プロジェクト・ハッピーエンド(サンプル) 街のすべてが赤く染まっていた。高層ビルの隙間に太陽が沈んでいく。眩しいほどの赤に染められながら、ドナテロが立っている。
その唇から告げられた言葉にラファエロは息を呑む。その意味を理解して、赤一色の視界が黒く染まる。
足から力が抜ける。二人きりの屋上で、ラファエロは膝から崩れ落ちた。
──彼の計画が、失敗した瞬間だった。
兄弟と競うのが好きだった。これで年が離れていたらまた違ったのだろうが、なにせ同じ年頃が四人もいるのだ。何をするにも誰が一番かと盛り上がっていた。
しかし年齢を重ね、それぞれの得意不得意がはっきりしてくると何でも競い合うということはなくなった。
腕力でラファエロに敵う兄弟はいないし、集中力や判断力はレオナルドが優れている。ミケランジェロは、自覚的にやっているのかわからないが相手の意表を突くのが抜群に上手い。
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