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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    三題噺ガチャ/創作小説/30分/すぐ人が死ぬのなんとかしたい(書いてみての所感)

    #創作小説
    creativeFiction

    とむらう人

     もしも真実があるとするならばここだ。私は扉を押し開けて、そう呟いた。そうだ、それ以外はすべて偽りだ。
     手元の懐中電灯を揺らし、真っ暗な室内に誰もいないことを確認する。深夜の会議室、誰かいるわけもなかった。
     持っていた紙袋を置いて、中のものを引っ張り出す。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外した。着替えを手早く済ませ、イスを引いた。ぎ、と金属の擦れるような音にぎくんと背筋が強ばる。大丈夫。守衛の見回りの時間は把握している。
     二つ折りのミラーを取り出し、長机に置いた。紙袋の底にあったずっしりと重たいポーチを持ち上げ、ファスナーを開けると中身がこぼれ落ちそうになり慌てる。その中からいくつかのメイク道具を、私は綺麗に並べた。下地(これが肝心だそうだ)、ファンデーション(雑誌にのっていたデパコスのやつ)、アイブロウ(違いがよくわからず百均で済ませた)、アイシャドウ(姉がくれた、高級ブランドのもの。紫色でキラキラしていて発色が良い)、口紅(質屋で売ってたシャネルだが、自分に合う色がよく分からなかったせいで自信はない)。
     化粧というのは手間もかかるし金もかかるものだ。私は机に懐中電灯を倒してみたが、思いのほか鏡に映る顔が暗い。しかしまさか電気をつける訳にもいかず、しかたなく下地のチューブを手に取って、自分の手の甲にのせた。肌には点で置くのだ。自宅で読み込んできた女性誌の記事を思い出しながら実践するが、暗くて自分の顔すらよく分からなかった。
     続いてファンデーションを塗り、小休止を挟む。次は眉、アイシャドウ、マスカラ。
     アイシャドウの蓋をあけると、僅かな光源なのにそのラメがきらきら光って綺麗だった。私は姉の顔を思い出していた。
     買ったんだけど、あたしには似合わないから。ね、使って。
     そう言ってくれた彼女は、戸惑う私の瞼に、指先で取ったアイシャドウをのせ、にっこりと笑った。
    「ほら、似合うよ。発色が良い」
     一時、苦しみを忘れる。姉はいつも私を癒してくれる。
     チーク、口紅、仕上げのお粉。
     自由でいいのよ、圭ちゃん。
     彼女はそういってくれた。初めての人だった。
     化粧を仕上げ、懐中電灯を手に取った。鏡を照らすと、そこには不気味にメイクした男が、途方に暮れたような顔をしていた。姉さんの制服は、肩幅がキツくて手が上がらない。ふ、と息を吐いた。子どもの頃は姉と瓜二つだと言われていたのに。
     姉が死んだのは先月のことだ。過労死だった。長時間労働の末、この会議室で倒れた。
     自由でいいんだよ、姉さん。
     ふぐ、と声を上げて泣きそうになる。ガタンと物音がして振り返ると、扉が開いていた。懐中電灯が、まっすぐ私の顔を照らす。
    「なにしてるんだ!」
     鋭い守衛の声に、思わず机に手をついて立ち上がると、何かがぶつかった。咄嗟に手を出すが、黒いケースのアイシャドウが、クルクルと回りながら落下していく。
     あ、ああ。
     私はアイシャドウの砕ける音を聞く。守衛がなにかいっているが、もうその声も遠くなった。


    1つ目は『深夜の会議室』
    2つ目は『アイシャドウ』
    3つ目は『聞く』
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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    あるぱ

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     手元の懐中電灯を揺らし、真っ暗な室内に誰もいないことを確認する。深夜の会議室、誰かいるわけもなかった。
     持っていた紙袋を置いて、中のものを引っ張り出す。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外した。着替えを手早く済ませ、イスを引いた。ぎ、と金属の擦れるような音にぎくんと背筋が強ばる。大丈夫。守衛の見回りの時間は把握している。
     二つ折りのミラーを取り出し、長机に置いた。紙袋の底にあったずっしりと重たいポーチを持ち上げ、ファスナーを開けると中身がこぼれ落ちそうになり慌てる。その中からいくつかのメイク道具を、私は綺麗に並べた。下地(これが肝心だそうだ)、ファンデーション(雑誌にのっていたデパコスのやつ)、アイブロウ(違いがよくわからず百均で済ませた)、アイシャドウ(姉がくれた、高級ブランドのもの。紫色でキラキラしていて発色が良い)、口紅(質屋で売ってたシャネルだが、自分に合う色がよく分からなかったせいで自信はない)。
     化粧というのは手間もかかるし金もかかるものだ。私は机 1308

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