Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    rinkokonoe

    @rinkokonoe

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 32

    rinkokonoe

    ☆quiet follow

    お祭りにいく塚橋組のお話です。
    二人がお祭りで浮かれポンチしているだけのお話です。

    お祭り日和今週末は近所の神社で祭りがあるらしいと太郎が言っていた
    そうだ、浴衣があったな、と思い出して箪笥の中から太郎に似合いそうな柄を探す
    柄はなくていいか、と笹色の浴衣を取り出して衣紋掛けに掛けておいた。
    俺は気に入っている紺色に縦縞の模様のついた物を選んだ。
    帰宅した太郎に週末は祭りに行くからな、と言って微笑むとすごく行きたかったんです、と嬉しそうに笑った
    作っておいた晩飯を一緒に食べると何を食べたいとか、何がやりたいとか嬉しそうに話している太郎が愛おしくなって、早く週末にならないかな、と考えていた

    それから数日、祭りの日が来た
    太郎はよほど楽しみだったのだろう、早上がりをして帰ってきた
    「浴衣、着付けるから服脱いでこっちに来てくれ」
    なんだか少し恥ずかしいですね、と言いながら太郎が服を脱いでゆく
    前から思っていたが、いい身体をしているんだよな、と思いながら後ろから浴衣に袖を通して貰って、着付けてゆく
    「苦しくないか?」
    「大丈夫です」
    ならよかった、と手慣れた手付きで着付けを終える
    「うん、よく似合っている」
    そう言って頬をすり、と撫でると太郎の頬が赤くなった
    今度は俺の番だな、とスラックスとワイシャツを脱いでから、きちんと畳んでから自分用の浴衣に袖を通す
    慣れているのですぐに着付けが終わると食い入るように見つめられていた事に気がついた
    「どうだ?」
    「凄く、良いです」
    ならよかった、と言って色合わせをしておいた信玄袋に財布と携帯電話、それと扇子を入れた物を手渡す
    「よし、行くぞ太郎」
    「はい」
    玄関に着くと、下駄を履く
    「もし靴擦れしたら言ってくれよ、絆創膏も用意してあるからな」
    「そんなやわな足してないですよ」
    そう言って俺より先に出た太郎が左手をす、と伸ばしてきた
    人通りも少ないし、良いかとその手のひらを握りながら神社に向かった

