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    ぽいぴくお試しかつ短めのネロカイ小説
    子ども扱いしてるんだったら付き合えないよね。みたいな発想からできたお話
    ネロカイが付き合うだけ

    #ネロカイ

    若さは利用して然るべきカインは少し複雑な気持ちで魔法舎の廊下を歩いていた。
    最近、年上の魔法使いたちに子ども扱いされることが増えた。確かに、数百年もしくは千年、二千年と生きている魔法使いたちに比べればカインは若いかもしれないが、それでも酒も飲めるし結婚だってできる。そう言うとさらにほほえましい目で見られたり、からかいが加速したりするのでもう最近は黙るしかなかった。魔法舎の廊下を歩いて、キッチンまでたどり着くとカインは目当ての人物に声をかけた。
    「なあ、ネロ…コーヒーを淹れてくれないか?」
    「ああ、騎士さん。ってまたその様子だと、誰かにからかわれでもしたか?」
    カインの少し元気のない様子にすぐに気づいて、ネロは少し困ったように笑う。ほかの長生きの魔法使いと違って、ネロはカインをからかわずにいてくれる。ネロにとっても、きっとカインはまだまだ若いと思うはずなのにこの優しい魔法使いはそれを表に出さないでいてくれた。たまーに年上の魔法使いの余裕を出して来たり、ブラッドリーに乗っかりはするがそれでもカインが嫌になる前にやめてくれるので、最近はからかわれてうんざりするとカインはネロのところに来ていた。
    「ブラッドリーが、俺をまたからかってきて、そしたら偶然その場にいたほかの年上の魔法使いまで子ども扱いしてきて…すっごく恥ずかしかった!」
    思い出すだけで羞恥で顔が赤くなる。
    「まあな…。俺も昔ブラッド……リーくんみたいなやつに、死ぬほどからかわれたもんな…」
    「ネロも?」
    カインが聞き返すと、ネロは何かを誤魔化すように慌てて頷いた。
    「まあ、それくらいの年の魔法使いのある意味宿命みたいなもんだからな。まあ、この魔法舎の半分以上は年を取った魔法使いだし、うんざりするのも分かる…ああ、騎士さん悪い」
    「どうした?」
    カインが聞くとネロは困ったように眉根を寄せる。やってしまったとでも言うようにばつの悪そうな顔をしているネロに、カインは首をかしげる。
    「コーヒー、切らしちまってた。もしよかったら、俺の部屋に最近市場で買ったやつがあるから、それでもいいか?」
    「え?でも、それはネロの私物じゃないのか?そんなものを俺が飲んでもいいのか?」
    「いいんだよ。珍しいコーヒー豆を見つけてつい買ったんだけど、一人で飲むのももったいなくてさ。もし騎士さんがいいなら」
    カインはネロがカインが気遣わなくても良いように、気を付けて話してくれていることが分かった。たとえもしここでカインが断れば、それ以上は誘わずに別の飲み物でも出してくれるのだろう。
    (…俺は、ネロのこういうところが好きなんだよなあ)
    一緒にいるとホッとして、さりげない優しさや気遣いは魔法舎の中でも一番だろう。カインだってモテる自信はあるが、本当に一番モテるのはこういう男なのではないかと思う。
    しかし、多少なりとも恋愛経験があるカインには、ネロの優しさが誰にでも与えられるものだと知っている。誰かを傷つけることを、そして不愉快にさせることをネロは望まない。
    だから、自分は勘違いしないようにしなくては。
    そこまで考えて、カインはハッとする。
    (うわ、これじゃあまるで、俺がネロのことを好きになりそうみたいじゃないか!違う、ネロはそういうのじゃなくて…)
    とはいえ、多分落ちてしまうのも時間の問題であるような気がしていた。それくらいに、ネロは魅力的な男だった。一人でころころと表情を変えていると、ネロが心配そうに見てくる。
    「騎士さん?大丈夫か、嫌なら、無理には…」
    カインの気を悪くしたと思ったのか、申し出を引き下げようとするネロにカインは慌てて否定する。
    「いや、ごめん。何でもないんだ。…もしよければ、俺にもそのコーヒー、飲ませてくれないか?珍しいコーヒーなら、俺も気になる」
    そう言うと、ネロは少しだけ嬉しさをにじませて笑った。その顔がいつもより幼く見えて、カインはうっかりときめいたが何でもないと思い込むことにした。


    「うわ、このコーヒーうまいな!」
    ネロの部屋についてすぐにネロが入れてくれたコーヒーは、カイン好みの味でカインは思わず声を出す。ネロはニヤリと笑った。
    「だろ?南の国の高山で育てられる豆だから、基本的に南の国内でしか基本的に流通しないものなんだが、昨日市場に行ったら売ってたから買ったんだよ。昨日試しに少し飲んだら、騎士さん好みの味だなって」
    ネロは料理人ゆえか、魔法舎内の魔法使いの好みの味をちゃんと覚えている。しかし、それだけじゃない。
    「いや、同じ豆で俺がコーヒーを淹れたとしてもここまでうまくならないよ。俺、ネロが入れてくれるコーヒーが好きなんだ」
    「いや、まあ…淹れる奴で確かに味も多少は変わるけどさ。そんなに面と向かって言われたら照れちまうな」
