「今日、何の日か知ってる?」
いきなり投げかけられた問いに宮野志保は大きな瞳を瞬かせた。
「……地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー?」
「一言一句違わずに即答できる聡明な君が好きだよ」
ハリウッドスター顔負けの美貌を持つ男に、にっこりと微笑まれ『好きだよ』と言われても志保の鉄仮面は崩れない。
「それはどうも。正解なの?」
「僕が求める答えではない。よってデータは渡せないな」
「それは困るわ。そのデータがないと今日中に仕事が終わらないわよ。……4月4日よね、何だったかしら。あ、トランスジェンダーの日?交通反戦デーも今日だったかしら?」
「どちらも不正解。降参?」
にやりと笑う降谷零に志保は特大のため息をお見舞いした。
「……で?正解は?」
「君と僕の日」
「……は?」
「零の0と志保の4、04月04日だから僕と君の日だろ?」
「…………」
くだらないわね、という言葉を飲み込んだ志保は「なるほどね…」と呟いた。
「だから去年の4月4日に入籍しようって言い出したのね?」
「そういうこと」
降谷が差し出したUSBを受け取ると志保はにやりと笑い返す。
「じゃあ今日中に揃って家に帰って、記念すべき初めての結婚記念日を祝いましょうか」
「ああ。19時に研究室に迎えに行くよ、奥様。」
返事の代わりにUSBをヒラヒラと振って志保は部屋を出て行った。降谷も報告書を仕上げるべくパソコンに向き直る。
口元を緩めてボソリと呟く。
「素直に結婚記念日だと答えない君が、好きだよ」