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    もなか

    @monacan525

    fgoのお話を書きます。
    最推しはマリーちゃんとボイジャーくん。
    ネモ、アーラシュさん、新茶、サンソン、アスクレピオス、BB、金時さんなどなど多キャラ推し。

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    もなか

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    書かせていただいたセタンタとエミヤ(アーチャー)です!
    クー・フーリン族じゃなければ折れてくれるだろうけど、きっと折れずに突っぱねるんだろうなあって思って書きました。
    ありがとうございました!

    #fgo
    #セタンタ
    setanta
    #エミヤ
    emir

    まるで槍のような(セタンタとエミヤ) 戦闘訓練帰りに寄った食堂で赤が目に留まる。正式に残ると決まったその日に顔を合わせ、それからしばらく複雑そうな視線を向けられていたことには気付いていた。あえて刺激しなかったのは新参者が騒ぎを起こすべきではないと思ったから。ちらっとマスターに心当たりを聞けば向こうと似たような状況であることはすぐに理解できたし。
     ただアイツが食堂に四六時中いるものだから、避ける避けない以前の問題なんだ。いくらサーヴァントに飲食が必要ないと言っても、ここにそれを許すような奴らはなかった。誰かが必ず俺を連れてここに来る。そうすれば、必然的にエミヤと関わることだってあった。
    「注文が決まったら声をかけてくれ」
    「……おう」
     メニューを見て考えている俺に赤い弓兵は一言言い置いて厨房の奥へ戻っていく。連れ立って来た他の奴らは早々に注文を済ませて席を探しに行ったようだ。これだけ広ければすぐに見つかるだろうに。そう考えて、気を遣われているのだと思い当たった。だいたい強引で変なところで気を遣うのは、ここのマスターの気質に似ているのかもな。
     次々に作られている料理の香りが鼻をくすぐる。腹の虫が鳴いて、難儀なもんだなと肩を竦めた。疑似的な空腹感でも一度満たすことを憶えてしまえば欲は出るもののようだ。なんでもいいと思っていた最初の数日からこっち、食べ比べた料理のせいで好みなんてものの存在にまで気付いてしまったのだから、おかしなことになったと思う。
    「A定食一つ」
    「了解した。大盛りでいいか?」
    「頼む」
     必要最低限の言葉を返し、席を探すため振り返る。こちらに向けて手を振る一人を見つけて目を瞬いた。なるほど、俺の分まで取ってくれてんのね。手を挙げて応えるとそいつは会話に戻っていった。まあ、向こうに行くのは料理を受け取ってからでいいか。何度も往復するのも面倒だ。
    「今日はシミュレーターで訓練か?」
    「え? あ、そ、そうだけど」
    「疲れる前に休暇を申請しておくことだな。そのうち周回にも駆り出されるだろう」
    声をかけてきたことが意外でエミヤをまじまじと眺めてしまう。ちらりとも寄越さない視線にむっとするかと思ったけど、意外に気にしていない自分がいた。驚きや物珍しさが勝っていただけかもしれない。でもこんなタイミングじゃなきゃコイツと話をすることもないかと、当たり障りのない話を続けた。
    「お前は? ずっとここにいるみたいだけど」
    「当番が続いているだけだ。明日はレイシフトに呼ばれている」
     ふうん、と返す。こちらから質問を投げかけたのだから返事が来て当然なんだけど、会話が成立すると思っていなかった自分もいた。俺が考えてるだけで実はなんとも思ってないとか。もしかしたら俺じゃない奴に対しての視線を勘違いしていただけなのかもしれないとか。ぽこぽこ浮かんだ可能性を胸に、もう少しだけ言葉を投げてみた。
    「どこに行くんだ?」
    「知らされてはいないが、おそらくセイバークラスの素材集めだろうな」
    「……俺の分?」
    「さあな」
     やっぱり視線は寄越さないくせに会話は続ける。好かれてるわけじゃなさそうだけど、無視するでもないなんて律儀な性格してんなあ。別に無視されたいわけじゃないけど。
     窓口から厨房の中を覗き込むと、エミヤも料理していることが分かった。俺の注文したものっぽいな。手際よく切られていく食材を眺めていると、小皿に乗ったサンドイッチが出てきた。
    「それでも食べて待っていろ」
    「悪い、急かしてるつもりは……」
    「分かっている」
     その割に小皿は下げる気配がない。少し考えて、サンドイッチを口に放り込んだ。貰えるもんは貰っといて損はないだろ。ここの料理以外の食べ物を食べたことはないけど、十分旨いと感じているんだし。
    「旨いよ」
    「……そうか」
     リズムよく動いていた手が一瞬止まったのは俺でなくとも気付けただろう。いや、流石に礼とか感想くらいは言うって。そこまで人でなしに見えてたのか。もしそうならどこらへんを見てそう思ったのかちょっと聞かせてほしい。