    そう告げるネロの顔は少し赤いので本当に照れているようだ。ネロは素直な誉め言葉に弱い。リケの純粋な料理への称賛にいつも照れていることをカインは気づいていた。
    カインはコーヒーを飲みながら、ネロの部屋を見回す。何気にネロの部屋に来ることは何か夜食を作ってもらったりする時くらいで、改めてきたことはなかったかもしれない。
    部屋というよりは厨房を部屋に改装したという方が正しいような気がするが、この部屋にいるネロはすごくなじんでいる。すこし何かのハーブやスパイスが混じったような香りもやけに落ち着くし、カインが好きな香りだと思った。思った以上にリラックスしてしまい、ぼんやりとしているとネロが話しかけてくる。
    「騎士さん?なんだか、今日はやけにおとなしいけど体調でもよくないのか?珍しいな」
    「ああ、いや、ネロの部屋はやけに落ち着くなって思って…」
    あまり話さないのもネロに失礼かと思い、何か話題を探す。
    「あ、えっと、…ネロもやっぱり俺のことを子どもだって思うか?」
    キッチンでの話題を持ち出すと、ネロは少し驚いた顔をした。唐突だっただろうか。しかしパッと思いつく話題がこれだったので仕方がない。
    「…いや、思わねえかな」
    一拍遅れてネロが返す。その言葉にカインは素直にうれしくなる。
    「本当か!?」
    もし、ここでネロに少しでも思っていると言われればカイン落ち込んでいたかもしれない。多分、他の魔法使いに言われるよりもネロにそう思われたくなかった。その理由が分からないまま喜んでいるとネロがくすくすと笑う。
    「まあ、多分ほかの奴らが騎士さんを子ども扱いするのは、その素直さにあると思うけどな」
    「どういうことだ?」
    カインが聞き返すと、ネロは少し昔を思い返すように遠い目をする。
    「まあ、魔法使いも長く生きるとひねくれるんだよ。ずるいことを覚えるっていうか…これから生きるための処世術みたいなもんだな。多分ほかの奴らにも言われているだろうが、50年くらい生きるとその頃には、人間と魔法使いっていうのは嫌でも違いが分かってしまう。寿命とかな」
    その話を聞いて、カインは栄光の街にいる家族や友達を思い出す。カインの周りにいたのは全員人間だった。いつか、魔法使いである自分を置いてみんな先に死んでしまうのだろう。しかし、それは知識として知っているだけで、カインには未だ実感がわかなかった。それでも、考えるだけで少し悲しくなる。そんなカインの様子に気づいて、ネロは続ける。
    「まあ、まだ実感なんてわかないだろうな…。それに、騎士さんは50歳になってもひねくれたりしなさそうだ。いつまで経っても、正々堂々と立って戦ってそうだな」
    明るい調子で続けるネロに、カインは笑って返す。
    「ああ、そうだな。50歳になった自分なんて全く想像はつかないが…そうあればいいなと思う」
    「まあ、俺の場合育ちもあんまりよくないし、割と周りに魔法使いがいる環境で育ったから、こずるいことを覚えるのもちょっと早かったけど。それでも50歳になるまで一人前とは認められなかったな…」
    まるで呆れたような口ぶりだが、幸せな日々を思い返すように、ネロは小麦色の瞳をきらめかせた。こういう顔を見ていると、ネロも自分よりはるかに年上なのだとカインは感じる。
    「ありがとな、ネロ。ネロがそう言ってくれるだけで嬉しい。こんなところを見てると、まったくずるそうなやつには見えないのにな」
    ネロはカインの言葉に、少しだけ意地悪く笑うとカインの赤い髪に触れる。そして顔が近づいてくる。
    「いや?俺は結構ずるいぜ?」
    いつもとは違うネロの様子に、カインは戸惑う。あと少しで顔に触れそうというところで、ネロが止まる。にやにやと笑ってはいるもののその顔は何とも言えない色気を帯びていて、カインは色っぽいなと素直に思った。
    「…例えば?」
    きれいな顔をまじまじと眺めながら、カインが聞いてみると、ネロは耳元で囁くように言った。
    「…例えば、ずるいことも知らないまだ若い魔法使いの気に入りそうなコーヒーを用意して、わざと部屋に連れ込んでみる、とか」
    その言葉を脳内で反芻して、カインはそれが自分のことだと気づく。ネロはなおも続ける。
    「うっかり好きになっちまった魔法使いに、他の魔法使いとは違う扱いをして、優しくして、自分のほうに来るように仕向ける、とかな」
    その言葉でカインの顔は決定的に赤くなった。その様子を見て、ネロは声を出して笑う。カインがハッとしてネロの顔を見るとその顔はいつも通りで、楽しげに笑っている。カインはからかわれたのかと思い、羞恥と怒りでさらに顔を真っ赤にする。
    「ネロ!」
    「ははっ、ごめんな。騎士さんがかわいくてついからかっちまった。…でも、俺は誰にでも優しいわけじゃないし、騎士さんが好きなのも、本当だよ」
    その言葉にやけに実感がこもっているように感じて、カインは目を見開く。
    お詫びに何か出すよとネロがキッチンに歩いていこうとするのを、カインは腕をつかんで引き留める。ネロは不思議そうにカインを見た。
    「?騎士さん、どうした?怒ってるなら、謝るからさ…」
    今を逃したら、ネロはまたのらりくらりと躱してしまうような気がする。それがずるさだというのならば、その前にまだそのずるさを知らないカインが捕まえてしまえばいい。カインははっきりとネロに問う。
