかびくともしない!!」
    ノエ「ああ、だからこそわかるだろう?」
    湯豆腐「残業確定かぁ」
    しぐ「湯豆腐!お前もだからな?!」
    湯豆腐「わかってるよ、あきらめてさっさと済まそう。白銀さんはどうするんです?」
    ノエ「ああ、彼はこちらで預かるよ。光の返還とやらをはじめてもらいたい。」
    がっくりと肩を落としたしぐがオリーブにまわってない個所を聞きに行く。
    しぐ「オリーブさんはいかないんですか?」
    オリーブ「見て覚えられそうなら、返還の方にいくわ。」
    しぐ「あー…うん、そうっすね。そっちのが興味ありますもんね、貴女は。しろがねぇ、いくつたらないんだよぉ」
    結構足らないじゃぁぁん!!という叫びと共にしぐと湯豆腐が再出撃していく。長く黒いケープを背負った黒曜が後追う。



    数日後、ダビウムの花屋に皆が集められた。
    しぐ「というわけで返還もふくめて全部終わりました」
    花笑む茶室で机に突っ伏して溶けているしぐが皆に報告する。
    ステラ「おつかれさまです、呼んでくれれば手伝いましたのに…」
    しぐ「いあ、倒すの自体は黒曜とでスムーズだったんだけど」
    白銀の蝶をまとった黒曜を連れていたからか、元よりの部分もあってかそこはなんとかなった。
    問題はその後の各団体をまたいだ返還行脚のほうだった。
    しぐ「組織のしがらみってめんどくさいよネ」
    自分は白銀とオリーブにつっかかってくる者の露払いが主だったが、渡りをつけているノエがそれ以上にとても大変そうだった。
    それを見捨てて知らぬ顔するほどの仲ではなく、ずるずると付き合うことになった。
    今回の追加報酬にトロの訓練をねじ込むだけでは足らないと、せまるのは今のノエには酷だと思うほどに同情はしていた。
    絶対に所属はしないと固く断っているし、落ち着いたら請求するつもりではあるが。
    モコ「大変でしたね。あの、白銀さんはどうなったんです?」
    あの事件にかかわったメンバーで彼だけがここにいなかった。
    フユキ「ああ、もうちょっとしたら来るとおもうよ」
    しぐ「こなくていぃぃ」
    突っ伏すのをやめて今度は背もたれに溶け始めたしぐ、ずるずると座高がさがっていく。
    見かねた湯豆腐がはんなりを捕まえてしぐに渡す。
    とけるのをやめてはんなりを抱きかかえる。
    はんなり「おやつ?」
    しぐ「うん、俺のも食べていいよ。」
    キョロキョロとカビ子を探すはんなりの隣に湯豆腐が椅子をよせてカビ子に座ってもらう。
    しぐの分をカビ子とわけてはんなりがお菓子を堪能し始める。
    しぐ「というかあいつの素もちょっとやばかった。本当にもうこなくていい。」
    白銀「失礼だなぁ、私は君たち星の子がとても愛しいだけだよ。やぁ、皆さん。今日も素敵な輝きだね、私も味わってみたいものだよ。」
    黒曜「僕にもそれあるかの?」
    ぬっとあらわれた白黒コンビにモコとロロが驚いて少し飛びあがる。
    ダビウム「いらっしゃい、いま用意しますね。」
    白銀「ありがとう、私のはお茶だけ頂こうか。」
    ステラ「雰囲気変わりましたね…?」
    黒曜「こいつは元からこうだの、まぁちょっと気が緩んでるの」
    ニコニコと楽しそうに白銀が一同を見ている。
    湯豆腐「星の子推し?らしいよ、見てるのが好きなんだって」
    白銀「穏やかに日々を紡ぐ君たちは本当に愛らしいからね、どうかきにせずありのままをみせておくれ。」
    モコ「えっ、えっとぉ…?」
    トロ「なんだこいつ」
    ステラがめずらしくトロの言葉に心の中で同意している。
    ダビウムが戻ってきたのを見た白銀が立ち上がり頭を下げる
    白銀「改めて皆には感謝と謝罪を伝えたくてね。もっと少ない状態で事が起こると思っていたんだ、考えが甘かったよ。被害は出てしまったが、皆が事にあたってくれたおかげで短期間に犠牲者なくおさめることができた。本当に有難う。まきこんでしまって申し訳ない。」
    花笑む茶室の常連組がわたわたと慌てている。
    トロ「レヴが無事だったからどうでもいい」
    レヴ「トロがそれでいいならいいよ。しぐ、オリーブに何か言ってないだろうな?」
    しぐ「イッテナイヨー。待って、本当に言ってないから!毒瓶なげようとしないで!!はんなりにかかったらどうするの?!」
