Savon 魔槍の柄を固定しなおして、ラーハルトはすぅと息を吐いた。
研ぐ手を止めないまま、少しだけ力を緩める。
しゃりん、という涼やかな金属音と、不規則に響く水音が混じって、ちょっとした和音を奏でている。
小さな宿だ。相棒が湯を使い始めると、温かな蒸気がラーハルトが腰かけるベッドまで忍び寄ってきた。
甘く煙たい、高貴な果物のような香り。
「何をそんなに見ている。珍しくもないだろう」
大都市、というほどの規模ではないが、比較的新しい商人の街だ。あのベンガーナの百貨店をやや縮小したくらいの、大型の店舗がそびえていた。
人々は着飾って足を運び、キラキラ輝く贅沢品を次々に手に取って、満たされた微笑みと共に帰っていく。
2344