寒い朝には 冷めたコーヒーは、不味い。今、俺の目の前にはコーヒーの入ったマグカップが置かれていた。冷めきって嵩が減ったことを示すように、水面から少し上の壁面には茶色の輪が残っている。それは、このマグカップに熱々のコーヒーが注がれてから、かなりの時間が経過していたことを物語っていた。今朝は、今季最高に冷え込むって言ってたもんな。とは言え、熱いシャワーを浴びたばかりの俺には、この寒さが心地よく感じられた。俺はTシャツとトランクスだけを身につけて、椅子へ座った。
キッチンにある白木のテーブルで遅めの朝食を取ろうとしていた俺は、目の前にあったコーヒーを一口だけ含んだ。室温と同じになったコーヒーは、まるでアイスコーヒーのように冷たくなっていた。だが、その風味はアイスコーヒーと呼ぶには程遠く、冷めたせいで味も風味も薄く感じられた。それでも舌の上に残るガツンとパンチの効いた苦味で、中身は俺好みの深煎りローストのコーヒーだったとわかった。きっと、淹れたてだったら美味かっただろう。
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