     そこからは会話はなく、調理音だけが流れていた。と言っても会話中にほとんどできていたようで、無言の時間はそれほど長くはなかったように思う。
    「出来たぞ」
    「おう、サンキュー」
     差し出された料理を受け取る瞬間、厨房の中の人数が減っていることに気付く。確かに俺の後ろに並んでるやつはいないけど、いつの間にいなくなったんだ? 首を傾げながら席に向かおうとするとその中に厨房にいた奴を見つけてああ、と思い至った。
    「あんたは飯食ったの?」
    「ああ」
    「何を?」
    「お前と同じものを」
     俺と同じもの、ねえ。まあその返答が嘘かどうかなんて判断する術はないんだけど、十中八九嘘だろう。問いただしたって返ってくる返事が変わることはないと確信に似た何かを持ちながら、弓兵の眉間に寄った皺に言葉を返す。
    「だーいじょうぶ、別に一緒に食おうなんて言わねえよ」
    「……そうか」
    「ただこの後ちょっと手合わせしてもらえねえかなって」
     一瞬和らいだ皺がぎゅっと深さを増した。想像通りとは言え、これほどあからさまに出してくるとは! 反射で顔を逸らした振動がトレー上の水を揺らす。危ない危ない。溢してもそれほど大事にはならないだろうけど、手間には違いないんだから。
     気を落ち着けるために短く息をつく。腹の奥でまだ衝撃が燻ぶっていたけど、それは見えないふりをした。
    「断る」
    「言うと思った!」
     ダメだ。負けた。噴き出した俺にようやく視線を向けたエミヤは見たこともないほど顔を歪めていた。おいやめろ、これ以上笑わせないでくれ。笑いすぎて腹が痛い。なんだってこいつはこんなに分かりやすいんだ? 関わったのなんて今日がほぼ初めてなのに!
     何とか笑いを嚙み殺し、姿勢を正す。トレーの上には少し水が零れていた。あー、まだまだだなあ俺。師匠に見つかったらしごきが始まりそうだ。いや、それよりこの目前の弓兵を諫めるのが先なんだけど。腕を組み全身で不愉快だと表現するエミヤに、やっぱりあんたは律儀な奴だよ、と胸中で呟いた。
    「実は俺も明日行くんだよ。だからあんたがどんな戦い方するのか知っときたいんだ」
    「ライブラリで過去の戦闘を見ればいいだろう」
    「それじゃ分からねえこともあるから言ってんだろー」
     完全にへそを曲げてしまった猫みたいだ。そんなことを言うとさらに起こるだろうから言わないけど。今回に限っては俺が悪いのは明白だから、きちんと誠意をもって謝罪する。
    「笑って悪かった。でも俺が来てからお前が複雑そうだったから、これでも遠慮してたんだぜ」
    「……それは」
    「あー、別にいいんだ、もう。俺に対してでも、そうじゃなくても、今話せてるしさ」
     へらっと笑うとエミヤの視線が下へ行く。もしかして自覚してなかったとか? ならまあ、しょうがないか。コイツの感情まで俺が責任持つ必要はないしな。
     厨房に人が戻ってきて、エミヤに交代を告げる。思わぬ援護射撃に口角が上がった。
    「んで、仕事は終わったみたいだけど?」
     何かを言おうとして開いた口が、何も発することなく閉じた。ダメ押しとばかりに笑みを深めれば折れると思ったけど、後ろから俺を呼ぶ声に空を仰ぐ。援護射撃はこっちだけじゃなかったと。くそ。
    「呼ばれてるぞ」
    「お前が頷いてくれたらすぐ行けるんだけどなあ」
    「断ると言ったはずだが?」
    「俺は納得してない」
     そうは言うけどここらが引き際かな。同じカルデアにいる限りいつかは手の内も知ることになるだろうし、焦る必要もない。……いや、心底残念ではあるけど。共闘こそすれ、戦うことはないだろうから。
     トレーを片手で持ち、乱暴に頭を掻く。頭では分かってても納得できてないこの感じ。ガキかよって思うけどこれが俺だから仕方ない。俺より年上のクー・フーリンたちだってこうなるはず。たぶん。しらねーけど。
    「どうしてそこまで俺に固執するのか理解に苦しむな」
    「正直俺も」
     こいつ何言ってるんだ、って顔。俺があんたの立場でもそうなると思う。悪いな、でも取り繕ったってボロがでるから。仲間には誠実でいるべき、だろ?
    「今日は引くわ」
    「ずっとそうしてくれれば文句はないんだがね」
    「それは無理。他の俺のことも知ってるなら分かるだろ?」
     悪いけどそこは諦めて欲しい。本当を言うと悪いとも思えないんだ。これがクー・フーリンの性質なんだろう。よく言えば初志貫徹。悪く言えば諦めが悪い。でもまあそれって英雄であるための基礎教養みたいなもんだし。あんたは嫌がるだろうけど、召喚された奴は多かれ少なかれ持ってるはずだ。もちろんあんたも例外じゃない。
     今度こそ背を向けて席に向かう。好き勝手非難する声はある程度受け止めた。先に食べててよかったんだけどな。せっかく作ってくれた料理がこれ以上冷ましてしまうことは避けたかったから、無念と共にその言葉も飲み込んだ。
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    Replies from the creator

