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    おはぎ

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    おはぎ

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    夏五ワンドロワンライのお題をお借りしました!
    (全然ワンライじゃないし遅刻もいいところですが、練習ということでね...)

    第91回「エスコート」

    エスコートサービスでバイトする大学生夏と謎のお金持ち五の現パロです。
    書いてたら楽しかったから、続き書こうかなぁ

    #夏五
    GeGo

    二十五万で買われたトモダチ 肌寒い風が頬を撫でる秋口。どんよりとした雲が一層体感温度を下げてくる。襟元を軽く閉じながら肩にかけた鞄を背負いなおすと、簡素な無地のケースに包まれた携帯がメッセージの着信を告げた。
     確認すると、事務所から臨時の仕事依頼だった。この後は特に予定も無かったからいいか、と了承の旨を連絡する。
    「なぁ夏油この後予定ないって言ってたよな? なら飲み行かね?」
    「や、今日はパス。バイト入った」
     後ろからがばりと肩を組んできた友人の腕をそっと外しながら、目線は携帯から外さずに断りを入れた。この時間なら家によって着替える時間もあるな、と頭の中で算段をつける。
    「えー何だよ暇っつってたじゃんか! 急にシフト入れてくるとかブラックじゃね? サボっちゃえよそんなの」
    「まぁ急だけど金払いいいから無理」
    「薄情者! 友人との飲みより金を取るのかお前は!」
    「はは、まぁ先立つものはいるからね。背に腹は代えられないでしょ」
     ぐすぐす、と泣き真似をして見せると、気持ち悪い顔してないでさっさと行けと背中を叩かれた。お前が引き留めたんだろうと悪態をつきながら軽く手を振り友人と別れる。もう一度仕事用の携帯を確認すると、そこにはこれから落ち合う顧客の名前が書かれていた。
    「ふ、スズキイチロウさんね……」
     分かりやす過ぎる偽名を口に出しながら、身支度のため足早に自宅へ向かった。

     ◇

    『指定された場所に着きました。ラウンジにてお待ちしております。』
     事務所から伝え聞いた連絡先に一言メッセージを送り待機する。周囲を見回すと、声を潜めて商談をする人たちやゆったりとカップに口をつけながら本に目を落とす人など、それぞれが皆思い思いの時間を過ごしていた。落ち着いたピアノの生演奏が心地よく空気を和ませ、薄く漂うウッド調の香りがその場の格を一段と引き上げている。さすが五つ星ホテルのラウンジといった風格が漂っていた。
     手元の時計を確認すると、予定の時刻を数分過ぎていたが何も連絡は無い。それらしき人は居ないかとあたりを見回していると、周囲の視線がある一点に吸い寄せられていた。
     その視線の先には、遠目からでも仕立ての良さが分かるスーツに身を包んだプラチナブロンドの男が立っていた。すらりと伸びた長い脚に、サングラスをかけていても綺麗な造りが分かる目鼻立ちを受けて、彼を取り巻く空気が静かに浮足立つ。
    (こんな時間に室内でサングラスか。なかなかに気取った男だな)
     その男はすぐさま歩み寄ったスタッフを片手で制し、誰かを探しているようだった。それを見て、自分の依頼人はどうしたのかと手元の携帯に視線を落とす。さすがに一報くらい入れたほうがいいか、と思案していると、目の前に影が下りた。

    「ねぇ、君がスグルくん?」

     パッと顔を上げると、目の前には件の男が立っていた。
     急に現れた眼前で拝むには強すぎる圧に、ごくりと唾を飲む。少し渇いた唇をやっとの思いで動かし「スズキ様、ですか」と口にした。
    「ふは、めちゃくちゃ偽名じゃん、え、伊地知これお前?」
     男が横に立つ男性を振り返ると、イジチと呼ばれた彼が私の前に来た。
    「はい、私がスズキイチロウという名前で予約しました、伊地知と申します。すみません、偽名を使わせていただきました」
    「いえ、正直他にもそのように対応される方もいらっしゃいますし」
     深々と頭を下げる男に慌てて声をかける。「ありがとうございます。では早速ですが今日は、」と説明し始めた彼を遮って、白髪の男が割って入った。
    「ていうか何そのダッサいスーツ、全然君に合ってないじゃん。よくそんな恰好でいられるね」
    「は?」
     開口一番に吐かれたその暴言に、客じゃなかったらその場で殴り飛ばしていただろう。だが一応金を払ってもらっている立場なので、奥歯をこれでもかと噛みしめながら一度はぐっとこらえた。
    「すみません、なにぶんこれが私の一張羅なもので」
     自分でもいくらか棘のある声音になった自覚はあるが、この程度に収めた自分の理性を褒めてやりたい気分だった。これで相手が何か言うようなら無視して帰ろうとすぐ決めた。初対面の相手にそこまで言われる筋合いは無い。少しくらい手が出るかもしれないが、相手も自分とあまり歳は変わらない様に見えるし、少しぐらい殴っても平気だろう。それに、この仕事は客と会う場所がそれなりなホテルが多いためスーツを着ているだけで、どうせすぐに脱ぐのだからどうでもいいじゃないか。お前もどうせ他の客と同じ癖に。
     だが、そこまで覚悟していた私に投げかけられた声は、何とも呑気なものだった。
    「そ、じゃあまずはそれ何とかしよう。ねぇ、伊藤さんの店、まだ開いてるよね?」
     その男は急に何やら用意をさせ始めた。思っていたのと違う展開に虚を突かれ、間抜けな顔でその場に立ちつくしてしまった。
    「ほーら、何そんなとこでつっ立ってんの。時間ないんだから早く」
    「え、あ、はい」
     理解が追いつく前に急かされたものだから、そのまま素直に男の後をついていく。

