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    いつか新たな知識を創りたい先輩が知識に狂った後輩を救っていた話。になる予定のカヴェアル。ゼン視点。

    ※天才kave×知識至上主義tham
    ※thamの愛が激重
    ※kaveとthamの学生時代に関する特大幻覚
    ※mjn任務ムービーシーン等に関する重大な捏造

    #カヴェアル
    Kavetham

    エレンコスの霊廟 アルハイゼンは、この世の何よりも、知識というものを愛していた。そのため、彼が神の知識を求めるようになるのも、また自然な帰結であっただろう。
     歴代の大賢者たち曰く、神の知識とは、あらゆる反証を潜り抜け、永遠にこの世に残り続けるだろうものである。そしてそれは、それを手にするためなら人々の命すら賭けられる程希少なものであり、一度手にしてしまえばこの世のすべてに何の価値も見出せなくなる程尊いものであるらしい。
     ならば、きっと、自身の人生もまた、人類がその極致に辿り着くためにあるのだろう。そう、アルハイゼンは本気で考えていた。
     ……この感情は恐らく、学問の道を志す者としての職業病のようなものだ。故に、その一生を神の知識の探究のために捧げる学者という道を選んだ生き物は、みなこのような類の狂気に陥っているといえるだろう。
     しかし、彼はその中でも一等狂っていた。人工的な光が未だない時代を生きた人々が月の光に魅入られたように。彼はまさしく、人の身では決して届かない場所にある究極の知識というものに、完全に狂わされていたのである。





     残るべき理由がなければ、それがいかなるものであろうとも、いずれ必ず淘汰される。すべてのものがもつ違いは、それが早いか遅いかだけだ。そして、そのような、世界による厳しい反証の嵐を潜り抜けた先に残るものだけが、新たな知識となることを許される。
     そして、すべての真なる知識は既に世界樹に収められているのだから。人間の知的活動のすべては、その根元を掘り起こし、見つけた根冠に書かれた文字を転写することに等しい。人類にとって新しいその知識は、しかし決して世界にとって新しい知識などではない。世界樹とその中に収められた知識、そしてマハールッカデヴァータが遺した英知の結晶に比べれば、教令院の頂点に立つ大賢者でさえ、何も知らない赤子のようなものだ。

     ――空虚だ。
     当時のアルハイゼンは、より多くの知識を求めて教令院の扉を叩き、狭き門を潜り抜け、ようやっとその中の一員となることを許された学生の一人だった。しかし彼はすぐに、教令院の学者たちが我が物顔で語る業績を見聞きしながら、自然とそのような感想を抱くようになった。
     現在の彼らが誠心誠意行っていると標榜する“学問のようなもの”は、アルハイゼンから見れば、その殆どが、既知の事実に見せかけだけの未知を被せこねくり回しただけの、無価値なものだ。彼らがやっていることは、かつての人類が知っていたが、今は忘れ去られてしまったものを掘り起こすだけの作業であって、新たな知識を創出する活動ではない。……そしてそれは自分自身の研究活動でさえ、例外ではない。この五百年、教令院の学者たちは新たな知識を産み出すということをしていない。学者たちの世界は、虚飾と欺瞞に満ちている。
     故に、アルハイゼンはあらゆる論駁を耐えることのできる、絶対的な知識を求めた。虚飾に侵されることのない、真なる知識を。そしてそのために、彼は既知や自明とされるあらゆる物事に対し、批判を加えた。先輩学生の言葉を疑い、教師の教えを疑い、賢者の知識をも疑った。それが他者を己から遠ざける要因となったとしても、一向に構わなかった。アルハイゼンはただ、どの知識が真で、どの知識が偽かを知りたかっただけだ。真の知識が持つだろう価値に比べれば、他者からの表面上の評価など、何の意味があるというのだろう。
     ところで、そのような問答を繰り返したアルハイゼンの手元には、何の真理も残らなかった。彼は教令院で、絶対的な知識を手に入れるどころか、何一つ確固たる知識を得ることができなかった。
     彼にとって、アーカーシャに氾濫する知識の多くは何らかの誤謬を含んでいる。歴代の学者たちが世界樹の知識を転写する際に誤ったのか、それとも、元々世界樹にすら、真なる知識など存在しなかったのか。少なくとも今のスメールには、それだけですべてを説明できるような万能の原理など存在しないのだろう、ということだけは確からしかった。何故なら、アルハイゼンに言わせれば、スメールで最もアーカーシャの深層に触れているであろう大賢者すら、何も知らない唯人でしかなかったので。
     アルハイゼンは大いに荒れた。真なる知識を手にするつもりが、何一つ掴むことができなかったのだ。それでも、あらゆる人間に噛み付くという習慣だけは続けた。可能性を信じていたからだ。しかし人々は彼との論争を厭った。彼らは虚無に直面することを嫌い、彼らの空想上にだけ存在する“真なる知識のようなもの”に縋った。
     そうして彼は、真なる探究から目を背け、無知の闇から尻尾を巻いて逃げ出す愚かな学者たちを、いつしか嘲るようになった。

