帰れない子供たち年末年始だからといって、ミラージュことエリオット・ウィットに休みはない。APEXゲームは休みになるが、自身が経営するバー、パラダイスラウンジは掻き入れ時だ。やれ忘年会だ新年会だと、客足が途絶えない。それでも例年は元日から三が日まで休みにして、実家に帰省して母と共に過ごしていたのだが、今年は営業すると約束してしまった。
「寂しかったらいつでもウチの店に来いよ。そんで俺様の作る美味い飯と酒を食って飲んで、金を落としていけ。ああ、心配するな。一杯くらいはサービスしてやるよ。同じレジェンドのよしみだ。」
お節介野郎め、自分でもそう思う。それでも年末年始をひとり寂しく過ごすであろう同僚達を思うと放っておけなくて、口が勝手に動いていた。実家への顔出しは元日、営業前に済ませてしまおう。母には少し申し訳ないが、俺はいつでも会えるのだ。レジェンド達の中には訳あり者が多い。年末年始を実家で家族と過ごす、そんな平凡な望みを叶えられない者もいる。
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