     気づけば都内の一角に店を構えるテーラーで、そのままあれよあれよという間に私は着替えさせられていた。
    「どう? 今日は急だったからありもので用意してもらっちゃったけど、さっきのよりは幾分かマシでしょ?」
    「それは、私の着ていたものとは雲泥の差ですが……こんなもの頂けません」
    「いいじゃん客があげたいって言うんだから素直に貢がれときなよ」
    「でも、その……こんなもの頂いてしまっても、自分にはこれに見合うものを貴方に返せない、と思います」
     鏡に映る、分不相応なスーツに身を包んだ自分の不安げな顔が恥ずかしくなって顔を反らした。居心地が悪く身を縮こませるように自分の腕を引き寄せると、いやに肌触りの良い生地が手に触れた。
     すると私の台詞を聞いた目の前の男が、今度は上から下まで舐めるように私を見つめる。まるで何かを見定めようとするみたいに。
    「なーんだ。最初はあんなに勢いよく噛みついてきたくせに、たかが服一つで委縮しちゃうなんて期待外れもいいとこじゃん君。もっと面白い奴かと思ったんだけどなぁ」
     これ見よがしに大きなため息をつきながら、男はわざとらしく頭を抱えた。
     私は基本的に人当たりの良い方だと自負しているし頭の回転も悪くない。しかし、強いてウィークポイントを挙げるならば、人よりほんの少しだけ勝気な所があるのだ。ほんの少しだけ。
    「初対面で話もしないうちから勝手に人に期待して、勝手に失望したなんて言われる筋合いは無い。アンタの周りには指摘してくれる良心的な人が居ないのかもしれないから私が言ってやる。私よりもアンタの方がよっぽど期待外れもいいところだ。そんなにきれいな見目をしておいて性格は最悪じゃないか、どうせ友達の一人もいないんだろう。一生カネにしか興味のない薄っぺらい奴らとだけつるんでいればいい」
     一息で捲し立てると、どうとでもなれ、と引きちぎりそうな勢いでネクタイを外す。こんなもの今すぐ脱ぎ捨ててやる、後の事なんて知ったこっちゃない。金払いは良いバイトだったので少し惜しいが、いつでも辞めてやるこんな仕事。
     怒りに任せてシャツに手をかけたところで、その手を強く掴まれた。
    「何だよお前の本性そっちなの? 最初からそれで来てよ」
    「ッ離せ、お前に評価される謂れはない。私は帰る、!」
     掴まれた腕を振り払おうと腕を強く引くがびくともせず驚いた。これまで腕っぷしの強さで負けたことなど皆無だったのに、目の前の女みたいに綺麗な顔をした男の腕一つ、私は振りほどけなかった。
    「僕、思ったより力あるでしょ?」
    「離せ、よ」
    「まぁまぁ落ち着いて。あんまり吠えると弱く見えるよ? それよりもさ、君、酒は強い?」
    「は? 私は帰ると、」
    「僕、君が言うように、こんな性格だからお友達いないんだよね。だから君みたいに腕っぷしに自信があって、酒も強くて顔の綺麗な友達が必要だったんだけど」
    「知るか、」
    「それとも、今すぐこのシャツ弁償してくれる?」
     男が視線で示す先には、ボタンがちぎれたシャツの襟首があった。
    「あぁそんなの今すぐ払って、」
    「二十五万」
    「……は?」
    「だから、このシャツの値段。二十五万だよ一枚」
     現実的な数字を聞いて、私の頭が少しずつ冷静さを取り戻す。握りしめていた拳の力をそっと緩めた。一か月分のバイト代をゆうに超すその金額に、どう対処するか頭をフル回転させる。
    「少し頭冷えた? ね、勝手に連れて来られた先で無駄に借金するより、カネしか取り柄の無い男を手玉に取って逆にバイト代までせしめたほうがお得だと思わない?」
     ぐっと言葉に詰まったのをイエスと捉えたらしいその男は「はい決まり、じゃあもう一度着替えてくれる? 流石にそれじゃワイルドすぎるから」と新しい服を取って寄越した。着替えるために扉を閉められそうになったところで慌てて言葉を返す。
    「バイトって、何するんだ? 何も聞いてないぞ私は」
    「あれ言ってなかったっけ。まぁちょっとオッサン達の集まりに行って酒飲むだけだよ。僕飲めないからさ、代わりに飲んで欲しいの」
    「腕っぷしどうとかっていうのは」
    「あぁそれは、自分の身は自分で守れる奴の方が楽だから」
    「っだが、急に私みたいなやつが行ったら怪しまれるだろう!」
    「んー確かに、君のその感じで秘書はないしなぁ……あ、じゃあ普通に友達ってことで行こう。君と僕は親友で、一緒に事業を始める計画を立ててる、とかね」
     いいねそうしよう、と勝手に結論を出して男が背を向けた。普段の仕事内容とあまりに違い過ぎる提案に、その集まりとは何が目的のモノなのか、身を守る必要があるなんて聞いてないぞ、言ってやりたいことは山ほどあるのに、慌てて口を突いて出たのは自分でも笑ってしまうほどくだらないことだった。
    「わ、私はまだアンタの名前も聞いてない!」
    「サトル、五条悟だよ。これからお友達として宜しくね、傑」
     振り返った彼の顔は、綺麗な青い瞳をもっとキラキラと輝かせて、年相応にあどけない笑みを浮かべていた。なんだよ、良い表情もできるんじゃないか。
    「いきなり呼び捨てにするな、悟!」


