僕だけのヒーロー「ふふ…」
いつもより、少し広々とした自室のベッドで寝転びながらスマホを見ているグレイは、その動画を見て思わず顔がほころんでしまった。
そこにはオレンジ頭の奇抜なヒーローが、マジックをしながらサブスタンスを華麗に回収する姿が映し出されている。
そう、彼の同室ペアでありはじめての友だち、そしてつい最近恋びとという関係にも発展したビリーだった。
いつもなら2人でパトロール、というのが定番だが今日はグレイがオフ、ビリーがパトロールという変則的なスケジュールとなっていた。
「やぁだ〜!グレイと一緒じゃなきゃオイラの本領が発揮できないヨ〜!!」
「アァ!?そんな舐めた口聞いてねェでさっさと行くぞクソガキ!」
「うわぁ〜ん!!」
そんな会話をしていたのに、やはり彼もヒーローだ。いざとなれば市民のために体を張って戦う姿は、グレイの目からみてもとても輝いて見えた。
「かっこいい…」
思わず呟いてしまった後にハッとし、キョロキョロするも当然ビリーはパトロールに出ていてその呟きは部屋の壁に吸収されるだけだった。
ホッと胸を下ろし、もう一度その動画を見返す。あ、ここの癖がまだ直ってないかも…?とヒーローとしての気付きはいくつかあるものの、何度見てもかっこいいという感情が勝ってしまう。
(会いたい、なぁ…)
きゅう、と胸が切なくなるのに気付かないふりをしながら、そっと自分のスマホに映し出される姿に口付けをする。
その瞬間、グレイの視界は一気に暗くなった。
「ひゃあ!?」
「んふふ〜♡」
「え…び、ビリーくん……?」
「流石に2回目は気付いちゃうよネ〜」
何時ぞの目隠しを再現したビリーは、すぐにその手をパッと離した。
グレイの視界には、ニコニコ…いや、ニヤニヤしているビリーの姿が入ってきた。
「う、うん……そうじゃなくて、その…いつからいたの…?」
「グレイが俺っちの動画を見てニコニコしてたところ♡」
「あう、最初から…」
顔を真っ赤にして狼狽えるグレイとは対照的に、ビリーは依然としてニヤついた顔でグレイに顔を近付ける。
驚きと恥ずかしさで目をぎゅっと瞑るグレイに、ビリーはお構い無しで小さなキスを落とす。
「オイラ、直接してくれる方が嬉しいナ♡」
「うぅ…ぜ、善処します…」