140ssまとめ①『父の日』
普段なら飲み過ぎだとか口煩い暁人が今日は俺が要求する前からビールを用意し、笑顔で酌をしてくれる。
「お疲れ様。いつもありがとう、KK」
それが本来は俺に向けられるべきものでは無い事は分かっている。分かっていても俺はそれを受け入れてしまう。こんなにも邪な気持ちを抱えたままで。
玄関のドアに手をかけた瞬間、向こう側から押し開かれる。間一髪避けたが、危ねぇじゃねえか、と文句を言おうとすると
「お帰りなさい!KK!もうすぐ帰って来そうな予感がしたからそこまで迎えに行こうと思ったんだよ」
嬉しそうな笑顔に一先ずそれは呑み込んで、暁人をキスで室内に押し込んだ。
酷暑の外から帰ると部屋は良く冷えていて暁人が冷たい麦茶のグラスを差し出す。受け取る時に触れた指先がひんやりと心地好く、一気に麦茶を呷ってその勢いで抱き締める。「冷やし暁人」呟くと「すぐに熱くなるよ」と赤くなった耳の下から聞こえた。
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