     しかし、そんな日々を過ごした先で、アルハイゼンはひとつの“真理”と出会ったのだ。





    「君の主張は間違っている」
    「いいや、間違っているのは君の方だ」

     いつものように、目につく瑕疵をあげつらったアルハイゼンを、カーヴェはその茜色の双眸で睨みつけてきた。思い通りにならない苛立ちと、興奮が、アルハイゼンの心を刺す。
     二人の間を隔てる酒場の机を強く叩き、勢いよく立ち上がったカーヴェは――彼の座っていた椅子がその衝撃で倒れ大きな音を立てたので、衆目を集めた――そのままの勢いで、鉄仮面を保ったままのアルハイゼンに人差し指を突きつけながら言う。

    「いいか、アルハイゼン! 世界を他人事のように語るのは、君の悪い癖だぞ。君は実際の世界をまったく見ていない!」
    「君程じゃない」
    「いいや。この世界は君が言うような姿をしてはいないし、人はもっと混沌として自由な生き物なんだ」

     アルハイゼンがかの天才建築家カーヴェの存在を見つけてから、これまで。アパーム叢林に降り注ぎ続ける雨のように、彼の発想力と減らず口は止まることを知らなかった。それ故、すべてを否定して、それで黙り込んだ相手を見下せば終わりとなるような、退屈な対話に飽いたアルハイゼンにとって、彼は未だ反証されていない可能性の塊であった。自分が何を言っても黙らない彼は、アルハイゼンにとって、常に新しく、新鮮なものに映った。
     アルハイゼンは彼が生み出すものをいくらでも反証することができた。しかし、彼との論争をどれだけ続けても、彼自身のすべてを反証することはできなかった。他の人間のように、いくつかの理論で括ってしまうには、彼はあまりにも巨大かつ未知数な人物であったから。

    「俺は君の考えを否定している訳じゃない。だが、それだけでは説明できないことが多くなり過ぎてしまう、と言っているんだ」
    「だからこそ、全ての人生経験に対して確実な説明が必要だと考えること自体が間違っているんだ。ある人が何かを美しいと感じたときには常に、それが何故美しいかを正確に説明できなければならない、と断じるつもりなのか?」
    「物事には必ず、理由がある。美的感覚に関してだけは例外である、と何故考えなければならないんだ?」
    「それなら、理由を説明できないものはこの世に存在しない、と? 人類の英知は万物を説明するには未だ不完全なものであるにもかかわらず? ……君の主張は極めて馬鹿げている!」
    「そんなことは言っていない。君の主張を通すために、俺の主張を曲解するな」
    「ならばどういうつもりなのか、説明してもらおうか!」

     再び叩かれた机が、楽器のように甲高い悲鳴を上げた。
     アルハイゼンとカーヴェは、毎日のように論争を続けていた。二人ともある程度は認められるというような最終結論が得られることは非常に稀であったけれど。

    「いいだろう」

     そう言って、立ち上がったままの彼と目線を合わせるように、アルハイゼンもまた勢いよく立ち上がる。――またひとつ椅子が倒れ、酒場の店主がいつものように頭を抱えた。体格のいい二人が頻繁に起こす騒動のせいで、彼らが決まって使う席の椅子はとうに歪んでいた。それを、その都度、細かな修理が得意なカーヴェが無理矢理何とか座れるように直していたのだが、この度再びその労力が露と消えた。

    「表へ出ろ!」

     カーヴェがそう叫ぶなり、彼の腕を掴んだアルハイゼンは、懐から出したモラ袋を傷まみれの机に叩きつけると、彼を強引に通路へと引き摺り出した。それから二人は縺れ合うように、道中足に引っ掛かった邪魔なものを乱雑に蹴り飛ばしながら、酒場の外へと向かった。



     ある変わり者の賢者曰く、すべての芸術とは、本来的に未完成なものであるらしい。大変通俗的であるために、学者という職業を所謂聖職に近いものと考える教令院の学者たちからは鼻つまみにされていた、傍流も傍流の人物の言葉だ。しかしアルハイゼンはこれを、真理になり得る可能性のあるひとつの仮説だと考えた。
     故に、真の芸術家とは、ひとつ、またひとつと、作品制作を積み重ねる度に進化し、常に向上していく者である。
     ――自ら“獲得”した英知に溺れる厚顔無恥な学者もどきと比べて、何と謙虚なことだろう!
     議論や知識も同じだ。論証や論駁を積み重ねれば積み重ねる程、それらは進化していく。より、確かな真理へと、近付いていく。
     必要な論証を無視し、一足飛びに結論に辿り着こうとすれば、偽りに騙される。必要なのは、正しい可能性を証明することではなく、それ以外の正しくない可能性をできるだけ排除することだ。黒い鴉をいくら数えてもすべての鴉が黒いことを証明することはできない。しかし、白い鴉を一羽見つけるだけで、すべての鴉が黒いということが誤りだということを指摘することができる。
     だから。
     アルハイゼンは、狂気に身を投げ棄てることを選ぶ必要がなかった。





