空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:09 人間というのは、こんなにも綺麗な弧を描いて飛ぶものなのか。高師駿馬はその光景を見ながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。
「アイツ、また汐見怒らせたな」
夏休みに入っても、全寮制のこの学校から帰らない人間は多少は存在している。高師しかり、隣でボソリと言葉を漏らしていた篠原しかり。そして彼らの目の前で模擬試合を行なっていた筈の汐見と空閑もまた、帰省をせず学校に残った生徒であった。
「……あれ、本当に汐見なのか?」
「汐見じゃなかったら誰なんだよ」
思わず防具で覆われ表情が見えない二人の男達が自分の認識と相違ないか確認してしまう高師に、篠原は苦笑混じりで相違ないと口にする。高師が知る汐見は長身の部類に入るだろう高師自身とあまり変わらない身長ではあるが、今宙を飛んだ空閑よりは背が低く、体格にしても空閑よりは薄い体つきをしていた筈だ。
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