    「なあ、ネロ。その、好きはどういう意味の好きなんだ?」
    その言葉に、ネロの瞳が一瞬揺れるのをカインは見逃さなかった。カインはその期を逃さず畳みかける。
    「俺は、別に、恋愛的な意味でも構わないぞ。というか、多分そっちの方がいい」
    「えっ」
    間の抜けた声と同時に、ネロの顔が朱に染まった。カインはしてやったりとにやりと笑う。すると、ネロは降参というように両手を上げる。
    「ああ、騎士さんにはかなわねえな…」
    諦めたようにネロがこぼして、そして笑う。
    「…騎士さん、俺でよければ、付き合ってくれねえか?」
    こういう時でも自分を下げるネロをちょっと不満に思って、首を振る。そして動揺するネロに向かって笑いかけた。
    「いや、俺はネロがいいんだ。よろしく頼む!」
    ネロは一瞬戸惑った顔をして、そして今まで見たことがないくらい嬉しそうに笑った。カインが思わず抱き着くと、ネロは声を上げたが、ふらつくことなくカインを支える。部屋の匂いよりも優しい香りがカインを包む。
    「…やっぱり、俺、ネロの香り好きだな」
    無邪気に言い放つカインに、ネロは何かに耐えるような不思議な顔をした。
    「多分、それ何も考えずに言ってるんだろうな………。本当に、若さってすげえな…」
    そう言いながらも、ネロは嬉しそうに笑っていた。
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    はんどる

    DOODLE現パロ ラーメン屋の店員のネロと会社勤めのカインのカプ要素薄めのネロカイ ネタだけあったので気晴らしに書いた
    現パロネロカイ小話カインは人が大好きで、基本的に誰とでもうまくやれる。たくさんの人とかかわっているうちに、カインは相手が自分のことをどう思っているのか、なんとなく感じることができるようになった。そして、ありがたいことにカインは自分のことが好きだと思ってくれている人に囲まれていた。
    しかし、たぶん自分のことが嫌いなんだろうな、と感じる人ももちろんいて、その日はその自分のことが嫌いだと思っているらしい上司にこっぴどく叱られた日だった。いつもなら、仕方ないと流すところだが、ここのところ仕事が立て込んでいて疲れていたため、カインは暗い気持ちを引きずったまま帰路についた。
    帰って夜ご飯を作るのも億劫だったが、何か食べたいというものもなく、ただ一歩が重いと感じながらも帰り道を進んでいた。そんな時、いつもなら素通りする小さなラーメン屋がなんとなく目に留まった。比較的オフィス街に近いためか、夜遅い時間までやっている店だった。この間休日に偶々店を前を通った時に、少し並んでいたからおいしいのかもしれない。少し迷ったが、ひらひらと風にはためく赤い暖簾に誘われるように、カインは店の中に入った。
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    DONEぽいぴくお試しかつ短めのネロカイ小説
    子ども扱いしてるんだったら付き合えないよね。みたいな発想からできたお話
    ネロカイが付き合うだけ
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    「なあ、ネロ…コーヒーを淹れてくれないか?」
    「ああ、騎士さん。ってまたその様子だと、誰かにからかわれでもしたか?」
    カインの少し元気のない様子にすぐに気づいて、ネロは少し困ったように笑う。ほかの長生きの魔法使いと違って、ネロはカインをからかわずにいてくれる。ネロにとっても、きっとカインはまだまだ若いと思うはずなのにこの優しい魔法使いはそれを表に出さないでいてくれた。たまーに年上の魔法使いの余裕を出して来たり、ブラッドリーに乗っかりはするがそれでもカインが嫌になる前にやめてくれるので、最近はからかわれてうんざりするとカインはネロのところに来ていた。
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    現パロネロカイ小話カインは人が大好きで、基本的に誰とでもうまくやれる。たくさんの人とかかわっているうちに、カインは相手が自分のことをどう思っているのか、なんとなく感じることができるようになった。そして、ありがたいことにカインは自分のことが好きだと思ってくれている人に囲まれていた。
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    帰って夜ご飯を作るのも億劫だったが、何か食べたいというものもなく、ただ一歩が重いと感じながらも帰り道を進んでいた。そんな時、いつもなら素通りする小さなラーメン屋がなんとなく目に留まった。比較的オフィス街に近いためか、夜遅い時間までやっている店だった。この間休日に偶々店を前を通った時に、少し並んでいたからおいしいのかもしれない。少し迷ったが、ひらひらと風にはためく赤い暖簾に誘われるように、カインは店の中に入った。
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