     狂気を演じながら、教令院、そしてスメールシティを比較的大人しく――まあ、自身を他のグラマパラ同様荷物のように扱ってきた奴らを少々強引に伸しはしたが――離れた後、舞台裏たるアアル村で閉幕の時を待っていたアルハイゼンは、吉報に内心胸を撫で下ろした。何でもないような顔をしていたが、本来の自分なら決して選ばないような、極めて不確定な作戦をあえて選んだのだ。アルハイゼンとて、不安にもなる。ここへ来る直前に端末を外したことで、あの狂気的な確信も薄れていたから。

     それからまもなく、再び教令院に戻ってきたアルハイゼンだったが、戦勝に喜ぶ間もなく、膨大な事後処理を抱え込むことになった。
     当然だ。一日の内に、教令院の実権を握っていた大賢者と半数以上の賢者がまとめて失脚したのだ。その上、失脚した賢者には、アルハイゼンが所属する知論派の元賢者も含まれていたから。アルハイゼンたち知論派は、彼に代わる、新たな賢者を決めなければならなかった。それに、新たな大賢者も。
     しかしアルハイゼンは、リーダーに物言う人間にはなっても良かったが、リーダーにだけはなりたくないと思っていた。そのような地位は、アルハイゼンが求めているものを手にし続けるための障害となるだけだ。
     そのためアルハイゼンは、色々な誘いや懇願を無理矢理はね除けた。その結果、大賢者の地位を押し付けられることだけは辛うじて回避することができたが、しかし次の大賢者が決まるまでの代行役という職務からは逃げられなかった。
     今回の計画に参加した者の内、最も中核的な役割を果たした旅人とパイモンはスメールの人間ではなく、ディシアやラフマン、ニィロウも教令院所属ではない。ティナリはアビディアの森のレンジャー長としての仕事がある。そしてセノは大マハマトラだ。一方、書記官であるアルハイゼンは、大賢者を失脚させたことで、結果的に一番宙に浮いた地位の人間となった。つまり、大きな地位を押し付け放題だと思われている、というわけだ。
     ……全く、腹立たしいことこの上ない。もし妙論派の星、大建築家カーヴェが今回の件に参加していれば、アルハイゼンがこのような心労を抱える羽目にはならなかったというのに。アルハイゼンは、自身が大賢者になりそうになったのは、現時点で他にまともな職歴を持つ人間がいなかったからだ、と考えている。学生時代のアルハイゼンを知る学者たちの中に、彼に自説を徹底的に攻撃されたことのない人間はいない。他に候補がないという理由でもなければ、彼らは決して、アルハイゼンを自分達の上司とすることを望まなかっただろう。……まあ、このような重責を背負わせることより重要な役目がカーヴェにはあるのだから、彼がいたとて、結果はそう変わらなかっただろうが。

     その日、アルハイゼンは、自らに課せられた後始末をより確実にするため――つまりもう二度と自身をこのような立場に置くことがないよう――拘留室でマハマトラたちの沙汰を待つ元賢者たちの元を訪れていた。
     確かに、断罪はアルハイゼンの役目ではない。彼らの末路に対する興味もない。
     しかし、アルハイゼンは書記官である。彼らが失脚したことで中途半端に残された事務仕事を処理する上で、彼らの話を聞く必要があった。彼らのどんな罪に対してどんな罰が与えられるか、ということと、書類関係に関する引き継ぎが適切に行えるかどうかということは、全く別の問題である。そしてこれらの仕事を片付けない限り、アルハイゼンが今の仕事から解放されることはない。

     アルハイゼンが話を聞かなければならない人物のひとりであった知論派の元賢者カジェは、淡々とした瞳で書類の不明瞭な点を一つ一つ読み上げるアルハイゼンを、奇妙な目で見ていた。仲間外れの瞑彩鳥を見るような、木から落ちた夕暮れの実を見るような、そんな目だ。
     アルハイゼンは、学生の間に、彼の講義を何度か受けたことがあったことを思い出した。その時も、彼は同じような目をしていた。そして彼だけではなく、計画に関与していた賢者、学者、そして哀れな一部の学生もまた、同様の目でアルハイゼンを見ていることに気付いた。

