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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    寝る前の即興トレーニングで書いたやつです/35分/お題:穢された豪雨 文字数:1589字 /

    #創作小説
    creativeFiction

    異聞ノア 光あれ。
     彼はまずそういったらしい。私は膝を抱えて表でごうごうとたちあがる高波の唸りをじいと聞いていた。船内は静まり返っているが、生き物が呼吸する音が、その心音が、じわじわと暗闇に滲んでいる。不思議と、中の誰も口を開こうとはしなかった。ただ時々何かを諦めたようなため息が、誰ともしれずにこぼれる。私は膝に顔を埋め耳を塞いだ。身動ぎをすると、隣で小さくなっていたインパラが迷惑そうに瞼を持ち上げて私を見たが私は気が付かないふりをする。
     光あれとかの人はいったそうだがここに光はない。夜もずいぶん長く続いている気がする。最初はただ、スコールのように激しい雨だったが、いつの間にかこの雨は世界を覆い、大地は海になった。
     口の中で唱えるのは祈りだ。そうだ。私は信じた。だからこうして、ここで生きているのだ。
     応えるように雷鳴が轟く。それはかれの恫喝だ。私は何度も何度も許しを乞うように、聖書の一節を辿った。疑う余地もない。

     十分な備蓄があるはずだったが、船に乗り込んだ動物を全て養うにはあまりにも少ない。空腹は思考を鈍らせる。隣でイノシシとハイイロオオカミが食べ物を取り合って争っている。激しく唸り声を上げ二頭が乱闘する様は、周囲の動物たちをうんざりさせたが、しかし、そうならざるを得ないだろうことは誰しもが理解していた。ここには食べ物ほんの少ししかない。表は海で、光すらない。
     血の匂いがした。ぼんやりしていた頭が突然明瞭になる。オオカミがイノシシの頭の後ろに噛み付いて離れない。血。
     ざわめきは一瞬で伝播した。そうだ、みんな分かっているのに分かってないふりをしていたのだ。ここにはわずかな食べ物しかない。しかし、他に選択肢はあるのだ。
    血の匂いは強烈で、我々の空腹を刺激するのに十分だ。
    視線を走らせると、ツキノワグマがじゅるりと生唾をたらして血走った目で周囲を見ていた。トムソンガゼルは発狂寸前、いまにも大きくジャンプして表に飛び出してしまいそうだ。真っ赤なオオムが耐えきれず声高に鳴いた。緊迫感はいまにもはち切れんばかりだ。
     オオカミに噛み付かれたイノシシはしばらく暴れていたが、次第に力をなくし、ずるりと床に横たわった。オオカミの激しい呼吸音。私は咄嗟に飛び出して、船室のドアに近づいた。立てかけてある棒を手にする。ポケットから石を取り出して、縺れそうな指で何度も打った。チッ、と暗闇に微かな火花が散る。上手く力が入らずなかなかつかない。四度、五度打ってそこでようやく火花は松明へ燃え移った。
     おおう、と動物たちが畏怖のような声を漏らす。私はそれを手に振り返った。松明に照らされた彼らは、一様にあっけに取られたような、みようによっては卑屈な顔に見えた。
     私がイノシシに近づくと、イノシシの腹に牙を立てていたオオカミがウウ、と唸る。私は怯まず、目の前に煌々と燃える火を掲げ、前に出た。オオカミは私の目を見たあと、松明に目を細めじりじりとあとずさりをした。
    私は松明をゆっくりと振りながら、事切れたイノシシの前に膝をついた。
    天にまします我らの父よ。
    口の中で唱えたが、それは途中で途切れた。

    父よ。
    なぜ私たちにこのような試練を与えるのか。
    なぜ我々を試すのか。
    それはまるで、悪魔の所業のようです。
    私は松明をもったまま、イノシシの引き裂かれた腹に顔を寄せた。血の匂い、甘い。

    最初から、この雨は私たちの穢れを洗い流すためのものなどではなく、
    私たちの原罪を浮かび上がらせるためのものだったのではないのでしょうか。
    だとすればもう、この雨はずっと前から穢れています。

    雨の音がする。甲板を、水面を激しく叩いて私を制止しようとしている。
    私は舌をのばし、ぬるりとした肉から滴る血をゆっくりと舐めとった。
    それはまるで、赤ワインのように甘美で。
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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    あるぱ

    DONE三題噺ガチャ/創作小説/30分/すぐ人が死ぬのなんとかしたい(書いてみての所感)とむらう人

     もしも真実があるとするならばここだ。私は扉を押し開けて、そう呟いた。そうだ、それ以外はすべて偽りだ。
     手元の懐中電灯を揺らし、真っ暗な室内に誰もいないことを確認する。深夜の会議室、誰かいるわけもなかった。
     持っていた紙袋を置いて、中のものを引っ張り出す。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外した。着替えを手早く済ませ、イスを引いた。ぎ、と金属の擦れるような音にぎくんと背筋が強ばる。大丈夫。守衛の見回りの時間は把握している。
     二つ折りのミラーを取り出し、長机に置いた。紙袋の底にあったずっしりと重たいポーチを持ち上げ、ファスナーを開けると中身がこぼれ落ちそうになり慌てる。その中からいくつかのメイク道具を、私は綺麗に並べた。下地(これが肝心だそうだ)、ファンデーション(雑誌にのっていたデパコスのやつ)、アイブロウ(違いがよくわからず百均で済ませた)、アイシャドウ(姉がくれた、高級ブランドのもの。紫色でキラキラしていて発色が良い)、口紅(質屋で売ってたシャネルだが、自分に合う色がよく分からなかったせいで自信はない)。
     化粧というのは手間もかかるし金もかかるものだ。私は机 1308