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    柊月んたまよしのり

    気ままに描いたり書いたりお休みしたりする。
    ジャンルは雑多。

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    POIPOI 27

    分岐芸で遊んで楽しかった過去作を再掲。
    最後のハッピーエンドはAngelical Syndromeの世界線です。

    #ブブ神
    bubuGod
    #AngelicalSyndrome

    【ブブ神】堕落した神父と悲しき悪魔天使の心臓を喰らうことは地上空上全ての生き物にとって最大の禁忌とされ、神以外の者が命を創ることよりも罪は重い。
    故に、もしも天使の心臓を食らってしまえば、その者は大罪人とされ、堕落し、闇に身を染めることとなる。

    そう、だからこそ…闇に身を染めたいが故に私は……



    堕落した神父と悲しき悪魔





    悪魔の中でも上位に君臨するベルゼブブは、その実力と残虐な性格から他の悪魔達からも恐れられていた。
    そうして近寄ることさえ畏怖され、更には慣れ合いをあまり好まないが故に孤立していた彼だが、そんな彼にも愛する者があった。

    ただ…それは彼の片思いのようであったが。

    上位悪魔の心を虜にしたのは、なんと聖職者である神父であった。
    地上空上全ての命を尊び、名もなき花々にさえ優しく微笑み世話をする彼は聖職者の鑑であり、純白の心を持った天使のような存在であった。
    そんな彼に一目惚れをしてしまったベルゼブブだったが、いかんせん闇と光…相容れぬ存在同士である事は明白であったがために想いを告げる事は叶わず、ただ少し離れた場所から誰にも悟られぬよう隠れて見つめることしかできずにいた。

    彼を唆すなどして闇に引き込む事も考えなかった訳では無い。
    ただ、そうしてしまうことで彼の澄み切った美しいシアンの瞳を濁らせてしまうのは、どうにも惜しく感じたのだ。
    故に、ただ遠くから見つめ、彼を狙う悪の手から人知れず彼を護ってやれたならそれでいい…そう悪魔は思っていた。

    それなのに、ある日、運命はあまりにも残酷な展開を果たしてしまった。

    神父が、天使の心臓を喰らったのだ。

    その日も人知れず彼の警護をと教会の側まで来た悪魔だが、言い知れぬ不穏な気配を察知し、本能的に教会の奥…礼拝堂へと飛び込み、敵と距離を取るため礼拝堂の奥まで滑り込み、足でブレーキをかけながら「誰だ!!」と叫んだ。
    しかしそこに居たのは敵ではなく、彼が愛してやまない神父だった。
    威勢のいい登場を見せた悪魔の方を振り返った神父は
    「あぁ…悪魔さん、お待ちしておりました…!!」
    と感激を含んだ声で歓迎した。
    ずっと片想いをしてきた愛しの彼に歓迎された悪魔だったが、ここで気配以外の違和感に気付く。
    静謐な空間である礼拝堂…それなのに、ひどく甘い血の匂いがするのだ。

    これまで幾人もの人を殺め、多くの種族と戦ってきた百戦錬磨…歴戦の猛者たる悪魔はこの血の匂いがどの種族のものなのかすぐに分かった。
    だが、脳内で構築されたその仮説は聖職者たる神父にはどうにも似合わず、悪魔は電気も燭台の火も灯らぬ暗い礼拝堂内で探るように目を凝らした…

    そして、そこで見た光景に悪魔は絶句した。

    月光差し込む礼拝堂の中央、横たわるは天使の屍。
    その天使の鮮血で汚れた姿で狂った笑顔を向ける神父を前に、ベルゼブブは震える足で後ずさりながら「やめろ…嘘だ…こんな事…嘘だと言ってくれぇぇ!!!」と泣き叫ぶ事しかできなかった。

    何処だ、何処から、何が間違っていた?
    自分はただ、誰にでも…名もなき花にさえも優しい慈愛に満ち溢れた神父をずっと見ていたかっただけで、それさえ叶うなら他に何も望むものは無かったのに。
    なのに、どうして…どうして今、その彼が血で汚れている?それも、天使の鮮血で…
    ベルゼブブは必死に考えた。何がどうしてこうなってしまったのかを。
    自分の目の前に居るのは紛れもなく愛しい者なのに、その彼はもはや別人のようで…
    天使の心臓を喰らってしまった彼はもう、聖職者としても、人間としても生きていくことは叶わない。
    彼は狂ってしまったのだ。

    彼を狂わせてしまったものは何か?
    彼は何故、天使の心臓を喰らうという「生ける者としての最大の禁忌」を犯してしまったのか?
    今更その答えを知ろうとも、既に大罪人として堕落してしまった“元”神父の彼を救う手立ては無い事はベルゼブブも知っていた。
    それでも、訊かずにはいられなかった。
    「どうして…こんな事を…」
    普段の饒舌な彼ならもっと言葉も多く出たことだろう。
    しかし、目の前にある信じ難い光景に気圧され、更には護りたいとさえ思うほどに愛していた者が穢れ、壊れてしまったという、彼にとっては何よりも残酷なその事実による絶望に打ちひしがれてしまい、
    たった一言、その短い言葉を絞り出すのがやっとだったのだ。
    しかし、そんな彼の心情を読み取ってくれる事もなく、目の前の堕落した“元”神父はこう語るのだった。

