バニとタ”リ 1「一億出そう」
従者の名を呼び、パチンと指を鳴らして男は言った。
アイボリーホワイトの肌を彩るのは、砂色の睫毛とサラサラとした猫毛の髪。
目尻は下がり気味で、瞼が上下に開いて現われるのは、同じ色合いでやや濃い目の瞳だ。
口調も尖りなく柔らかで、耳に心地よい。
笑みも相まって、全体的に色素が薄く線が細い。
「オトンジャ、カルエゴ君の前に出してあげて」
うねり髪の従者が、携えていたアタッシュケースをテーブルに置く。
重みと頑丈さを響かせ、ロックが開かれた。
「これでいいかな?カルエゴ君」
目の前に示されたのは、皺も折り目も無い紙幣の塊だ。
ソファに深々と身を沈めていたカルエゴは、ゆっくりと身を乗り出し腕を伸ばした。
ケーズにぴっちりと敷き詰められた札束の一つを掴み取り、帯を解き、慣れた手つきでバラリと開く。
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