「君が好きだ」
開闢門は開口一番そう告げた。
大学の中庭、酷暑を過ぎた並木道にはひんやりとした心地よい風が音を立てて葉を撫ぜる。
「……今、何と?」
「君のことが好きだ、神宮寺。君の応えを聞かせてほしい」
「えっ……」
寂雷は考え込む。彼のことは嫌いではない。
入学当初から他とは一線を画した機械工学の天才。教授はもとより、数々の研究発表でその業界の著名人から一目置かれてもいる彼は、いわば天才故の孤独感も心得ているのか自分と話が合うこともしばしばだった。
その能力を鼻にかけることもなく、常に紳士的で明朗な彼の周りには友人も多い。彼の人徳が成せる業といえよう。
その彼が今、目の前で自分に好意を告げている。
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