    「貴方を愛しているからですよ。貴方の傍に居たい、貴方と共に生きたい、貴方に触れたい…そう思ったからです。」

    本来ならそのような告白を、他でもない彼から告げられたならベルゼブブは舞い上がり、上級悪魔とは到底思えないような幸せに満ちた破顔の笑みを見せたことだろう。
    しかし現在は状況が状況だ。とても喜ぶどころではなく、寧ろ彼のその言葉はベルゼブブを更に追い詰めてしまったのだ。
    「俺を、愛したから…?だから、こんな事を…?」
    彼の衝撃的な告白に、ベルゼブブはその絶望に全身の力を奪われたようにへたりこんでしまう。
    そんなベルゼブブの前に立つ大罪人は緩慢な足取りで近付きながら語る。

    「貴方がいつも私を見つめてくれている事は知っていました。最初は命でも狙っているのかと様子を見ていましたが、どうもその様子はなく、更には毎日綺麗な花束や美味しい果物…それに毎回添えられたカードに綴られた心優しいメッセージを見て、貴方が私に向ける視線の意図を理解したのです。」
    二人きりの礼拝堂に彼の靴音がカツン、カツンと冷ややかに響き渡る。
    そしてベルゼブブの目の前に到着した彼は、膝をつき愛しき悪魔へ手を差し伸べて最後の仕上げとばかりに言い放った。
    「私は、そんな貴方に心惹かれて…貴方を愛する為に“堕落”を選んだのです。」
    その瞬間、悪魔は理解した。
    もう彼も自分も、救われることはおろか、戻ることすら叶わないのだ、と。
    眼前で濁った眼で微笑む彼の過去のあたたかな姿がフラッシュバックする。
    そのシーン一つ一つが悪魔の心臓に突き刺さるようで…
    そして、悪魔は音もなく流れる涙をそのままに力なく俯いてしまう。

    もう戻れない。
    それならば…──
















    【バッドエンド】



    「なぁ神父さん、答えてくれ。」
    悪魔は静かに口を開いた。
    声の本人としてはもっと穏やかな声色を発するつもりだったが、いかんせんあまりの出来事に動揺が極まっていたせいで上手く調整できなかったのだ。
    その、本人さえ想定外だった程に冷たく響いた声にも動じることなく眼前の彼は微笑み「何でしょうか?」と小首を傾げて見せるだけだった。
    その様子に悪魔は自分よりも深い闇に堕ちてしまった彼を垣間見た気がして淡く、短く憐れみつつも問い掛けを続けた。
    「貴方には、この世の全てを棄てて、俺と共に残虐な世界を生きる覚悟はあるか…?」
    その声は、まるで何かを祈るように震えていた。
    恐らくはまだ、彼を救う手立てを必死に考えていたのかもしれない。

    まるで、彼の良心に訴えかけるかのようなその問いも虚しく、彼は満面の笑みをたたえ、こう言い放ったのだ。
    「勿論です。貴方の傍に居られるのなら、どのような世界であろうと私にとって楽園となり得るのです。」
    その答えを受け、悪魔は何かを諦めたように短く切ないため息をつくと、
    「そうか…なら、良いんだ。」
    そう自分に言い聞かせるかのごとく呟くや否や、すっと立ち上がり、自らの手首に自身の鋭い牙を掛け、その牙で勢いよく手首を切り裂いた。
    飛び散る鮮血、濃密な錆の匂い、感嘆の声を上げる眼前の彼。
    「最大の禁忌を犯し、闇に落ちし者よ…この血を啜り、我の従者ファミリアとなれ。」

    礼拝堂の突き当たり、ステンドグラスを通して色とりどりに降り注ぐ月光と、その逆光に黒く塗り潰された十字架を背に、血塗れの手を差し出しそう告げる悪魔は、彼にの目には何者にも替え難い程に神々しく映った。
    そしてその命令は、彼にとっては最高のプロポーズだった。
    眼前の神々しい悪魔、甘く切なくたちこめる鮮血の香り、そして待ち望んだプロポーズ。
    彼は躊躇わなかった。
    先程そこへ差し出した手を一度引っ込め、悪魔より差し出された鮮血滴る手首をそっと取ると、紅く染まるその傷に口付け…
    「イエス・マイロード(我が主君の仰せのままに)。」
    と、応えた。
    その刹那、彼に異変が起こる。
    鮮血のような朱へと染まる瞳、蒼白く血の失せた色を帯びる肌色、その肌に這うように刻まれていく蔓植物のそれに似た闇色の紋様…
    それは、彼が闇の住民へと成り果てる為の変化だった。
    しかし、それは完成を待たずして突如破綻する。

