あずあらの元旦3
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浮かれたカウントダウンに乗っかってジャンプする。
「「あけおめー!!」」
やべぇ、年越した瞬間俺たち地球上にいなかったわ!と犬飼が楽しそうに笑う。
毎年ラインで誰かが言ってたお約束なソレをまさか18にもなって自分がやるとは思わなかった。
みんなでやれば怖くないとは言ったもんで馬鹿らしいそのノリもみんなでやるとかなり楽しいもんだなと思った。
「俺はいたけどな!」
じゃんけんで負けたカゲが悔しそうでまた笑った。
「許せカゲ、世界は残酷なんだ」
「あ、おい投げんな!」
新年初笑いだななんて思いながらポケットに入れてたお茶を投げる。ちょっとぬるくなってしまったが飲み頃ってことで許してほしい。
みんながみんな思い思いの飲み物を投げるから受け取りきれずに何本か散らばる。
そもそも犬飼が投げた汁粉は受け取る気がなかったみたいだ。
お汁粉に罪はないとボヤキながら拾っているからちゃんと消化されるだろう。カゲのポケットは飲み物でぱんぱんに膨れている。
影浦が撮った写真がグループラインに投稿されたのでその写真を保存した。俺もみんなも馬鹿みたいに笑ってた。ちなみに犬飼は見切れてた。ラインの通知もひっきりなしになっていて案外みんな起きてるもんなんだなと思った。
この写真送っとこ!と当真が言い出してそれもいいなとみんなであけおめラインを送り始める。半崎と加賀美にも送るかと荒船隊のチームラインを開くとすでに絵文字で盛られたあけおめメッセージと先程の写真が送られていた。穂刈の仕事の早さに笑いながらメッセージだけ打ち込んだ。
荒船隊の下にピン留めされたトークルームを開いて少し悩む。
ラインくらいなら送っても大丈夫か?
電話をして声を聞きたいけれど今頃は防衛任務にあたっている時間で出れるかはわからない。
これから本部に向かってももう少しで交代の時間だ。着いた頃には仮眠をとっている頃かもしれない。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
飾り気のないメッセージだけ打ち込んで送信ボタンを押そうと思ったら携帯が震える。
画面に表示された名前に顔が熱くなった。盛り上がってるみんなに一言断りを入れて少し離れる。
「…はい」
(おー、明けましておめでとう。今電話大丈夫か?)
「明けましておめでとうございます。東さんも電話大丈夫なんですか??」
(ちょうどゲートも閉じてひと段落したところだから大丈夫。楽しそうな写真も送られてきたし、荒船の声が聴きたくなってな)
誰かがさっきの写真を送ったのだろう。
俺より先に挨拶するなんて誰だよと内心面白くない。
(返事を返す前におまえに電話してしまったよ。新年初電話だな)
その台詞は狡い。楽しそうに笑っているのが受話器越しだというのに擽ったく感じる。
声を聞いてしまうとだめだ。会いたくなってしまう。
「おれも一番に声が聞けて良かったです。」
耳まで熱い。きっと外が寒いせいに違いない。
今日会えますか?って本当は聞きたかったのだけれど新年早々、しかも夜間任務明けで疲れている東に聞くことが出来ず他愛無いはなしをしてすぐに電話が切れた。
戻ると穂刈と当真がにやにやと気色悪い顔でみてくるのでとりあえずポケットに入っていたカイロを顔に投げつけておいた。会長に寒いからと2つ持たされていて良かった。