Choose By Myself「ねぇ、自分のしたことが意図せず誰かを傷付けているとしたら、どうする?」
消灯した暗い部屋。ベッドの中、彼に背を向けたままマーガレットは言った。ライナーはその背中をちらと見た後、天井を見つめた。返事はしばらくなかった。
「……そんなの、よくあることだろ……」
「ああ、よくあることだ」
マーガレットはすぐに言い、長々と続ける。
「今この瞬間も世界中で起きてるだろう。残酷なものさ。自分に悪気がなくても、人は傷付いてしまう。何かの誤解かも知れないし、あるいは仕方ないことかも知れない。でももし、自分の何がその人を傷付けたのかがわかったら、どうする?」
「……」
「私はさ、それが譲れないものだったら、譲らないよ。たとえ誰かを傷付けたとしても、申し訳ないけど、それをやり続ける。好きだからだ。でも、譲ってもいい、と思えたら?やっぱりそれって、そのことをあんまりそこまでは好きじゃなかったってことだと思う。たとえその人がいなくても。つまり誰かを傷付けたくなくてという理由ではなく、元から自分の中でそうでもなかったってことなんじゃないかって」
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