    涙腺からは赤黒い血が溢れ、肌のあちらこちらは紋様に沿うように裂けていき、四肢の骨は激しく歪み、身体の枠から突出し…
    異形も異形、その姿はまさに不完全なキメラのそれであった。

    そう、失敗したのだ。

    彼は元々は聖職者。それも、ただその職務に就いていただけなどではない。彼は心根から清く、まるで聖母の生まれ変わりのように無垢な魂をしていた。
    それ故に闇とは相性が悪すぎた。

    闇に染まるには魂の何処かしらに穢れを有している必要がある。
    しかし、彼は穢れはおろか、堕落した現在でさえその心に翳り一つ持ちはしなかったのだ。
    ただ純粋に、そうすれば愛しき悪魔に触れることが叶うのだ、と…ただそれだけの思いで天使の心臓を喰らい、堕落してしまった今もなお、無垢な幼子のように純粋な心で目の前の悪魔を見つめていた。

    それを悪魔は見抜けなかった。その結果がこの悲劇であった。

    「…っ!!………ッッッ!!!」
    鋭利な刃のように変形し、喉から突出した頸椎のせいで声を出すこともできず、失敗作と成り果てた彼は立つことの出来ない身体で床を這い、悪魔の手を掴むと縋るように見上げた。
    その目から溢れる血液はまるで絶望に染まる涙のようで…
    いや、本当に絶望していたのだろう。
    天使の心臓を喰らうという大変な作業を達成し、待ち望んだプロポーズを獲得し、漸く愛しき悪魔の伴侶になれると思った矢先のこれである。
    幾ら無知な彼であろうと、この変化が失敗のサインである事は理解出来た。いや、理解できない筈がなかった。

    何故なら彼を見る悪魔の表情が明らかに動揺に歪み、眼に絶望の色をたたえていたからである。
    そんな悪魔の顔色を見て、全身の随所随所が変形し裂けてしまった『失敗作』の彼は、霞ゆく視界の中に自分のいびつに歪んでしまった手を両手で握りしめて泣きながら必死に何かを叫んでいる悪魔を捉えると、もう声帯も裂けてしまって声にはできなかったが、口の動きだけで悪魔にこう告げた。
    「泣かないで、愛しいひと。貴方を愛せたこと、貴方に触れられたこと…本当に、本当に幸せでした。」
    そして、そこで少し間を置いて、最後の力を振り絞るようにこう続けた。

    「さようなら、私はいつまでも貴方を愛しています…。」

    そう言い切ると彼は目を閉じ、絶命した。
    悪魔はまだ目の前の光景が、愛しき彼の死が、まだ信じられなくて
    「いやだ…嘘だ、こんな…うそだろ…?」と震える声で必死に彼の亡骸を揺さぶり問いかけるも、その亡骸はやがて砂となり、
    震えるその指の間をすり抜けて床に散ってしまうのだった…。


    その後、ベルゼブブの姿を見た者はいない。
    それまで活発だった彼の突然の蒸発に憶測や噂は方々で飛び交ったが、どの話にも必ずとある神父の存在があった。
    その神父の散った礼拝堂は隕石でも落ちたかのように崩壊しており、その中央には手作りの墓標が建てられていた。
    その墓標には悪魔を愛した彼の名があり、その裏には小さく「せめて、来世では幸福であれ。」と刻まれていたのだとか。











    【メリーバッドエンド】



    「良かろう…そうまで言うのなら、俺と共に来い。」
    悪魔はそれまで大事に握りしめていたなけなしの良心も、倫理も、総てかなぐり棄ててそう言い放った。
    もういい。どうせもう戻らない、戻れない。
    ならばいっそ、共に堕ちてしまおう。
    悪魔はそう考えたのだ。
    眼前の彼は待ち望んだその誘いに嬉嬉として頷き、悪魔の手を握り、その手の甲へ親愛の口付けを落とす。
    「貴方とならば、何処までも。」
    その言葉に今度は悪魔が頷き、2人は夜の深い闇の中へと姿を消したのだった…。


    …一見丸く収まったように見えるその結末だが、悪魔にとっては二度と醒めることのない悪夢の始まりでしかなかった。

    爽やかな風のそよぐ花畑でこちらを振り向く、あどけない笑顔の神父。
    それを数歩離れた所から見守る自分…ただ、それだけで良かった。
    それ以上は、交わることを許されない立場の自分では望む事すらおこがましいとさえ思っていたのに。