    わざとはんなりと一緒にいる時に投げようとして、本当に余計なこと言ってないと確信をえたレヴが出した毒瓶をしまう。
    はんなりが自分にも喧嘩を売られたと思い、やるのか?とポーズをとりはじめるが、レヴがそっと自分の分のお茶菓子をさしだしなかったことになった。
    はんなりがまた半分カビ子に渡し、一緒にファイティングポーズをしていたカビ子もなかったことにした。
    一連のお子様達を見ていたステラがかわいいなぁとほほ笑んで、戦慄していたトロが胸をなでおろす。フユキがなかなか勇気がある子だなぁとレヴをみていた。
    ロロ「あの!結局なんだったんですか…?」
    ロロが好奇心に負けて聞いてしまう。
    困り顔で白銀が顔を上げる。
    黒曜「いいんじゃないかの。扉の向こうにも再現できるほどの資料はのこってなかったし、わずか残ってたのも処理したんだの。それに今のこいつらにそんな長く伝承できるほどの技術も残ってないの。直接被害ににあったのもいるんだの、こじれるよりぱっと話して終わりにするの。ノエにしばらくとどまれって言われてるんだから面倒な方が嫌だの。」
    白銀「黒曜…」
    黒曜「さっさとこっちきて黒曜のクッションするの!この体小さくてこれの高さ疲れるんだの!あとおかわり要求するんだの、長くなる話だの。」
    黒曜が机のふちを叩いて高さに不満をもらしながらお菓子とお茶のおかわりを催促する。
    ダビウムが新しいのをとりにこうとしたのを白銀が止める。
    白銀「私に持ってきてくれた分で大丈夫だよ。私はもとからこういうのはあまり口しないからちょうどいいんだ」
    お茶だけでいいといわれても白銀の分のお茶菓子もダビウムはもってきていた。
    ダビウム「そうですか」
    白銀「気を落とさないでおくれ、気持ちはとてもありがたいと思っているよ。さて…どこからどこまで話したものか」
    椅子に座り、黒曜を膝に乗せた白銀がゆっくりと瞼を閉じる。


    白銀「私たちはね、一部のあの者たち、精霊と呼ばれる彼らに光を集める…光を強奪するものとして設計しつくられたんだよ。」
    語られる声色はとてもやわらかだがあきらめと悲しみがまざっていた。
    白銀「光を集めるという基本設計は君達と同じさ。ただ上限を超えた上に、君達…光を持つすべてのモノから奪いとってくるよう過ぎた欲によって書き換えられ化け物にされたんだ」
    まぶしく無垢な星の子…話に食い入るロロの頬を撫でる。その指先は本当に愛しいものに触れる優しいものだった。
    白銀「私は他の同胞とは少し違っていたようでね。ああこんな事もあるだろうと楽観的だったし、とくに星の子の君達は美しく愛おしかった。他の同胞が光に焦がれ渇き、その手に無理やり収める様子をなんてもったいない事をしているのだろうと見ていた。」
    閉じられた瞼のむこうにかつての同胞たちの嘆きがうつる。
    あるものは光を奪う事の快楽におぼれ貪り、あるものは自分たちの存在を造り出したものへの憎悪に狂い全てに牙をむいた。
    白銀「私たちは今の過程にあった失敗作で、業の一つなのさ。皮肉なことに他のものから命の光を奪うことでその生のともし火ものびてしまってね。」
    自身を思う気持ちは凪いでいても、書き換えられた本能に狂い苦しむ同胞たちはとても悲しくかといってどうする事も出来なかった。
    白銀「造り命令した者たちよりも生き延びてしまっている。私はこの行きつく先を失ったそれらを己の楽しみとしてほどよく嗜んでいるんだよ。」
    終着点を失い際限ない渇望にのまれ壊れていく同胞たちは次々狩られ、狩ってきた。
    仕方のない事だと、むしろこれでまた光を内包する者たちの平穏が保たれたと安堵し、自己満足の糧とした。
    自分は過行く数多の光を内包するものから甘露な雫を一口わけてもらうことで書き換えられた欲を鎮めて、いなくなった同胞たちの欠片と穏やかに紡がれる星の子達の日々を眺めて過ごした。
    白銀「造った者たちに私は出来損ないと呼ばれていてね。無理やり奪う事がどうしてもできなかった。でもそれが功を奏したのか今日この時まで溺れる事も狂う事も憎み続ける事もなくここにいる。」
    膝に乗せた黒曜を撫でて、かつての猫ではない黒曜に思いをはせる。
    白銀「君達を襲ったのは私達の成れの果て、心も体も保つことができなくなったどうしようもない化け物たちだよ。」
    ステラ「じゃあ私たちは星の子を…」
