モラトリアム人間 モノクロの世界。鉛筆だけを使った絵のように僕の心は白と黒しかない。
——一番か、そうじゃないか。
それ以外は無意味なのだと、太陽がどの方向から登るのかを知る前から、親にそう教わっていた。
だから、絵を描く時くらいその二色以外も使うと決めたんだ。
目に見える世界はこんなにも眩しくて、楽しそうで、希望に満ち溢れてるんだと自分に言い聞かせるように。はっきりとしていなくてもいい。何色なのか分からない色も愛おしいものなんだと。
真っ白のキャンパスに、鮮やかな色を重ねる。
空みたいにどこまでも広がる青。
どこか危険な意味を持つ黄色。
そして、燃え上がるような情熱的な——赤。
【モラトリアム人間】
多くの人が立ち止まっているスクランブル交差点の前。
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