知己のひめはじめ【知己のひめはじめ】 陳情令・座学/全年齢
(しばた三歳)
「おうい!」
白い校服をたなびかせて、二度見するほど細く伸びやかな肢体が、小鹿のように軽やかに走ってくる。
タタタン、タタタン。階段を駆け降りてくる不思議な足拍子は、姑蘇藍氏の子弟たちからは決して発されない音だ。
「へへっ、ここにいたんだな。蔵書閣にいないから探したぞ」
いったい何がそんなに楽しいのだろう。魏無羨は冷泉の淵に立ち、藍忘機を見下ろしながら、実にご機嫌そうに笑っている。
冷泉に浸かったまま白衣を羽織り、江家一番弟子の笑顔をまぶしげに見上げた藍忘機は――まぶしいのは水面に反射した日差しのせいであり、他に意味はない――不愛想にひとこと「何の用だ」と問うた。すがめた目線は鋭く、まるで妖邪を見据えているようだ。しかし魏無羨は一切頓着せず、
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