    結果として彼を自分の伴侶とせしめた訳だが、その彼には最早自分の愛してやまなかった「純新無垢な神父」の面影はなく、そこに居るのは闇に堕ち、全身に蔓植物のような柄の黒く禍々しい紋様を這わせ、瞳にすら闇をたたえてしまった…そんな、ただの闇の傀儡。
    そこまで堕ちてしまった彼を救う手立てなど最早ある筈もなく…しかし惚れた弱みと言うべきか、一思いに殺して終わらせてやれる程の覚悟も持てず…
    そうして最悪の妥協をしてしまった結果がこれである。

    「こんな筈では…なかったのに、な…」
    満足そうに目を閉じて自分にもたれかかる半裸の彼の頭を片手間に撫でながら、一匹の悪魔は遣る瀬もなくそう呟くのだった…。










    【トゥルーエンド】



    「…ローズスピア。」
    抑揚のない、冷たく微かな声が悪魔の口から発せられた瞬間、赤黒い無数の槍のような尖った柱がベルゼブブの眼前にいる彼の腹に突き刺さる。
    「…どう…し、て……?」
    今度は彼が問う番となった。
    何故、どうしてこの愛しき悪魔は自分に牙を剥いたのか…彼には分からなかったのだ
    「神父さん、俺は貴方を心から愛していた。貴方を護ることさえできるなら他に何も望まないとさえ思っていた…だが、貴方は、壊れてしまった…」
    腹からの出血と激痛に立っていられなくなり膝から崩れ落ちた“元”神父と入れ替わるように、悪魔はゆらりと屍人のように立ち上がりながら語り、止まぬ涙をそのままに、先程の瞬間に自身の内で下した苦渋の決断を口にする。
    「堕落は『救われぬ死』だ。そんな不幸に囚われて生きる貴方を俺は見たくない。だから、ここで貴方を終わらせる!」
    最後の力を振り絞るように言い放つと、悪魔は眼前の彼の腹に突き刺さった棘を一本引き抜くと、
    それを今度は彼の心臓へと突き立てる。
    「……が………っ!!」
    悪魔が愛した彼の口から声にならない音が洩れる。
    そしてその貫かれた胸と腹からは赤黒い血液がとめどなく溢れ、礼拝堂の赤い絨毯を黒く塗り潰していく…
    「神父さん…俺達は、きっと、出逢うべきではなかったんだ。少なくとも、この世界では…。」
    ベルゼブブは呟くようにそう告げながら愛しき彼の胸に突き立てた棘をゆっくりと引き抜く。
    「すまない…。俺が悪魔でなかったなら…棲む世界の違う、それも、聖職者である貴方と出逢ってさえいなければ、こんな悲劇は起きなかった筈なのに…」
    愛しき彼の血で濡れた大きな棘を片手に泣きじゃくる悪魔に、あと数刻で力尽きるであろう彼が漸く言葉を吐く。

    「泣かないでください…。私は、貴方に愛されて…とても、幸福、です…」
    その声にハッとしてベルゼブブが涙を拭う腕を外し彼を見ると、そこには愛しき彼の、愛しき微笑みがあった。
    「最期に…貴方の、名前…教えてくれませんか……?」
    息も絶え絶えに問う彼に、悪魔は答える。
    「ベルゼブブ…これが、俺の名前だ。」
    彼の傍らに跪いて力の入らない彼の手を握り、泣きながら名乗る悪魔に元神父は
    「ベルゼブブ…愛しています…道を外れてしまった私を許して……きっと…また、何処か…で…」
    次第に小さくなっていく掠れた声でそう告げながら、静かに息を引き取った。

    「許してくれだなんて…そんなの、俺の台詞だ…お人好しめ………」
    涙が止まらず嗚咽混じりにそう呟くと、悪魔はその手に握る棘を今度は自身の心臓目掛けて渾身の力で突き立てた。
    心臓にダイレクトに来る激痛に途切れそうになる意識を辛うじて繋ぎ止め、棘を握る手に力を込めて更に深く沈ませていく。
    そして、いよいよ意識が遠のいてきた悪魔は重心を保つ力すら失い、今はもう目を開けることも声を発することもない愛しき彼の亡骸に覆い被さるように倒れ込むと、最後の力を振り絞って囁く。
    「神父さん……来世で は…必ず……貴方を……幸せ…に…………」


    静まり返った礼拝堂で、禁忌を犯した人間と、そんな彼を愛した悪魔の物語はそっと幕を閉じたのだった…









    【ハッピーエンド】



    「そこまでだ。」
    礼拝堂にたちこめた不気味な薄ら寒さと冷えた錆の匂いを切り裂くような凛とした聞き覚えのある声が響く。
    その声に元神父が振り返ると、そこには悪魔の主君の知人である大天使、アークが立っていた。
    そしてその後ろには主君の恋人である小天使、リトルまでもが。