    「アルハイゼン。何故……」

     彼の声は掠れていた。長時間まともな会話をしていなかったからか、それとも、彼らが今いる部屋が、かつての彼らが住処としていた快適な空間に比べ、比較的乾燥しているからだろうか。
     彼らの物言いたげな瞳を変えてしまわなければ、彼らの口を割ることはできないだろう。そう判断したアルハイゼンは、書類から目を離すと、理解不能といった表情を浮かべるカジェへと目を向けた。

    「……俺が狂わなかったことを不思議に思っているのか? 俺なら、衆目を気にせず、何も憚ることなく、己の未来にすら何の未練も持たず、神の缶詰知識を手にした瞬間それを真っ先に使用していたとしてもおかしくはない、と」

     アルハイゼンならあの状況で神の缶詰知識を使ってもおかしくない、と大賢者アザールにすら思われていたこと。これこそが、あの極めて子供騙しに近い、ほぼ運試しのような作戦で、彼を見事欺き切ることができたことの一番大きい要因だろう、とアルハイゼンは考えていた。彼らは恐らくアルハイゼンの知識への執着を利用できると思ったからこそ、事件から遠ざけるのではなく、あえて事件の中核に置くことを選んだのだ。

     今思えば、本当に、単純な仕掛けだ。時間がなかったとはいえ、あまりにも精査されていない、確実性の低い案。アルハイゼンは自身を幸運な人間だと思ってはいない。そのため普段は、最も確実性の高い結論ひとつを出すために膨大な手間と時間をかける。しかし、アルハイゼンたちの思考傾向がアーカーシャに把握されている以上、そのような日常的な習慣は計画の妨げとなる。だから、特に大賢者たちに警戒されており、アーカーシャにその情報の多くを握られているだろうアルハイゼンとセノは、それぞれが、普段の自分なら絶対にしないだろうことをすることになったのだ。権力を悪用して不正に手を貸すとか、感情的に振る舞い明らかな証拠を見逃すとか。
     計画の中核となる仮説は、アーカーシャがもたらす見せ掛けの信念に支配されることに慣れた脳に見かけ上の真理を叩き込むことで、彼らの認知を狂わせることができるのではないか、というものだった。疑うことを忘れた脳に明らかなる“事実”を叩きつけることで、違和感がもたらす反論を黙らせる。
     しかし、改造した端末や缶詰知識により、見た目だけ狂った学者に似せることはいくらでもできたとはいえ、より迫真に見せるためには、アルハイゼン自身にも、何らかの妄執が必要だった。それに、仲間たちにリスクを背負わせた分、自分自身もリスクを背負う必要があった。
     ――今、俺たちの計画はすべて完了した。
     アルハイゼンは、神を造るという研究のために神の知識を利用し、自分以上に、狂気に身を落とした学者たちの姿を見てきただろう相手を、騙さなければならなかったのだから。
     ――クラクサナリデビの救出に成功し、スメールを変えられた。
     冷徹さや思慮深さはある種の躊躇を生む。それが命を救うこともあるだろう。しかし、僅かな判断の遅れが致命的な結果となることが分かり切っている状況において、そのような躊躇が自身の指先を狂わせないと、どうして言えよう?
     執着は時に、人の行動をより単純に、非合理的にする。それは人間が持つ一番の欠点であり、そして同時に、長所でもあった。
     “真っ赤な嘘”で人を騙すためには、加工の元となる缶詰知識が必要だ。そこに含まれているのは、すり替えるための知識と、見せつけるための知識だ。しかし、偽りの知識を偽りと理解しながら取り込むことは難しい。この世の真実を冒涜する、偽りの記述は、学者であるアルハイゼンにとって、死に至る毒の一種だ。明らかな偽りを叩き込むことで、自身の精神にどのような影響が及ぶかは、正直未知数だった。
     だから、いずれ偽りでなくなるだろう信念、即ち、これから真実となるだろう知識を事前に用意した。
     自分はすべてを疑っていなければ生きられない人間だ。何かを盲目的に信じることには向いていない。それに、アーカーシャの予測機能を騙すには、アルハイゼンは少々“論理的”過ぎた。
     しかし、今のアルハイゼンには仲間がいる。だから、その少しだけ足りない部分を、それができる仲間の力で補うことができる。
     ――すべてが順調に進んでおり、人々も俺たちの功績を認めてくれている。
     そうだ。この計画はまもなく成功するだろう。それが“真実”だ。だから、アルハイゼンは、その無邪気で力強い夢想を現実のものとするために、己が為すべきことを為すだけでいい。
     彼らの目からも赤く映るよう加工された眼前の光がアルハイゼンを狂わせることはない。しかし、狂おしい程に騙りかけてくる認知に飲まれ安心しきってしまわぬよう、最短で、為すべきことだけを為さねばならない。チャンスは一瞬。不自然さを与えてはならない。大賢者に真相を気付かせるのは、アルハイゼンの役目ではないのだから。
     故にアルハイゼンは、不条理かつ非論理的な欲動に突き動かされるまま、吠えることができたのだ。自分たちの敵、裏切者の大賢者の名前を。

