きたない こい どうも病院というところは居心地がよろしくない。幸い頑丈にできたからだをそこそこ無難にやってきた正道は、これまで大きな病気をしたことがない。病院なんてものに世話になったのは大むかしに歯医者に通ったことと、ひとりきりで子を産むのだと腹をくくった嬢に付き添った時ぐらいのことだ。
ひとりきりで赤ん坊を生んだ嬢は母親にはならなかった。こんなことになるんじゃないか。そうどこかで予感していなかったかといえば嘘になる。けれどまさかその赤ん坊を自分が育てることになろうとは。流石にそれは想像すらしていなかった。どうしてそんなことになったのかなんて、今でも正道にはわからない。それがわかることなんて、この先もきっとない。
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