    これからが良いところだったものを、突然の来訪者に邪魔をされた元神父だが、特に気を悪くすることもなく笑顔で迎えると
    「これはアーク様にリトルさん。こんな時間にいかがなさいましたか?」
    と、白々しいまでの問いを投げる。
    それに答えたのはアークだった。
    「神父…いや、大罪人カラマツ…お前を『天使殺し』の罪で裁きに来た。」
    それに元神父が笑顔を引き攣らせるのとほぼ同時にリトルがアークの背後から飛び出す。
    「神父さん!貴方はとても優しくて純粋な人だったのに…なのに、どうしてこんな事を…!?」
    泣きながら問うリトルに先程の自分を思い出した気がして、悪魔は元神父が答えるより少し早く口を開いた。
    「俺の…俺の、せいなんだ…」
    それだけでは納得がいかないのだろう、リトルが続けて問う。
    「どうして…?ベルゼブブ、一体何をしたんだ…!」
    「俺が…俺が彼を唆してしまったんだ。そのせいで彼は俺と対等になろうとこんな大罪を犯してしまったんだ…」
    悪魔がリトルのその悲痛さを感じさせる声と泣き顔に罪悪感を駆り立てられながら返したその返答に、元神父の彼は慌てて否定した。
    「唆した…!?違います!彼は何もしていない!!私は私の意思でこうして…!!」
    その二人の様子から何となく察したアークは片手で二人を「まぁまぁ落ち着け」と制すると、
    いつの間に来ていたのか、ベルゼブブの斜め後ろに立っている闇の王、ダークに「ダーク、『読んで』くれ」と短く命じるとダークは無言で頷き、突然の主君の登場に驚くあまり固まってしまっているベルゼブブの腕を掴み、数秒ほどの間目を閉じていたかと思うとすぐにその手を離しアークに告げた。
    「そこの神父がコイツに惚れて一人で暴走したようだ。」
    その冷たい報告に悪魔は噛み付くように反論した。
    「違う!!違うんですマスター!!俺が神父さんに惚れて、諦められなくて何度も接触してしまったのが原因なんです!!彼は何も…」
    そこでアークの冷たい声色が遮るように飛んできた。
    「仮にお前が唆したのだとしても、彼がした事は変わらない。罪は罪だ。それも大罪…それを犯してしまったのはそこに居る彼に他ならない。事情を思うと可哀想だが、裁かない訳にはいかないんだ…。」
    それは間違いなく正論だった。反論の余地もないほどに。
    だが、こうまでなってしまっても、それでもまだ彼を救いたいと思っている悪魔は引き下がらなかった。
    「俺が命じた事だとしたらどうだ!?俺が洗脳した…そうだ、魅了という意味では俺が命じたも同然だと言えるだろう!?」

    明らかにこじつけでしかないその発言にダークは憐れみの目で悪魔を見つめ、その様子を見たリトルはそっと口を開いた。
    「俺も、アークから教えてもらっただけで実証はないんだが…」
    そしてリトルの口から語られたのは恐ろしい話だった。

    元来、天使の血は不死の妙薬とされ、命の循環という自然界の最大の掟に反するため、その血を授けることも受け取ることも禁忌とされていた。
    それよりもタチが悪いのが心臓だ。
    その心臓は生命力の源泉にして再生の核。清き魂の宿る場所。
    それは如何なる摂理をも退ける最強の兵器。
    その器を持たぬ者が天使の心臓を取り込むということは、万物の均衡を崩壊へと導くということ。
    故に天使の心臓を得ることは最大の禁忌とされているのだ…と。

    それまで長椅子の手すりに腰掛けて静かに黙り、リトルに語らせていたアークが最後に一つ続けるように補足を付け足す。
    「まぁここだけの話、それは表向きの理由でな…カラマツ、お前が食ったそれはとても甘かっただろう?それはな、食した者を依存させる作用がある徴(しるし)なのさ。それこそが禁忌とされる本当の理由だ。」
    それを聞いて今度はダークが口を開く番となった。

    「その話なら俺も聞いたことがある。依存するという事は際限なく求めるようになるって事だ。要するに、一度依存のループに堕ちてしまえば、嫌でも悲劇の殺戮を繰り返す事になる。それ故に最大の禁忌タブーなんだ。だから…」

    その先はお前に託すとばかりにそこで言葉を切ったダークは「そうそう、そういうことなんだよ」と頷いていたアークを見やる。
    てっきりそのまま全て説明してくれると思っていたアークは数秒待っても続きが語られないことに「あれ?」とダークに視線を向けると、相手から続きを促すような視線を向けられていることに漸く気付き、慌てて立ち上がると、仕切り直すように咳払いを一つし…
    そして改めて元神父を真っ直ぐに見据えて宣告した。

