白黒白い絵の具にほんの1滴でも黒を混ぜればそれはもう白ではない。
透明な水に1滴の黒を混ぜてもそれはもう透明ではない。
『全て台無し。はい、お終い。』
『まぁ、もし我が主のご用命とあらばこの道満。黒き力にて暗黒の帳を下ろし白きものも黒く塗り潰してごらんにいれましょう』
そう語る道満はニヤニヤという表現に合うように笑みを携えている。
その言葉を聞き、立香はまたか…と呆れたように道満を見上げる。
「─道満」
『はい。』
「でも黒だって完全には黒くは無いでしょう?」
立香が反論する。
「チョコレートのブラックもお砂糖は入ってるし珈琲だって悪魔のように黒く…って言ってもブラックだって真っ黒なワケじゃないしお湯多めならアメリカンで薄まるしミルクを足せば黒くなくなるよ。それに道満の髪だって白くもないし黒くもないじゃん」
『ンンン…』
道満の笑顔が陰る。
立香はなおも話を続ける
「ブラックは…私はちょっと苦手だけど私はミルクたっぷりカフェオレも好きだし…あ、抹茶オレも好き!利休さんに怒られちゃうかな…」
立香ははにかんだような笑顔をこぼす。
道満はやや不満そうな表情を浮かべている。
「珈琲でも入れようか、道満も飲む?」
『ンン、砂糖とミルクを多めでお願い致しますぞ』
「うん!」
立香は嬉しそうに返事をする。
こうしてふたりの甘いひとときはつづくのであった。
~了~