★ちゅーしないと具合悪くなる話⑤「先生、具合わるい」
「ん」
なめらかに、夏目の口に触れる。ぬる、と夏目の口から何かが離れていくところだけやけに鮮明に見え他はピンとがずれたようにぼけて見えた。
何を見せられているのか、一瞬わからなかった。
あまりにも当然のようにそれが行われて、終わる。
はあ、と苦しそうに息を吐いた夏目の顔色はさっきよりだんだんと良くなっていき安心したところだというのに、もう何回か見たことがあるはずなのに見てはいけないものを見た時のように胸の辺りが重い。今度は俺の具合が悪い気がする。
悪いことをしたわけじゃないのに、とてつもなく悪いことをしたような。取り返しがつかないことをした時のように。息を吐くのも躊躇われる。これは、なんという感情なのだろう。
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