     ……しかし本来、アルハイゼンは賢者側についていた筈の人間だ。だからこそ、彼らはアルハイゼンの選択を侮っていたのかもしれないが。

    「お前さんもいずれ必ずワシらと同じ道を歩むことになるだろう。お前さんは好奇心と知識欲に耐えられない。そういう怪物だ」
    「ああ。そうだろう」

     アルハイゼンには、大賢者たちの行動原理がよく理解できた。もし彼らが、アルハイゼンと利益的に対立する道を選ぶことさえなければ、自分も同じような道を歩んでいたかもしれない。
     この世に、失われないものは存在しない。あるのは、ただ。これから失われるかもしれないが、未だ失われていないものだけだ。現に存在する神は万能ではなく、故に万物は流転する。夢の外では、同じ川に二度入ることができないように、今この時を繰り返すことはできない。
     そうなれば、いずれ今ある知識も役に立たなくなるだろう。そしてその分、新たな知識を求め続けるしかない。
     真なる知識の前では、倫理道徳など意味を持たない。だから、アルハイゼンは彼らが非道徳的な研究手法を選んだことを責めるつもりはない。
     アルハイゼンはいつ狂ってもおかしくない人間だ。否、もう既に狂っているのかもしれない。

    「だが……それは今ではない」

     アルハイゼンは微かに口角を上げた。
     ……確かに、過ぎ行く時間の前では、万物はすべからく無力である。
     しかし、限りある今を限界まで引き延ばすことは、力なき凡人の身であってもできる。今回の作戦行動はまさしく、その仮説に対するひとつの証明を提示するためのものであった、といえるかもしれない。

    「確かに俺は、実利がなくなったものは必ず淘汰されると思い続けているし、故に、より不変に近いだろう神の知識を求める気持ちをなくした訳でもない」

     彼らはあらゆる人々の虎の尾を何度も踏んできた。
     アルハイゼンが、ただ己を利用しようとした彼らから自らの身を守ろうとすることだけを望んでいたなら、自身にリスクを負わせる必要などなかった。
     けれど、彼らが真なる知識を軽視し、そしていずれそれをもたらすだろうものたちを愚弄したことだけは、どうしても許せなかった。
     自身がここまで感情的になれる人間だとは思わなかった。きっと、アーカーシャだって予想していなかったことだろう。もしかするとこれも、あの仲間たちとの交流によるものなのかもしれない。
     彼らは知らないのだ。アルハイゼンが知ったこと、多くの人間がずっと前から知っていたことを。だから平然と、眠れる虎の尾を踏むなどということができる。

    「真に優れた文化には実利が伴う。実際、利用価値はあっただろう?」

     種々の仕込みを一度に開花させる芸術家の役を担ってくれたあの踊り子、ニィロウの演技が優れていなければ、衆目を効率的に集めることができず、故に広場の騒動を大賢者の耳に届けることもできなかっただろう。そうなれば、彼らが仕掛けにかかることはなかった。
     けれど、実際にはそうはならなかった。彼らは見事に騙されてくれた。
     アザールたちは、彼ら自身の行動によって、彼女の作り出す芸術が優れていることを結果的に証明した。
     ……それに、砂漠での事件がアルハイゼンにもたらした、歴史認識に関する修正点もある。

    「現に、遺跡は多くを記憶していた。そうでなければ、草神の民と砂漠の民が500年の確執を忘れ手を取り合うことなど到底できなかっただろう」

     優れた建造物は、人間の一生より、遥かに長い時を過ごす。歴史の中で淘汰されなかったものだけが、長く生き延び、後世の人間の元へと届けられる。それらは知識の方舟となり、いずれ未来の人々の手で再び見つけ出され、探究されるときまで、真なる知識を改竄から守り続ける。そうして、今もなお砂漠の中に現存しているあの遺跡たちのように、いつか人々を歴史がもたらす誤謬から救い出す力となる。
     そして、遺跡というものには必ず、その元となる建造物を作った者がいる筈だ。
     ならば、いつか、あらゆる風化を耐え抜き真なる知識をアルハイゼンたちに届けたあの霊廟のような建造物が、新たに生まれる日が来たとしたら。その存在に関する記述を、新たな知識と、呼ぶことが許されるのではないだろうか。

