アザレア(1) 耳に届いた物音で、意識がゆっくりと浮上する。ぼんやりと目を開けた先にあるのは見知らぬ天井、カーテンを透かして入り込む朝の光。
瞬きをした瞬間、世界がひっくり返るような心地がした。ぐわんと揺れる視界と、頭が割れそうな痛み、胸のあたりの気持ち悪さ。
「うえ……」
まごうことなき二日酔いである。何度も経験したことのある、どうしようもない体調の悪さ。むくりと体を起こすと眩暈がさらにひどくなるようだ。肌に触れるシーツの感触から、どうやら裸で寝ていたらしい。
ここはいったいどこなのかと、彼は周囲を見回すために体を起こす。途端、既に頭の中にあった違和感はことさらに強く主張を始めて、呻き声と共に彼は再びベッドに沈みこんだ。
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