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    蘭みつ/梵デザ軸
    スロットメーカーのお題から
    【あなたの病室で】【冷めたコーヒーをすすりながら】【死んでしまいたいと思った】

    文体が納得いっていないのと、ちょっとお題から逸れたので供養……

    #蘭みつ
    ranmitu

    世界の冷たい病室で
     まぁ、いつかこんな日が来てもおかしくはなかった。覚悟していなかったと言えば嘘になる。していたつもりだった。
     それでも胸の動悸は収まらない。足を動かしているからか? いや、思考から来るものだ。ドッドッドッ、と収まる気配すらない。
     それほど自分が焦っている。平常心で居られない。
     煩いほどの動悸と共に漸くたどり着いた部屋。勢いのまま開ける気にはならなくて、そーっと、音を立てないように開けた。
     そこにあるのはベッドと簡易的な机と椅子。壁は白い。良くある病室の形。
     中心にあるベッドには目当ての人間が居た。自分の動悸をここまで早めた男。
    「――生きてんじゃん」
    「死んでてほしかった?」
     口角を上げて眉を下げ、平気で笑っているようにも、困っているようにも見える表情を見せてきた。

     蘭とは同居人という関係性が一番分かりやすいだろう。生活リズムも仕事も何もかもが違う人間同士。それでも同居と言う形になったのは愛があるから、なんて言ってみるがそんな大層なものではない。成り行きという言葉が一番大きい。元々は三ツ谷の家に蘭が押し掛けてきたのが先であり、そこから引っ越して大きな家にしたいだの、ベッドが置けないだの、紆余曲折ありながら漸く落ち着いた。
     蘭は裏社会に生きる人間である。同居を決めたときから三ツ谷はある程度覚悟していた。
     していたつもりだった。
     ある日先に帰宅することができた三ツ谷が食事の支度をしている際、彼のスマホが音を鳴らした。ディスプレイには竜胆の名。蘭の弟である竜胆から掛かってくることは割とあることなので、特に何も思うことなく出た。
    「もしも、」
    『三ツ谷今家か!?』
     三ツ谷の声を遮るように竜胆の声が入る。焦りが含んでいるような声。
     いつも飄々としている兄弟から初めて聞いたような声。
     あ、これなんか相当なことがあったな。
     コンロの火を止めて上着の居所を思い出そうとした。

     竜胆の焦り声を受け止め言われた病院に向かい、動悸と共に入った病室には不敵な笑みを浮かべる蘭が居た。
     ただ不敵なのは表情だけであり、姿そのものは痛々しかった。三ツ谷自体ここまでボロボロなのは見たことが無い。
     それでもいつも通りな蘭は、見ていてどこか痛々しく感じた。
     此処に辿り着くまでの様子で自分が此処に訪れることができたことだけでも特例なのだろう。生きている世界が違う人間。ただ、一緒に住んでいるだけの人間。
    「心配した?」
     そう聞いてくるものだから、三ツ谷もまた同じ笑みを浮かべて返した。
    「いや? 命拾いして良かったな、って」
     こんなの建前だって、お見通しだろうけれど。

     飲み物買ってくる、と病室を出て近くの自販機に行った。身体が冷えている気がする。なにか暖かいものが飲みたい。そう思って小銭を入れ、ホットコーヒーを。
    「……あ」
     出てきたのはアイスコーヒーだった。入っていたのが違ったのか、と一瞬思ったがそれも違った。
     手が震えていた。ホットコーヒーを押せなかった。ぶれて上のアイスコーヒーを押していた。
     どれだけ震えてんだよ、馬鹿か。
     でも買ってしまったものは勿体無いからそのまま拾い上げ、近くの廊下に置いてあるソファに座った。
     アイスコーヒーを両手に持ち項垂れる。
     竜胆からの連絡を受けたとき、生きた心地がしなかった。
     いつかこんな日が来るかもしれなかっただろ。なのにこんな動揺してどうすんだ。
     すぐに連絡が来たのも恐らく特別。なんなら連絡すら来ずに怪我すら知らされず終わった可能性もある。
     生きている世界が違うという意味。
     どうしようもなく無力に思えて。広い世界のただ1人でしかなくて。有象無象の中の1つで。
     握り締めた手の感覚はもう既に無くなっていた。
     地獄だったら一緒にいけるだろうか、なんて。
     そんなことを考えてしまう自分を嘲笑した。
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    PROGRESSリビルディング12話/久々更新で申し訳。🈁🐶につなげたい話。ちゃんと終わらせたいので少し駆け足気味になります。
    来世兄弟12「た、だいまっ!」
    「うお、おかえり」
     夕食の準備をしていたら青宗が勢いよくドアを開けて飛び込んできた。肩を思いっきり上下させて呼吸を整えている。全力疾走してきたということか。けれど青宗がこうなるってことは何かがあったんだろう。
     菜箸を置いて青宗の方へ近寄り片手を差し出した。
    「どうしたんだよ」
     青宗は素直に右手を乗せて顔を上げる。その顔は汗で塗れていた。白い肌のせいか一層赤く見える。少しだけその体勢のまま息を整えて口を開けた。
    「いや、……ココが」
    「あー」
     成程な。大体を理解した。
     青宗はオレたち兄弟の中で一番旧友たちと関わりたくないと思っている人間だろう。だから色々と慎重に考えていたのはなんだかんだ青宗だし、オレが考えて導いても最終決定権は青宗だった。特にココくんに対しては、青宗自身のことを完全に忘れて欲しいようでチラつかせるようなこともしない。すれ違うことも許さない。あの業務用スーパーで出会ったのも偶然からきた割とやばいハプニングだったけれど、どうにか切り抜けたし。
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