    「俺は真の知識を愛している。人工の神や端末機がもたらす見せかけの“知識”ではなく、この世界に関する本物の記述を」

     つまり、クラクサナリデビに代わる新たな全能神を造り出したり、実際の彼女を冷遇し、彼女の権能の一部であるアーカーシャ端末だけを不当に利用したりせずとも。いずれ自身に真なる知識を与えてくれるだろう可能性のある人物が、我々のすぐ近くにいるということを、知っていたから。
     彼らは今ある文化を執拗に否定しようとして、結果的に、それらが持つ脅威を肯定していた。
     彼らは学問を辱しめ、文化を侮り、知恵の神を裏切った。そしてそれ故に、彼ら自身の持つ知識に裏切られたのだ。
     それは、まぎれもなく、アルハイゼン自身が抱いた本物の怒りだった。

    「お前たちが作ろうとしていたものこそ俺が求めていた真なる知識だなどという妄言を、俺は絶対に認めない」

     あの醜悪な工房を今後どうしていくべきかは、未だ決まっていない。しかし、二度と同じようなことが起こらないようにしなければならないだろう、という方針で一致していることだけは確かだった。

     彼の知識に対する狂おしい程の執念はいつの間にか形を変えていた。そしてそれは同時に、アルハイゼンという人物が皆と同じ一つの方向へと突き動かされることを可能にしていたのだった。
     彼と賢者たちの間に、違いがあるとすれば。居たか、居なかったか。ただそれだけだった。





    「――俺の性格が気に入らないのなら、俺の家から出ていくといい。俺は一向に構わない」

     元賢者たちとのやり取りで、珍しく気疲れしていたのだろうか。普段と寸分違わぬ言葉の売り買いに、必要以上の苦痛を覚えた。
     アルハイゼンは、新しいものを作るのが得意ではない。というより、普段しないことをし、感じないことを感じるのが苦手だった。それが学問的探究であればいい。しかし学問と直接関係のない分野には関わりたくない。そのため、今までとは全く違う教令院の、当面の方策を決めさせられるのはかなりのストレスであった。
     ――次代の賢者の選出に関することを俺に聞くな。自分達の学派の賢者など、自分達で決めろ。下手に答えて、選出に影響するのも、そのままなし崩し的にリーダーにされるのも御免だ。
     そう言って突き放せたら、どんなに楽だったことだろう。
     これまでの教令院では、あらゆることが賢者たちの独断で決められていたため、スメール人はアーカーシャに依存するのと同じように、賢者たちに依存していた。
     故に、他の学者たちに比べ、元々アーカーシャ内の情報への依存度が低く、アーカーシャが機能停止した後でも、比較的まともにものを考えることのできるアルハイゼンの判断に容易に全てを委ねようとする彼らの状態は予測できたことだった。
     ……教令院の迷える学者たちを自分が導かなければならないプレッシャー、というより、単純に、アルハイゼンは多くの他人の行く末を考えるのが好きではなかった。お人好しの誰かさんとは違って。

    「そもそも、君がいなかった時の方が、まともに生活できていたんだ。酒場まで君を迎えにいく必要もなく、戸締まりに気を遣う必要もない」

     アルハイゼンの口から洩れた吐き捨てるような刺々しい声色に、カーヴェの顔色が僅かに変わる。

    「はあ? 君、いつにもまして卑怯だな。……何かあったのか?」
    「別に何も」

     元々、こういった後処理も覚悟した上での計画だ。革命の難しさは、革命前にあるのと同時に、革命後にもある。革命を起こした以上、その前と異なる状態を作らなければ意味がないのだから。そして、少人数の革命計画であったために、手助けがないのも想定の内ではあった。
     だが、本当は。ほんの少し、自分には向いていない分野だけでも、同じ立場に立てるだろう人の手を借りたかった。
     思わず眉を寄せたアルハイゼンを見て、カーヴェもまた眉を寄せた。

    「何もない訳がないだろう。今回の政変で、多くの学者が多かれ少なかれダメージを受けた。それは君も例外じゃない筈だ」
    「なんだ、俺が首謀者だと疑っていたんじゃなかったのか?」
    「君にメリットがないだろう」
    「メリットならある。クラクサナリデビ様を愚者たちの檻から解放できた。これをメリットと捉えないスメール人など、裏切者の元賢者たちくらいだろう」
    「そういうことじゃない……!」

     どうやら、カーヴェは、アルハイゼンが何かを言う度に気分を害してしまうようだった。アルハイゼンにとって、彼は常に未解決問題のようなものだ。そのためアルハイゼンには、彼が表現する感情の理由を解き明かすことができなかった。

