聖者の行進目蓋を開くと部屋は薄暗く、頬をひやりとした空気に包まれていた。
もう日が沈んでしまっていて、夕飯を食べ損ねたんだと気付く。
ベトベトだった身体が綺麗になってて、うっすらと、風呂に運ばれたような記憶が残ってた。
深く眠り込んでいる圭介さんの睫毛の影を目線で辿って、無茶振りしちまったかな、と思った。
「俺しか知らないはずなんだけどなぁ…」
昼間から放置していた携帯に手を伸ばし、メールを開く。
《やっとヒナの親父さんから、結婚を認めてもらえた!2年もかかったけど、ぜってーヒナのこと幸せにしてみせる。千冬、もう大丈夫だから、心配するな》
詰めていた息を、吐き出した。
この世界は、誰も死なずにみんなが幸せになれるんだ。
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