    「その繰り返し《ループ》を断つ為に…いや、始まる前に、お前が大罪人となり堕落したばかりの今、ここで制裁を下す。」

    それまでどこか他人事のように清聴していた元神父は急に狼狽を顔に浮かべ、ベルゼブブの方へと数歩後ずさりつつ問うた。
    「私を、殺すのですか…!?やっと…やっと、彼と同じ闇の者へとなり得たのに…そんな……お願いです、大天使アーク様!どうか、どうかご慈悲を…!!」
    アークの足元に跪き、その脚に縋り付き懇願する元神父。彼の言う『ご慈悲』とは、つまり『見逃す』という事だが、天使界の最高責任者たるアークがそれを許す筈もなく…
    「今しがた説明した通り、お前のした事は大罪…決して看過できるものではない。」
    と切り捨てるように言い放つと、元神父の頭を掴み、その手に魔力を込めていく。
    それを見て「神父さんが殺されてしまう!」と直感したベルゼブブは「やめてくれぇぇぇ!!」と悲痛な絶叫とともに彼らのもとへと駆け出す。
    しかし元神父を大天使から引き剥がそうと伸ばした悪魔の手が彼らに届くことは叶わず、無情にも悪魔の目の前で元神父は消滅してしまう。

    断罪は執行されてしまったのだ。

    虚空を掴む悪魔の手が悲しみと怒りでぶるぶると震えるのを黙って見下ろしたのち、アークは何も言わずに踵を返すと今にも泣きそうになっているリトルの肩をぽんと叩き、「お前もいつかこうする時が来る。ちゃんと覚えておくんだぞ。」と静かに告げる。

    そんなアークに納得がいかなかったのは悪魔だけではなかったようで、リトルは大粒の涙を散らしながら食ってかかるように意見する。
    「どうして…どうしてそんなに平然とできるんだ!!いつものアークならもっと、悲しんだりするじゃないか!!それに…」
    そこまで捲し立てたところでリトルはしゃくり上げるように息継ぎをすると、流れる涙を拭いもせず
    「もっと、他に…」と呟くように零すと、それっきり黙って俯いてしまう。
    「他に、か…。でもなぁ、殺さなかっただけでもめちゃくちゃ『ご慈悲』をかけてやった方だと思うんだけどな?」
    リトルの頭上から降ってきたアークのおどけたような声にリトルが「えっ?」と顔を上げると、いつもの優しい表情をしたアークがいた。

    同じくその言葉に反応して驚いたように顔を上げた悪魔が「それってどういう事─」と言いかけた時だった。
    背後にある祭壇に寄りかかるようにして立っていた筈のダークが急に
    「おぉっと悪いな手が滑ったぁぁーーー!!!」と叫び、いつの間にそうしていたのか、左手に溜めていた魔力の塊を解放し、ダークの左手から解放されたその魔力の塊はベルゼブブの背後…それも至近距離にワームホール状の渦を作り上げ、振り返った悪魔を悲鳴ごと呑み込んでしまった。

    アークのなにやら意味深な発言の真意を問いたいやらダークの謎の凶行とベルゼブブの安否について問い質したいやらで2人を交互に見ては頭に幾つもの疑問符を浮かべているリトルを見て、まるで親の仕掛けた悪戯に理解が追いつかずに混乱している幼子のようだと感じて思わず吹き出すダーク。
    そんなダークに「えっ…えっ?ダーク?何で笑って…それよりベルゼブブは…!?」と混乱しながらもどうにか目先の疑問を投げ掛けたリトルの頭を、アークは笑いながらわしゃわしゃと撫でると
    「まぁまぁ、タネ明かしは後でな。それよりそろそろ『良い子』は帰る時間だぜー?」
    と快活な調子で言う。
    ダークもそれに乗るように「そうだな、それじゃあ『悪い爺さん』は置いてくとするか。」と軽く言うと、いまだに2人の意図が理解出来ずに混乱しているリトルの手を引き礼拝堂を後にする。

    そしてそこに一人居残ったアークは
    「それじゃ、『悪い爺さん』は最後の大仕事をしちゃおうかなぁ!」
    と気合いを込めるように息を大きく吸い込んだ。






    「ダーク!なぁ、ダーク!待ってくれ!どういう事なのか説明してくれ…!!」
    一方、ダークに連れられて礼拝堂を後にしたリトルはダークに手を引かれながら必死に説明を求めていた。
    アークの手により消滅した元神父の彼はどうなったのか…「死んだ」のではないのならば、一体何処へ消えてしまったのか。
    そしてダークの魔法により消えてしまったベルゼブブの事も気がかりだった。
    彼もまた一体何処へ消えてしまったのか…まさか、いくら闇の王たるダークであっても自分の使い魔の中でも特に気に入っていた彼をあのような…ドリフか何かのようなコミカル且つ軽い調子で殺めてしまうとは考えにくい。
    だとしたら彼は生きている可能性が高い訳だが、もしもリトルの想像通りに生きているのだとしたらあの魔法は一体彼をどうするものだったのか…それらを知りたくてリトルはダークに「説明」を求めているのだ。

