明日世界が終わるなら「ねえ、明日世界が終わるなら、何がしたい?」
ありきたりな質問だとは思った。無人島にひとつなにか持っていくなら〜とか、100万円手にしたなら〜とか、そういった類の。現実的ではない話に、正解など存在しない。だが、目の前の享楽主義者はそんな答えなど求めてないのだろう。ふと、付き合ってやることにする。
「急に言われても思いつかないけど、でもまあ、いつも通りすごすんじゃねえの?」
「んー、ちがうよ、そうじゃなくって。君の願望が聞きたいの。あるだろ、童貞卒業! とか」
「それを俺が言っててめえは喜ぶのか?」
「悲しみと怒りとその他諸々の真っ黒な感情で死にます」
「アホのひと?」
既に想像して死にかけてるアホは放っておく。ともあれやりたいこと、か。そもそも自分に何かを施す、だとか自分のために何かをする考えることが苦手な俺に聞くものでもない気はする。きっと面白い回答はできないし、それこそありきたりな答えしか導き出せない。頭に浮かんだソレを素直に伝えるのも、なんだか小っ恥ずかしいものであった。
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