朝チュン朝チュン
部屋に眩しい日差しが差し込む。
パシリと目を開けたノートンは、日光を遮っていた分厚いカーテンを開けた人物を忌々しく睨みつける。
「おはよう、起こしたかな?」
彼は涼しい顔で、日光に劣らない眩しい笑顔をノートンに向けた。
「どうも…」
重い体を起こそうとすると、昨晩の余韻が全身に流れる。
無視できない腰の痛みが、目の前の男に散々抱かれたという事実を、ノートンにまざまざと自覚させた。
「体の具合はどうだい?痛みがあるのなら、今日のゲームは休んだ方が…」
「冗談じゃない。…休んだっていうので、荘園主から報酬を減らされでもしたら…困るんで」
そうかい、とジョゼフがノートンの隣に腰掛け、彼の細い指がするりとノートンの頬を撫でる。
優しい指遣いのせいで、昨晩のことを思い出してしまいそうだ。
「私としては、君に無理をして欲しくないのだけれど」
愛おしそうに、ジョゼフが目尻を下げる。
じゃあ加減くらいしてくれたって、と、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「今日、ゲームがあるのは…あなただって、そうでしょう?…こんなところで時間を潰して…っ」
頬を撫でていたジョゼの手が、いつの間にかノートンの指に、するりと絡まった。
「君とこうしていたかったんだ。」
ジョゼフの形の良い唇が、穏やかな声で愛を紡ぐ。
彼の美しさに思わず見惚れ、ノートンは体から力が抜けていくのを感じた。
指と指からジョゼフの体温が伝わる。
トクトクと心地よい心音が鳴り、ノートンはゆっくり目を閉じる。
自然と重なった唇は、ノートンから息を奪うのに十分だった。
「とは言え、今日は君よりも早く出なければいけない。」
ジョゼフの声で、ハッと我に帰る。
「可愛い恋人を置いて行くのは名残惜しいが…」
無防備な顔を晒した気恥ずかしさに、ノートンはパッとジョゼから身を花す。
「は、早く…行って……いいから」
「残念だ。」
残念と、口では言っても、キスを止めようとしないジョゼフに、ノートンは体をよじって抵抗した。そのままボフっと、ベットに倒れ、キスの時間は終わりだとジョゼフを睨む。
ジョゼフは苦笑いをして身を引き、ノートンの頭を軽く撫でた。
「行ってくるよ。」
静かな声が降りてきて…不意に、ノートンは写真家の服をクイ、と引っ張った。
名残惜しいという気持ちが顔に出ないように、ベッドに頭を埋めたが、写真家の細いけれど力強い指に顎を掴まれて、渋々顔を上げた。
「今夜も、私の部屋に来なさい。いいね?」
微笑みながら告げられた言葉に、ノートンが反論する隙もなくキスが降り注ぐ。
明日も寝不足になりそうだ、と…
外れない予感に眩暈が起きそうになるが、少しなら…少しなら良いかと自分に言い聞かせることにした。