    end.
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    おはぎ

    DONE呪宴2の展示作品です。

    以前ポイしたお宅訪問のお話のワクワク!夏油家お宅訪問~!Verです。
    いつも通り180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちは本物を詰めてます。
    傑さんや、君にこれだけは言っておきたい!!

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・夏油、五条家メンバ(両親、兄妹、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    恋人宣言「ねぇ傑、スーツと袴、どっちがいいかな?」
     コンコン、と開いた扉をノックしながら悟が声をかけて来る。明日の任務に関する資料に目を通していたからか、一瞬反応が遅れる。え、なんて?
    「ごめん、上手く聞き取れなくて。なに?」
    「だから、スーツと袴、どっちがいいかなって。今度実家寄ってくるとき用意お願いしてこようと思ってるから、早めに決めとかないとね」
     今日の昼何食べるかーとか、どっちのケーキにするかーとか、悟は昔から私に小さな判断を任せてくることがよくあった。自分で決めなと何度も言っているのだが悟の変な甘え癖は今も治っていない。だが、服装を聞いてくることは珍しい。(何でも、私のセンスは信用できないらしい。あのカッコよさが分からない方が不思議だ)しかも、選択肢はばっちり正装ときた。何か家の行事に出るのだろうか。それか結婚式とか?
    29607

    おはぎ

    DONEGGD.NYP2の展示作品です。

    以前冒頭を少しポイしていた作品をお正月仕様に少し手を入れて完成させました!
    ドキドキ!五条家お宅訪問~!なお話です。
    180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちだけは本物を詰め込みました。

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・五条家メンバ(悟両親、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    猛獣使いを逃がすな「……本当に大丈夫なのか?」
    「だーいじょうぶだってば! 何緊張してんの」
    「普通緊張するだろう! 恋人の実家にご挨拶に行くんだぞ!」
     強張った身体をほぐそうと悟が私の肩を掴んでふるふると揺すった。普段なら制止するところだが、今はじっと目を閉じて身体をゆだねていた。されるがままの私を悟が大口開けて笑っているが、もはや今の私にとってはどうでもいい。この胃から喉元までせり上がってくるような緊張感を拭ってくれるものならば、藁でも猫でも悟でも、何でも縋って鷲掴みたい。現実逃避をやめて、大きく深呼吸。一気に息を吸い過ぎて咳き込んだが、緊張感が口からこぼれ出てはくれなかった。
    「はぁ……帰りたい……高専の寮で一人スウェットを着て、日がな一日だらだらしたい……」
    27404

    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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