吉原に住む訳あり杉×売られてきた仔銀ちゃ「旦那ァ、この子、買っちゃァくれやせんか?」
「…………あ?」
思わず眉を寄せて男を見た。汚い、痩せた顔が媚びるように上目で使いで笑っていた。見知った女衒を思わずまじまじと見つめてしまう。
「お前、とうとう頭までやられたか。俺ァ楼主じゃねえって事まで忘れちまったたァな」
「いえいえ、違ぇんですって旦那。旦那が女郎屋じゃねぇのは百も承知。その上でコイツを買って欲しいんです」
何を言ってるのだろう、この男は。本当に頭がやられてしまったのか、と本気で心配になっていると、女衒は、実はね、と目を伏せて語り始めた。
「いえ、このガキはね、旦那。ここから遠く、西国の方で買ったんです。しっかしコイツぁ、そっからずっともっとちいせぇ子供の面倒を見てくれてたんですよ、ええ。他の子がもう歩けねぇって泣き出した時にゃぁおんぶなんかもしちまって」
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