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    Hana_Sakuhin_

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    蘭みつ♀ / ツイートしたWDドレスネタ
    あまりにも書きたくて殴り書き。
    1Hクオリティ。いつもよりご注意を。

    #蘭みつ
    ranmitu

    決して大きくはないアトリエ。だけど三ツ谷は気にいっていた。部屋の真ん中、机の上。広がるデザイン案に、天窓からの光が差し込む。春の麗らかな陽気は穏やかで、はらはらと桃色が空を彩る。

    「へえ、いいじゃん」
    「当然だろ」
    「じゃ、さっさと本題移るか〜」

    セフレである灰谷が仕事を依頼してきたのは、前回会った時のことだった。ベッドの上、火照った身体が冷めきらぬうちに、「三ツ谷ってウェディングドレス作れんの?」と言われたのだった。

    『へぇ、結婚すんのか』たぶん、そう返した。今となってはあまり覚えていない。そのときになって、初めて気がついた。セフレのはずの灰谷のことを、三ツ谷はいつしか好きになっていた。

    恋心の自覚は、失恋と同時だった。


    ウェディングドレスにも種類がある。名の通りお姫様のような、ふんわりとしたスカートのプリンセスドレス。これまた名の通り人魚のようなシルエットのマーメイドドレス。あげていけばキリがない。

    「・・・・・・希望は?」
    「スッキリした形のヤツ」
    「じゃあAラインか、マーメイドか。スレンダーあたりでもアリか?」

    答えながら三ツ谷は、灰谷の彼女を想像してみた。スッキリした形のドレスが似合うなら、すらっとした美人なのだろう。祝福の鐘が鳴り響く中、並んで歩くふたりはきっとお似合いだ。なんて、傷口に塩を塗りたくる。

    「・・・・・・、他は?」
    「んー、三ツ谷の好きにしてい〜よ♡」

    と、言われても。どんな感情があろうが、依頼された以上これは仕事だ。むしろ好きなヤツの晴れ舞台、その隣に並ぶ彼女には最高のドレスを仕立てたいとさえ思う。

    「相手どんな子なんだよ」

    そのくせ聞いたのは半分、私情が入っていたかもしれない。三ツ谷の言葉に、灰谷は微笑んだ。たぶん、本当に相手のことを大切に思っているのだろう。信じられないくらい、柔く優しい眼差しだった。

    「飯がうまい」
    「はあ?」
    「オレ、ソイツの作ったやつしか食えねーの」

    三ツ谷は思わず素っ頓狂な声をあげた。『だったら、』なんて一瞬思ってしまった。三ツ谷が手料理を振る舞えば、おいしいって食べてたのに。いつの間にそんな相手ができたのだろう――、そりゃそうか。所詮セフレにわざわざそんなこと言うわけない。

    そもそも回答が思い描いていたものと違った。もっと見た目の雰囲気、例えば黒髪ロングだとか、例えば猫っぽい感じとか。そういうことを言われると思っていたのに、まさか。惚気なんか聞きたくなかった。

    「そういうことじゃねぇよ・・・・・・、もういい。その子の写真ねぇの?」

    三ツ谷が呆れて溜め息をつきながら聞けば、灰谷は目を瞬いた。そうして、またあの微笑みをうかべた。柔く優しい、眼差し。その行く先は、

    「ハハッ、鏡見ろよばーか♡」

    たっぷり間をおいて数秒後。アトリエを駆け巡ったけたたましい悲鳴は、後日そこのオーナーから苦情が寄せられることになる。結婚祝いとともに。
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    Hana_Sakuhin_

    MOURNING『昨夜未明、東京都のとあるアパートで男性の遺体が見つかりました。男性は数日前から連絡がつかないと家族から届けが出されておりました。また、部屋のクローゼットからは複数の女性を盗撮した写真が見つかり、そばにあった遺書にはそれらを悔やむような内容が書かれていたといいます。状況から警察は自殺の可能性が高いと――「三ツ谷ぁ。今日の晩飯、焼肉にしよーぜ。蘭ちゃんが奢ってやるよ」
    死人に口なしどうしてこうなった。なんて、記憶を辿ってみようとしても、果たしてどこまで遡れば良いのか。

    三ツ谷はフライパンの上で油と踊るウインナーをそつなく皿に移しながら、ちらりと視線をダイニングに向ける。そこに広がる光景に、思わずうーんと唸ってしまって慌てて誤魔化すように欠伸を零す。

    「まだねみぃの?」

    朝の光が燦々と降りそそぐ室内で、机に頬杖をついた男はくすりと笑った。藤色の淡い瞳が美しく煌めく。ほんのちょっと揶揄うように細められた目は、ふとしたら勘違いしてしまいそうになるくらい優しい。

    「寝らんなかったか?」

    返事をしなかったからだろう、男はおもむろに首を傾げた。まだセットされていない髪がひとふさ、さらりと額に落ちる。つくづく朝が似合わないヤツ、なんて思いながら三ツ谷は首を横に振った。
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