月を待つ君へ月から帰還したコドウは、全力で走っていた。少しだけグリダニアへ帰還する時間をもらい、双蛇党の転送網利用券を使い、転送後、マーケットへの道を全力疾走。途中、知り合いとすれ違った気がしたが、ぶつからなかったから良しとする。
スプリントを使い、リテイナーベルの前。飛び付くように鳴らすと、ララフェルの男性が現れた。
「お?お帰りコドウ。」
「……すみませんドドクさん、間違えました。」
そうだと思ったと愉快そうに笑う彼は、コドウのリテイナーのドドク。正座し謝るコドウを、気にするなと撫でる様子は、どこか父親のような雰囲気がある。
「ウルシに用だろう?早く呼んでやりな?」
「誰かに捕まってるんですか?」
「まあ、うん。先日、大声で通信していたからね。みんな知ってるさ。」
「??」
意味ありげに笑うドドクを帰し、改めてリテイナーベルを鳴らす。今度こそ、アウラの男性を呼んだ。
「ウルシくん!!」
「な"?!いきなり抱きつくn」
「ウルシくん、大好き!!」
「へ?!は??」
目の前に現れたウルシに飛び付き、腰にしがみつき、コドウは思いきり叫んだ。マーケットに響いた声に、ウルシは完全にフリーズする。そんなウルシを気に止めず、しがみついている腕の力を強め、コドウは言葉を続けた。
「私ね、ウルシくんのことが、大好き。ずっと一緒にいたい好き。こうやってると、好きって気持ちと、ほっとする気持ちになるの。だから、きっと特別な好きだよ。」
固まったままのウルシを、コドウは見上げる。驚いて口が開いたまま、ウルシは固まっている。彼の言葉が帰って来ないのではないか。コドウがだんだんと不安になって、腕の力を弛めた。
その瞬間、ウルシがコドウの肩を掴み、腹から叫んだ。
「コドウ、その、お帰り!!じゃなくて、いやあってる、あ、俺もコドウが好き!!だ!!よかった、本当に、無事で……。」
「ウルシく、ん?」
ウルシの声から勢いが無くなってきた。彼の目も、何だが揺れている気がする。
「俺の好きな気持ちを使って、コドウが帰ってくるなら……いくらでも、使おうって……。両想いじゃなくても、俺、いいやって……俺……」
「ん……両、想い?」
「え?今、俺達は両想いなんじゃねーの?」
今度はコドウが固まった。真っ白な肌が赤くなっていき、鱗がない部分がほぼ染まる。
「コドウ?」
「ひゃい……あ、だめだ。」
「何が、だめなんだ?」
「……どきどきが、止まらない。」
普段の勢いが無くなり、コドウは手で顔を覆った。隠しきれていない首も赤い。どう声をかけたらいいか迷っているウルシが、蹴り上げられるまであと数秒。