やるよ、お前に 二十年前、ロナルドくんが入院した時、私は見舞いに行かなかった。その時の怪我は生死をさまようものではなく、単純な足の骨折だった。ただロナルドくんは躰を強く打ち、病院へ運び込まれた際には意識がなかった。私は救急車に同乗し、意識のない彼が処置室に運ばれるのを見届け、いくばくか説明を受けてから帰宅した。それ以降、病院に顔は出していない。
退院した彼は松葉杖をついて帰宅して決まり悪そうだった。同時に少しすねたような目でじっと私を見て「……顔くらい、見せに来いよ」ぽそりと聞こえるか聞こえないかくらい小さな声で呟いた。
あの時、キレなかった私は世界中から称賛されてもいい。
けれど真実を伝えるのは癪で、あいにく私は暇じゃないんだ、暴れん坊の五歳児の世話までできん、と皮肉をこめて誤魔化した。だってきっとあの時のロナルドくんには、私の気持ちなんて理解できなかったに違いないから。わかりやしない。だからそれでよかったと思っている。
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