「僕が忘れられる側でよかった」
ポツリとつぶやかれた言葉に、オレは顔を上げる。視線が合うと、そいつは少しバツが悪そうに笑った。
「前に君と一緒に解決した事件でさ、僕は自分の記憶を犠牲にして、人を助けようとしたことがあって……また君と出会えたことも、手を繋ぎあえたことも、たくさんの仲間達のことも、全て忘れるって聞かされて、それでも僕は迷わず手を伸ばした」
そんなことをさらりと言うので、オレは思わず顔をしかめた。ガキの頃からちっとも変わっていない。
「その時は、僕が記憶を失っても、アーロンや仲間達が失くしたものを持っていてくれるし、何度だって絆を結び直せるって思ったけれど……やっぱり君に、悲しい思いはさせただろうから」
558