    そしてダークもそんなリトルの心情は正しく理解できていた。
    ただ、諸事情により一刻も早くリトルと共に礼拝堂から遠ざかる必要があった為に説明そっちのけで此処まで説明もなくリトルを引っ張ってきてしまった…が、此処は既に峠の教会からはだいぶ離れた麓の街。
    ダークは一度振り返り教会が遥か遠くに見えるのを確認してから「まぁこれだけ離れてれば問題ないな」と呟くと、漸く説明を始めた。

    「まず元神父は…アイツは生きてる。アイツはアークの魔法で現在の時間軸とは違う時間軸に飛ばされただけだ。」
    それを聞いてリトルが安堵と共に歓喜に表情を明るく輝かせるも、すぐに別の疑問が追加で浮かんでくる。
    「でも何で時間軸を…?」
    その質問を待っていたと言わんばかりに得意げな様子でダークは更なる説明を続ける
    「いいか?お前も知っての通り、あの神父は無駄に純粋(ピュア)で驚くほど優しいヤツだ。そんなアイツが今回、道を誤ってしまったのは何の試みも無いまま「聖職者と悪魔は交われない」と結論づけてしまった事が原因だ。」
    おそろしく天然で、深い思考が苦手なリトルの為にまるで小学校教師のようにゆっくりと説明していくダーク。
    その彼の説明を素直な子供のように真面目に聞いていたリトルだが、そこまで聞いたところで驚いたように「えっ!?それって…!?」と身を乗り出すようにしてダークに更なる説明を促す。
    その反応を受けてダークが
    「そうさ、可能性はあるんだ。先人達が試した事が無いってだけでな。」
    と、意味ありげに笑んで見せた。

    しかしそこで元神父の説明は一旦区切られ、次はダークが自分の使い魔に何をしたのかという話を始めた。
    「それとベルゼブブだが、アイツも生きてる。俺が時空間魔法である時間軸に吹っ飛ばしただけで、存在が消滅したとかそんなつまらない事は無いから安心していい。」
    この吉報にもリトルは表情を輝かせた。
    「良かった…!でも、一体何故そんな事をしたんだ?しかもアークと同じ「時間軸」に関わる魔法なんて…」
    天然と鈍感は紙一重…ダークは毎回このリトルの鈍さを前にしてそう思うのだった。
    だがそこは流石、鈍感な天使を恋人に持つだけある訳で。
    「アークは俺と同じ結論からあの神父をとある時間軸へと飛ばした。それを理解した俺は「それだけではあの神父の背中を押すには些か押しが弱い」と思ってベルゼブブもとある時間軸へと飛ばしたんだ。…まぁ、あとはあの二人がそこで逢えたら「未来」もどうにかなるだろうさ。」
    何処の大天使の真似か、ダークがそう言って流暢にウインクしてみせるとリトルも漸く安堵したようで
    「そうか…それならきっと、あの二人も大丈夫だな!」
    と安心しきったような柔らかな笑顔になったのだった。


    ──…一方アークはと言えば、人が捌けて静まり返った礼拝堂で目の前に横たわる血塗れの天使…元神父に心臓を奪われた被害者をじっと何かを待つように無言で見つめていた。
    そして、絶命した筈のその被害者の右手がぴくりと微かに跳ねたかと思うと、突然
    「うわぁぁぁぁぁ!!?!?」と、その天使が跳ね起きた。
    胸元を中心にその衣服を自身の血で染めた天使は、明らかに絶命していた……そう、数刻前までは。
    だがその彼は息を吹き返した。それも心臓を含めた五臓六腑全て持ち、完全に元気な状態で。

    死の瞬間の記憶を覚えていた天使は自分が生きて目を覚ました事に驚いて全身をあちこち触って傷を確かめたのち、傷跡ひとつ無い事が不可思議で「えっ…?あれっ??えぇぇ!?」と混乱していると、すぐ隣から「Good morning」と優しい声が聞こえてきた。
    その聞き覚えのある声に天使が顔を上げると、そこには自分を見下ろし優しい目線を送っている大天使、アークがいた。
    同じ天使といえども普通の天使では滅多に会うことはできない天使界の最高責任者…そんな大天使が、ごく普通のしがない天使の1人である自分の目の前に現れた事で、今度はそれに驚いた天使が
    「だだだだだだ、大天使アーク様…!?何故ここに!!?」
    と畏敬を全身で表現するようにアークの目の前…3メートルほど距離を置くようにものすごい勢いで飛び退き正座の姿勢で慌てて問う。
    その激しいリアクションに笑いながら「よしよし、元気なようで安心だ。」と頷くと、アークは「実はな…」と語り始めた。

    アークの説明はこうだった。

    教会の近くを通りかかった時、不穏な気配に気付いて来てみると、そこには神父に擬態した魔物に胸を貫かれて倒れた天使がいた。
    そこで、その魔物を退治したのち天使の容態を確認してみると、意識は無かったが急所を僅かに外れていたようでまだ息があったので魔法で治療した…と。

