高校の入学式の日、九年ぶりに再会した彼女にまた昔のように名前で呼んでくれるかと期待したものの、彼女は俺を「風真くん」と苗字で呼んだ。が、程なくして彼女は「やっぱり玲太くんは玲太くんだから」と昔のように「玲太くん」と呼ぶようになり、俺も高校入学以来苗字で呼んでいた彼女をまた名前で呼べるようになった。
お互いをまた名前で呼び始めるようになってから少し経ったある日、
「玲くん」
と、彼女は俺を呼んだ。
「何だよ、急に。本多みたいな呼び方して」
本多は俺たちの共通の友達の一人だ。最近は俺たちに本多、七ツ森を加えた四人で行動することも増えている。
「そう、行くんが玲太くんのことリョウくんって呼ぶでしょ? ニックネームで呼ぶのもいいなって思って」
2393