    家から歩いて10分程経つと、祭囃子の音が聞こえてくる
    ああ、夏を感じるなと思う
    「お祭りなんて、久しぶりです」
    「俺もそうだな」
    鳥居をくぐる前に一礼をしてから境内の階段を登ってゆく
    左右に出店が出ている
    焼きそば、イカ焼き、たこ焼きに焼きもろこし、腹が減る匂いが漂っている
    「腹減ったろ、何が食いたい」
    「んー、あイカ焼きと焼きそば食べたいですね」
    わかった、と言って手分けして買いに行く
    俺はイカ焼き、2本買うとオマケでゲソをつけてくれた
    お互い待ち合わせ場所にしていた所に向かうと、太郎が先に着いていたようで、こっちです和さんと手を振っている
    ふふ、とその子供じみた姿につられて微笑んでしまった
    「おまけにゲソを貰った」
    「え、なんか変なこと言われませんでしたか?」
    特に言われてないぞ、と首を傾げるとなら良いんですけど、なんて太郎が言っている
    「まぁなんだ、冷めないうちに食べよう」
    「そうですね」
    こぼさないように気をつけるんだぞ、なんて言うと子供じゃないんですからと頬を膨らませている
    なんだかいつもより子供じみている太郎が可愛く感じてしまってしょり、と空いた腕で頭を撫でてやった
    「ん、このイカ焼きプリっとしてて美味いです」
    焼かれすぎていない店を選んだからな、なんて言わずに俺も大きな口で齧る
    香ばしい醤油の香りの後に丁度いい焼き加減の歯応えとイカの香りが口から鼻に抜けてゆく
    「うん、うまいな」
    「いいとこ見つけましたね」
    余程腹が減っていたのだろう、ガツガツと一本食べ終わった太郎はゲソを眺めている
    「お前が食べて良いんだぞ」
    「あ、じゃあ半分こしましょうよ」
    それもいいな、と言って俺も味わいながらイカ焼きを食べ終えて、先に齧り付いていた太郎の裾をくいと引っ張る
    そうすると太郎が口の中にそっと運んでくれた
    うん、ゲソも美味い
    吸盤のコリっとした歯応えが身とはまた違って良い
    「焼きそば、目玉焼き乗せてもらいました」
    これも半分こしましょ、と言って太郎が器用に目玉焼きを半分に箸で切るとお先にどうぞ、と言われた
    半熟の黄身がとろりと麺に絡んで美味そうだ
    まだ湯気を立てているのでふぅふぅ、と冷ましてから啜る
    鼻の中にソースの味と青海苔の味が広がって、黄身の甘味も合わさって良い味がした
    「あ、これも美味いですね」
    「お前も店選びが美味いなぁ」
    そりゃ、和さんの飯食ってたらそうなりますよ、なんて焼きそばを啜りながら話す太郎が愛おしい
    お互い交互に食べて完食すると、太郎の口にソースがついていることに気がついた
    信玄袋からハンカチを取り出すと、拭ってやる
    和さんもついてます、と太郎にハンカチを奪われると顔が近付いてきた
    べろりとハンカチで隠すようにして、口の端を舐められた
    何度か舐められると、ごちそうさまでしたと太郎が言ってはにかんだ
    「誰かに見られたら恥ずかしい、からこうする時は言ってくれ」
    「わかりました、すみません」
    浮かれている、そんな太郎は見たことが無かったのでまぁいいかと許してしまった
    次どうしましょうか、甘い物食べます?それか遊びますか
    俺射的やりたいですねそう言って立ち上がった太郎はまた手を差し出した
    その腕を掴んで俺も立ち上がるとそうしよう、と言って目当ての物を探しに行った
    ヨーヨーすくい、スーパーボールすくい、射的にくじ引き、近くにはリンゴ飴屋やかき氷、あんず飴、わたあめも売っている
    「よし、太郎の腕を見せてもらおうか」
    そう言って15発、弾を買う
    太郎は念入りに銃の品定めをしてコッキングを触ってから、これにしますと言って弾を詰めてから、菓子の箱を最初に狙った
    少し上の方を狙ってパンっ、と弾が飛んでゆく
    真ん中の上の方に直撃したそれは少しグラグラと揺れてから落ちた
    一発目から取れるなんて凄いじゃないか、と褒めると好きなんですよ射的と嬉しそうに言ってから新しい弾を詰めて今度は飛行機の模型を狙う
    何回か当てて後少しで落ちそうだ、店の店主も驚いている
    射撃の才能がある事はいい事だ、と俺は思いながら応援する
    装填した弾が弾けると人形が倒れた
    「すげぇ、取れました!」
    「うん、凄いじゃないか」
    才能があるな、と肩を叩くと嬉しそうな顔でこちらを振り向いてくれる
    尻尾が生えていたら、それはもうぶんぶんと揺れているのだろう
    残り3発、太郎は緑色の石のついた指輪を狙って取ってしまった
    袋に入れて貰ってから、店から離れると太郎が指輪を取り出してそっと薬指につけてきた
    「おい、恥ずかしいだろ」
    「大丈夫ですよ、お祭りだから」
    そう言ってふふ、と笑う
    そんな顔をされてしまったら、抗うことができないので俺はそれをつけたまま歩き回る事に決めた
    プラスチックでできた子供じみたそれは、提灯の光に照らされてきらりと光った
    「スーパーボール、すくおう」
    「いいですね」
    300円を払うとポイを受け取る
    袖が濡れないようにたくしあげるとくるくると回るスーパーボールを眺める
    ピンクや青、黄色や緑、オレンジ色やマーブルの色が混ざった物が流れてくる
    大きなスーパーボールも欲しいが、とりあえず最初は腕慣らしだ
    丁度いいタイミングで流れてきた黄緑色のスーパーボールをすくう
    なるべくワクのあたりを使ってすくう
    ぽん、と銀色のボールに入った、初手は大丈夫なようだ
    ポイの状態はどうだろうか
    亀裂は入っていない、よし、と気合を込めてすくう
    何個か取れたところで亀裂が大きくなってきた、こうなったら最後に狙うのは緑色の大きなスーパーボールだ
    頑張ってください、と後ろから太郎の声が聞こえる
    よし、とタイミングを合わせて大きなスーパーボールを狙ったすくえた、と思ったらポイが破れてぽちゃん、と水の中に落ちてしまった
    若い店主にボールを渡すと結構取れましたね!と言われてビニールの袋に入れて貰った
    左手の手首にそれを通して太郎に見せる
    「わ、10個もとれたんすか」
    凄いです、と言ってくれる
    嬉しい気持ちになりながら祭りを満喫する

