ライジャン 新任の高校教師のライナーは少し遅い仕事を終えて駅の改札を抜ける漸く週の終わりの金曜日の夜だが特に予定もなく冷えた体にブルりと身を震わせておでんでも買うか、と駅前の街に足を踏み出す。
「——先生、!」
どこかから聞こえた声に咄嗟に辺りを見回す自分の条件反射に呆れながら一つ息を吐くとこちらへと走ってくる私服姿の生徒、ジャンが近付いてくる。ジャンは受け持ちの生徒でもなく、特に何かしら繋がりはあるわけでは無いけれど何故だかライナーにやたらと懐いてくる言ってしまえば可愛い生徒だ。
「——ジャン、お前何してんだ?」
「先生のこと待ってた、前にこの辺て言ってたろ」
「待ってたって、…お前いつから待ってたんだ」
下校してからもう随分時間は経っているはずで駆け寄って来たジャンの鼻先は少しばかり赤い、それが余計に時間の経過を感じさせて思わずライナーは眉を下げて自らが来ていたジャケットを脱いで差し出す。
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