    もなか

    DONE書かせていただいたアルテミスです!
    一人(?)だとこの長さがいっぱいいっぱいでした……!
    月って地球の唯一の衛星なんですよね。それってちょっと、エモいなと思って空を見上げています。
    ありがとうございました!
    貴方の唯一になりたくて(アルテミス(とオリオン)) 目を開けて、閉じる。瞼の裏に広がる宇宙は、今過ごしているこの場所よりよく見知った場所だった。私を象徴する月が静かにこちらを見ている気がして首を傾げる。だってこれは、私が私を見ているようなものだ。サーヴァントだからあり得るのかしら。それにしたって神たる私を複数用意するなんて、不敬だと思うのだけれど。
     辺りに視線を走らせれば他の星々も確認できたわ。太陽も、金星に木星も、目を凝らせば海王星だって見えた。だけど私のように人間を模した体は見当たらない。まあ、もともとこの体だって必要に駆られたから作り出したものだものね。誰もいなければ不必要だわ。──不必要、なのに。
     胸の奥にもやもやしたものが広がっていく。ここには何か入れていたかしら。姿を人間に似せただけで中身はよく理解していなかったから、何か不具合でも起こっているのかしら。もしそうなら面倒なものを作ってしまったものね。いっそ壊して、もっと機能性を追求した方がいいのかも。エラーやバグの類であると片付けてしまえば、頭は納得しても、もやもやはその強度を高めたようだった。
    1916

    もなか

    DONE書かせていただいたセタンタとエミヤ(アーチャー)です!
    クー・フーリン族じゃなければ折れてくれるだろうけど、きっと折れずに突っぱねるんだろうなあって思って書きました。
    ありがとうございました!
    まるで槍のような(セタンタとエミヤ) 戦闘訓練帰りに寄った食堂で赤が目に留まる。正式に残ると決まったその日に顔を合わせ、それからしばらく複雑そうな視線を向けられていたことには気付いていた。あえて刺激しなかったのは新参者が騒ぎを起こすべきではないと思ったから。ちらっとマスターに心当たりを聞けば向こうと似たような状況であることはすぐに理解できたし。
     ただアイツが食堂に四六時中いるものだから、避ける避けない以前の問題なんだ。いくらサーヴァントに飲食が必要ないと言っても、ここにそれを許すような奴らはなかった。誰かが必ず俺を連れてここに来る。そうすれば、必然的にエミヤと関わることだってあった。
    「注文が決まったら声をかけてくれ」
    「……おう」
     メニューを見て考えている俺に赤い弓兵は一言言い置いて厨房の奥へ戻っていく。連れ立って来た他の奴らは早々に注文を済ませて席を探しに行ったようだ。これだけ広ければすぐに見つかるだろうに。そう考えて、気を遣われているのだと思い当たった。だいたい強引で変なところで気を遣うのは、ここのマスターの気質に似ているのかもな。
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