水の底、泡沫の夢――雨が降っている。
起き抜けのぼんやりとした聴覚に、部屋中に染み入るような雨音が響いてくる。
身じろぎをした頬に触れる枕は冷たく、一夜の間にずいぶんと部屋が冷え切ったことが分かった。
ゆるゆると瞼を開くと、部屋はまだ暗い。天井を向く視野をずらせば、窓辺にかかった厚手のカーテンの輪郭を浮かび上がらせる光は、うすぼんやりとした月明かりのようだった。
朝の気配はまだ遠い。しかし、暗闇で目を凝らしたためか、それとも部屋中を満たす冷気のためか、すっかり目は冴えてしまい、もう一度眠るには難しそうだった。
仕方なく寝床から体を起こし、枕もとのランプに火をつける。自らの体温で温もった毛布が体から滑り落ちると、途端に寒さが襲ってきて手元が震えた。椅子に引っ掛けてあった上着を着こみ、寝室を出る。
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