    「太郎、わたあめ食べようか」
    「袋、つけてもらいます?」
    袋はなくていいなぁ、と言った和さんはわたあめ屋に向かってカラコロと音を立てて歩いていく
    「親父さん、大きいの袋なしで」
    あいよ、と威勢のいい声が聞こえると、ザラメが真ん中に吸い込まれて綺麗に綿雲のような物が浮かんでくる
    くるくると丸く丸く、大きくなったそれは入道雲のようで和さんに妙に似合っていた
    何故だろうか、一瞬飛行機と雲が和さんの後ろに見えたようなきがした
    「太郎、どうしたんだ?」
    「今、飛行機が見えた気がして」
    飛行機?そう言いながらふんわりとしたわたあめを食べている和さんをじっと見つめた
    もう飛行機と雲は見えなくて、目の錯覚だったのかな、と思った
    うん、甘くて美味いな
    太郎も食べなさいと指でちぎられた破片が口元に添えられる
    口の中に放り込んで貰うと、それはすぐにふわりと溶けて甘い味に変わってしまった

    「うん、美味かった」
    「和さん甘い物好きですもんね」
    ゴミ箱に棒を捨てると次は何をしようか、と考える
    そうしていると放送が流れた
    これから盆踊りが始まるらしい
    「太郎は、踊れるか?」
    「まったくですね」
    なら、一緒に踊ろうそう言って和さんの左手が伸ばされる
    きらりと緑色の石が光っていた
    境内の中には櫓が立っていて、その周りに人が集まっている
    太鼓の音と音楽が鳴っていて、それに合わせて踊っている
    「お、次は炭坑節だぞ」
    これなら簡単だから、と和さんに引っ張られて輪の中に入る
    「太郎は俺の真似をすれば良いからな」
    「わかりました」
    そう言って和さんの真っ直ぐ伸びた背中を眺めながら真似をする
    しなやかな腕の動きが優雅で華麗だ
    それに比べて俺は、なんて思いながら真似をする
    何度も同じ動きが繰り返されるので、段々と踊れるようになってきた
    曲が終わると輪から出て、休憩だ
    和さんが買ってきてくれたラムネを飲みながら、難しいですと呟いた
    「自信を持って良いんだぞ、筋が良かった」
    次は俺の前で踊ってみるか?なんて言いながら汗をかいたラムネの瓶が和さんの喉を潤している
    口付けがしたい、なんて思ってしまったのは心のうちに秘めておこう
    「和さん、結構楽しみましたし、そろそろ帰りましょう」
    「もう少し遊ばなくても良いのか?」
    良いんです、それよりも
    したい事ができてしまったのでと言って立ち上がると和さんの腕を引っ張って境内を降りてゆく、途中であんず飴を土産に買った
    大当たりで3つも当たった、運がいい
    帰ったら、これは後にして口付けがしたい、そう思いながら俺は和さんと手を繋ぎながら帰路についた
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤👏👏❤💒💒💒💒😍👏💖💕💒💒☺💕💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works