    「カーヴェ。むしろ分からないのは君の方だ。君の言動は明らかに矛盾している」

     アルハイゼンには、カーヴェがどうしていつまでも機嫌を損ねているのか分からなかった。偽善者ぶるのが好きな彼なら、学術的犯罪者が暴かれたことを喜ぶと思っていたのに。彼らは公正な研究の邪魔だった。彼らは芸術や美的な文化を解さず、一緒くたに弾圧しようとしていた。そうなれば、いずれ彼が理想的と考える建築の邪魔にもなっただろう。
     ……過度に感情的に振る舞ってしまったことの後遺症か、自身の感情をコントロールするのがどうも難しい。理性的でなければ、客観的な判断ができなくなってしまう。アルハイゼンは、カーヴェの業績を見届け、判断を下さなければならないのに。
     僅かに俯いてしまったアルハイゼンの姿に、カーヴェの表情に焦りが滲んだ。絶対許してやるものか、といわんばかりに張り付けられていた怒りの膜が剥がれ落ちる。

    「……君は、僕が一時の衝動に任せて様々なものを棒に振るほど馬鹿じゃないことぐらいは知っていると思っていた」
    「そうだったか?」
    「君のように頑固で、自己中心的で、傲慢な性格破綻者を野放しにできる訳がないんだ」
    「俺の性格など、君の奇特さには劣るだろう」
    「ああ! その減らず口を黙らせてやりたい!」

     些細な挑発にも敏感に反応する。その不満足した芸術家のような表情が、いつかの思い出と重なって。
     ――僕はいつかあの霊廟のような偉大な建築物を建てて見せるぞ! 絶対に!

    「君は言ったな。僕が建てる建築を最後まで見る、と。だが、死者は理想的な観察者にはなれないだろう!」
    「結果的に死ななかった。それに、命を惜しんで計画を先送りにしていればもっと状況は悪化していただろう」
    「……本当に、君のそういう理性的なところが嫌いだ!」

     アルハイゼンは、全身で怒りを表現している彼の姿がまるで眩しいものであるかのように、目を細めた。

     アルハイゼンは、この世の何よりも、知識というものを愛している。
     故に、新たな知識が生み出される日を、あれからずっと、待ち続けているのだ。
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    Psich_y

    PROGRESS2024/2/11カヴェアルwebオンリー「Perfect Asymmetry 2」展示。

    遺跡探索中メラと入れ替わりでやってきた学生時代カヴェを持ち帰り甘やかすゼンと、情緒(と性癖)を滅茶苦茶にされている二人のカヴェの心が猛スピードですれ違ったりぶつかったりする話です。
    (未完:進捗展示)

    ※過去カヴェ+現カヴェ×現アル
    ※“メラ←→過去カヴェ”のため、カヴェの隣にメラが不在(重要)
    Won't be spoiler K-1

     カーヴェがこれまで経験してきた人生には、“最悪”と名付けられる出来事が既にいくつもある。そういった事実を鑑みたとしても。今のカーヴェの目の前に広がる光景は、間違いなく新たな最悪として数え上げられそうなものだった。
    「メラックをなくした?!!?」
    「手元にない、というだけだ。約束は三日だった」
    「本当に帰ってくるんだな?」
     妙に秘密主義なところのあるこのかわいくない後輩――アルハイゼンの、錆びついた沈黙に潤滑油をしこたま流し込み、どうしても調査したい遺跡があるらしいということを聞き出したまでは、多分、良かった。だから、問題はその後にある。……いや、“前”というべきか。まあ、前か後かはこの最重要じゃない。重要なのは、問題はそこにはないということだけだから。
    20174

    Psich_y

    MOURNING祈願でやってきた少し不思議なhorosy(ネームド)が新人妹旅人たちを草国までキャリーする話……になるはずだったものです。

    ※空放前提蛍放
    ※以前書いていたものなので、院祭以降の内容を含んでいません
    ※尻切れトンボの断片

    去年の実装時に細々書いていたものをせっかくなので供養。
    折角だから君と見ることにした その夜、私はパイモンの提案に従い、新しい仲間と縁を繋げられるよう夢の中で祈願していた。
     旅の途中で手に入れた虹色の種――紡がれた運命と呼ぶらしい、夢と希望の詰まった不思議な形の結晶――を手に、祈るような心地で両手の指先を合わせる。前に使ったのは水色の種だったけれど、此方の種はそれよりずっと珍しく、力のあるもののようだったから。
     ――今の私にとって、旅の進行はあまり芳しいものとは言えなかった。失われた力はなかなか戻ってこないし、敵はいつの間にかやたらと強くなってしまっているし、兄の情報も殆どなくて、どこへ行けばいいのかもあまり分からないし。今まで頭脳労働の面で散々兄の世話になってきていたために、私は旅のアレコレが得意という訳ではなかった。私が得意なのは、兄に頼まれたお使いのような頼まれ事を解決することだとか、ただひたすら敵と戦うことだとか、そういう部分で。仕掛けの解き方とか、工夫が必要な分野はこれまですべて、兄がどうにかしてくれていたのだ。
    3444

