三文芝居のセリフにすらならない三文芝居のセリフにすらならない
「いいか、これは命令だ。……絶対に俺のそばから離れるな」
はい、カット!という監督の声を聞き、俺はフーッと大きく息を吐いた。スタッフからミネラルウォーターを受け取り、一口飲んで喉を潤す。
「月島、良かったぞ。女性ファンが増えるんじゃないか?」
「……いや、オッサンのキメ顔なんて需要ないですよ」
監督の鶴見さんに肩をポンポンと叩かれ、演技を褒められたが、俺はこのシーンを見た視聴者から大量のクレームが届くんではないか?と不安に襲われる。別に批判があるのはいいのだが、あまりに不評すぎるとスポンサーからの印象が悪くなってしまう。そうなると、この道で食っていくのが大変になる訳だ。
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