    勿論嘘だが、それを聞いた天使が「あれ?でもあれは確かに神父だったような…」と小首を傾げるも、アークの「魔物の中には魔力を完全に隠して巧妙に化ける奴もいるからな…次は気をつけるんだぞー」という呑気な補足により「なるほど!流石は大天使様です!全然気付きませんでした…!」と容易く納得した。
    その盲信に近いほどの信頼にアークは内心「(大天使ってのも便利な肩書きだよなぁ…にしてもコイツ、こんなあっさり騙されるなんて、普段大丈夫なのか…?)」と自身の地位の利便性に感心すると同時に目の前の天使を少々心配に思うのだった…


    そして時は変わり、それより数ヶ月前。
    教会の入口周りの庭、明るい日差しの中で日課である花の世話をしている神父は「あの日」の記憶はないようでその面影もなく、澄みきった瞳で花達に優しい視線を送りつつ鼻歌混じりに水を与えていた。

    その姿を見守るように木陰からそっと見つめていたのは、「あの日」の記憶を持った悪魔ベルゼブブだった。
    そして、その彼が教会の塀の外側から僅かに頭を出して神父の姿を覗き見ている「過去の自分」を見つけると、目にも止まらぬスピードで影伝いにそこまで移動し過去の自分に掴みかかると、驚いて声を上げようとする過去の自分の口を素早く塞ぎ
    「いいか?時間が無いから手短に説明する。ちゃんと聞けよ?」
    と前置きしたのち、口早に話し始めた。
    「俺は未来のお前だ。訳あってマスターにこの日に飛ばしてもらったんだが…事実だけ言うと神父さんはお前が隠れて見守ってるのも、匿名の貢ぎ物の差出人がお前なのも全部知ってたし喜んでた。可能性はある!詳しくは語れないが、とにかく彼の命運は今のお前にかかってるんだ!属性とか気にしてないでアタックしてこい!以上だ!」

    殆ど捲し立てるようにそう言うと「未来の悪魔」は何処かへと消えてしまった。
    そしてその場に残された悪魔は「えぇ…?バレてた…?そんな、まさか…」と半信半疑に呟きながら改めて神父の方を覗き見ると、過去に悪魔が匿名で送ったマリーゴールドの花に愛おしげに口付けをする彼がそこにいた。

    その姿に先程の「未来の自分」に言われた言葉が真実味を帯び、最後の
    「彼の命運は今のお前にかかってるんだ!」
    という言葉が耳の奥に蘇ったように感じた悪魔は、逸る気持ちとそれに付き纏う不安とがせめぎ合って冷や汗すら額に滲む程に焦燥するも、なけなしの勇気を振り絞り意を決して立ち上がると、愛しい彼を驚かせないようゆっくりと教会の門へと歩みながら、緊張に震える声で
    「あのっ…神父、さん…!」と声をかける。
    その声に誰だろうかと振り返った神父は、待ち焦がれた悪魔の来訪を心から喜び涙を滲ませながら
    「お待ち、しておりました…!」
    と両手を広げて満面の笑みで悪魔を歓迎した。






    かの事件の翌日、リトルと共に朝帰りしたダークが
    「ところでさっきブブから聞いたんだが、神父はダブってなかったそうだぞ?アンタが「飛ばした」方の神父はどこ行ったんだ?」
    と訊ねると、アークはさらりと
    「過去に飛ばして数秒で罪を犯した方だけがそのままそこで消えるようにしたんだ。」
    と答え、予想外のタネ明かしに理解が追いつかず固まってしまっているダークとリトルに補足として話し始めた。
    「そうすればアイツ(神父)も下手な真似は出来ないからな。…それに、」
    そこでアークはふっと目を細めると、その先の言葉はそれまでの快活な声色から優しい父のような声色へと変わる。
    「アイツ、俺が魔力込めてる時に、やっと罪を理解したみたいだったからさ…。生真面目なアイツのことだから、その日の記憶が残ったままだとずっと後悔で不幸になっちゃうだろ?心改めた奴にトドメ刺すなんてしたくなくてなぁ。」
    そう呟くように語ると、そのあとに
    「それに、ダークなら未来が変わるように上手くやってくれるって信じてたしな!!」
    と急に元の快活な調子で宣い
    「いやぁ、しかしほんとに上手くやってくれるとは…さっすがツンデレ貴公子!今からでも天使になれちゃうんじゃないかぁ?ン〜?」
    とダークをからかうように肘でつつくと、上手く転がされた悔しさと自分の中の情を見抜かれていたという気恥しさからかダークは
    「…こんっっっの、クソジジイ!!今日こそ泣かす!!」
    と憤慨し、そうして始まったアークとダークの鬼ごっこをリトルは笑顔で見送ったのだった…。

    そして同刻、件の教会では今日も花を愛でつつ悪魔に花の蘊蓄(うんちく)を語る神父と、その傍らに寄り添うようにして熱心に耳を傾け、遊びに来た子供達に飴をあげている人間…に、扮した幸福な悪魔がいた…。
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