来栖暁に育てられたあけちごろうくんの話通りがかりの花屋で買った花束を母の墓石の前に置いて、それを見下ろす。
赤色が好きだと言っていた母は、いつも僕の目を見て綺麗な色だねと褒めてくれていた。だから今日持ってきた花も赤色のものを選んでもらった。
………………
カバンから取り出したアルバムを開く。
そこには幼かった頃の自分が楽しそうに笑っている写真が沢山収められている。これは全て暁さん──もとい蓮が撮影したもの。
アイツが消え、その存在が無かったことにされた今は、蓮ではなく蓮の代わりに現れたあの女性が撮影したものということにはなっているが、これは間違いなく蓮が撮影したものだ。アイツは僕の写真は親バカレベルで沢山撮っていたくせに自分が映るような写真は一切撮らなかった。今思うと、こうなることを最初から知っていたからなのだろう。
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