    白銀「いいや、そもそも星の子の遺体を改造していてね。最初から星の子とは言えない存在だよ。それがさらにあの黒い化け物に変異したんだ。もう一欠けらも違う生き物だ。だからその考えは間違っているし、捨てなさい。」
    自分や同胞たちの魂と言えるものがどこから調達されたのかは白銀もしらなかったし知ろうとしなかった。
    どうせろくでもないのだ、そして同胞たちを終わらせてくれた者たちに余計な心労をあたえたくない。
    黒曜「花の娘、よく見て感じてみるがいい。お前ならわかるだろう。これが本当にお前と同じものか?」
    ずっとぽやぽやしていた黒曜が別人のようにその生粋な黒い瞳を鋭くステラに向けている。
    ステラが黒曜から向けられるそれと、白銀から強く感じる異質なものに身震いする。
    しぐ「お前普通の口調できるんじゃねーかっ」
    つまらなそうに頬杖をついて聞いていたしぐが思わず顔をあげてつっこむ。
    黒曜「にゃんのことにゃー」
    しぐ「はーん、お前都合が悪くなるとそうするんだな?」
    黒曜「にゃにゃ、なぉーん」
    コロっとまとう雰囲気を戻した黒曜にステラと話を聞き入っていた他の花笑む茶室組が目をぱちくりさせる。
    フユキ「まぁ、そんなに怖がる事じゃないかな?しぐと似たような物でしょ。」
    しぐ「同じにされるの嫌デスー!まぁ、まじめに答えるなら脅威度は俺らや星喰のが上だね。困ったことに!!大変不本意ですが!!!」
    フユキ「同じとは言ってないでしょ、似てると言ったの。」
    しぐ「ア、ッハイ。ゴメンナサイ!!」
    フユキにすごまれて居住まいをただす。
    湯豆腐「吸いつくして殺されない限り、落とし物回収できればリカバリーできるんだもん。まだかわいげもあるよ。あっちは直せないじゃん。」
    しおしおとはんなりを抱き込む。
    しぐ「俺だってなりたくてなったんじゃないんだぞー」
    黒曜「それは白銀たちも一緒だの」
    しぐ「ぐぬぅ…」
    はんなりがしぐの腕から身を乗り出しふすふすと黒曜を嗅いだと思ったら、何故か黒曜にハイタッチを要求している。
    ぺちんっと可愛い音を立ててハイタッチがなされた。
    白銀「ふふふ、そうさ!とるに足らない年寄りの話はこれで終わりだよ。でもそうだねぇ、少しでも思いをはせてくれるならその甘露な光を私に一口わけてはくれないか?」
    役者のように手を広げおおげさに振る舞う。
    しぐ「彼女たちに手を伸ばすなら加減はできないぞ。」
    直前までぐだぐだしおしおだったしぐが、白銀のコアに剣先を突き付けている。
    ステラもテーブル下で柄を握りしめる。
    白銀「おお、怖い怖い。誤解しないでほしいなぁ、私は同意をえられた子としか踊らないよ。」
    しぐ「ここはお前のダンスホールにはなりえない、他の社交場を探すんだな。俺は他の所までは知らん。」
    白銀「それは君が決める事ではないと思うがねぇ、まぁ私は争いは好かないよ。あれは無駄に光が流れるもったいない行為だ」
    黒曜「そもそも白銀、戦うのなめくじだの。黒曜は壊れたのを片付けするのは手伝うけどそういう戦いは手伝わないの」
    ダビウム「僕の店で血なまぐさいことするのもお断りだよ!!」
    めずらしくダビウムが怒りをあらわにしている。
    しぐ「あ、うん。ダビウム、ごめんね。表出ようか白銀さんや」
    ダビウムから見えていなかったもののステラもあわてて剣からカップに持ち替えて気まずそうに茶をすする。
    白銀「私にその気はないよ」
    剣を下ろし席を立つ。
    フユキ「しぐ、ステイ!!」
    しぐ「ワン!!!」
    座って再びはんなりの弾力を抱き込む。
    モコ「しぐさん忙しいですね。」
    湯豆腐「あれなりに場を和まそうとしてるんだよ。どっちが道化なんだか…ちょっと本気もまざってたけど」
    モコが、え、本気まざってたの?と湯豆腐を見上げる。
    ロロが不穏ながれになるたびに手をとめてはいたものの、今は愛用のメモ帳にカリカリと夢中に書きこんでいる。
    白銀「ロロ君は舞台作家をめざしているんだったか、創作の糧にはなりそうかい?今回の事件も昔話も君がどう昇華してくれるか楽しみにしているよ。もちろん、秘密にしてほしい所は頼むよ。」
    ロロ「う、うん!書き残せない事もあったけど書ききってみたい!」
    モコ「また書ききったからって夜中に起こすのはやめてよね」
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