・序
しばらく発動していなかった千里眼が、断片的に映像を映し出す。灰色の空に、窮屈で息苦しい街並み。我が国とは違い、何とも生きづらそうな世界だと傍観していると、映像は突如ぶつりと消えてしまう。そして映写機のようにまた別の映像を映し出す。
「あれは……」
一人の少女が歩いていた。見目は質素だがどこか上質な布地に身を包み、四角い物を腕に下げてカサカサを音を立てる見たこともないような白い物を手に持って、ただひたすらに暗闇の中を歩く。だが空は闇に包まれているのに、辺りが妙に明るいのは本当に今が夜なのかと疑うほどだ。
「チッ、ノイズがひどいな」
久方ぶりの発動の影響だろうか、ホワイトノイズが映している映像の邪魔をし、歩いていた少女の姿を追うことができない。あれは誰なのか。なぜ己の千里眼はこの少女を映し出すのか。理由は全くと言って見当がつかないが、その少女には一際目立つものがあった。
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