灰の残り香 目蓋を開いたジョニーは周りを見渡し、そこが幾度となく訪れたヴィクター・ヴェクターの診療所で、とりあえずこの体はまだ生きているようだと安堵した。処置台から蹴落とした先客はいつの間にかいなくなっている。
Vはしばらく目覚めそうにない。今はまだそのほうがいいだろう、とジョニーは思った。彼が表に出ようとすれば、体は途端に反発しだすはずだ。
ジョニーの覚醒に気づいたヴィクターは、デスクをぐいと押して椅子のキャスターをガラガラ言わせながら処置台の横へと滑ってきた。胸元からペンライトを取り出してVのオプティクスの調子を確認し、次に聴診器を胸に当てる。
リパードクは淡々と診察をするばかりで、一向に口を開こうとしない。ジョニーはしびれを切らして言った。
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