    Psich_y

    DOODLE自分の前世が要塞管理者だったと思い込んでいるやけに行動力のある少年と、前世の家族を今世でも探している手先の器用な少年と、前世で五百年以上水神役をしていた少女が、最悪な地獄を脱出し、子供たちだけの劇団を作る話です。
    ※無倫理系少年兵器開発施設への転生パロ
    ※フリリネリオ不健康共依存(CP未満)
    ※フリに対し過保護な水龍、に食らいつくセスリと弟妹以外わりとどうでも良いリn
    ※脱出まで。
    ※~4.2
    La nymphe et les bêtes Side: FSide: F

    「さあ! 僕についてきて。君たちがまだ見ぬ世界を見せてあげよう!」
     フリーナ、と。かつて歩んだ永い永い孤独な神生と、その後の自由な人生を通し、唯一変わらず己と共にあった響きにより己を再定義した少女は、指先まで魂を込めた右手をネズミ色の天井へ真っ直ぐピンと伸ばし、高らかに宣言した。
    「君たちはただ、僕という神を信じればいい」
     すべての意識を周囲へと傾ければ、ほら。息を呑む音まで聞こえる。フリーナは思い通りの反応に、少し大袈裟に、笑みを深めてみせた。
     目の前の小さな観客たちは、フリーナの燃えるような瞳の中にある青の雫しか知らない。いくら多くの言葉をかき集めて自然を賛美してみせたところで、生まれた頃から薄汚れた白灰色の壁に囲まれながら育ち、冷たく固い床の上で寝ることしか知らない、哀れな子供たちには想像すらできないことだろう。
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    Psich_y

    PROGRESS刑期延長病み囚人セスリが支配するBADifメロ要(洪水前)と正規パレメルのトイレの扉が繋がってしまったので、少し様子のおかしい通常セスリの勧めの下囚人セスリを七日間(中週休二日)で攻略する通常ヌヴィの話(予定)……の二日目。よしよし不穏シグリオ回。
    ※囚人リの世界はシグ→←←リオ( )ヌヴィ
    ※通常世界はヌヴィ→リオ
    ※旅人はsr
    ※~4.1
    ※呼び名捏造あり
     Day 2

    「公爵? そっちのリオセスリくんは、公爵なの?」
    「ああ」
     次に訪問したとき。ヌヴィレットを出迎えたのは、主不在の執務室でティーセットを広げ、お茶会を嗜んでいたシグウィンだった。
     彼女にねだられるまま用件を話せば、彼女は人のそれによく似た手で、彼女に合わせられたのだろう小さく可愛らしい柄のカップと小麦色の焼菓子を差し出してきた。
    「ごめんね、これしか用意がなくて」
    「こちらこそ、連絡もなく訪ねて申し訳ない」
    「謝らなくていいのよ。ウチ、ヌヴィレットさんの顔が久し振りに見られてとっても嬉しく思っているの」
     そう言って微笑むシグウィンの表情には、どこか翳りのようなものが見られる。ヌヴィレットとメリュジーヌの間の距離は、ヌヴィレットと普通の人間との間の距離よりもずっと近いから。彼女もまたこのヌヴィレットが彼女たちの“ヌヴィレット”ではないことを、よく理解しているのだろう。
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    Psich_y

    PROGRESS審判に失望しシグしか信用できなくなっている刑期延長病み囚人セスリが支配するBADifメロ要(洪水前)と正規パレメルのトイレの扉が繋がってしまったので、パレメルを洪水の巻き添えから守るため、少し様子のおかしい通常セスリの勧めの下囚人セスリを七日間(中週休二日)で攻略する通常ヌヴィの話(予定)……の一日目。
    ※囚人リの世界はシグ→←←リオ( )ヌヴィ
    ※通常世界はヌヴィ→リオ
    ※旅人はsr
    ※~4.1
    「ヌ、ヌヌヌ、ヌヴィレット様、大変ですっ!!」
     慌てた様子のセドナが執務室の扉を叩いた時。丁度数分前に決済書類の山を一つ崩し終え小休憩を取っていたヌヴィレットは、先日旅人を訪ね彼の所有する塵歌壺で邂逅した際受け取ったモンドの清泉町で取れたらしい“聖水”を口にしながら、これは普通の水と何処が違うのだろうか、と、時に触角と揶揄される一房の髪の先がパッド入りの肩にベッタリつく程大きく首を傾げていた。
     しかし、日頃から礼節を重んじるしっかり者の彼女がこれ程までに慌てて自身の元へやって来る程の報告となれば、再度首を傾げることもあるだろう。丁度傾げていた首の角度をわざわざ戻すこともない、と判断したヌヴィレットは顔を少々傾けたまま、扉の前で律儀に自身の答えを待つメリュジーヌに入室許可を与えた。
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