ついろぐつぐみが前から行きたかったという甘味処に来た二人。 クリームぜんざいが食べたかったらしく、幸せそうな表情で匙を動かしている。
「弦一郎さん、あーん」
それを眺めていると物欲しげにしていると思われたのか。急に一口差し出された。 周囲の目を気にして一瞬固まった。
「んふふ、弦一郎さん大好き……♡」
まだ目が覚めきっていないのか、寝起きのつぐみに甘えられる。 滑らかで弾力のある綺麗な頬が顔に擦り付けられている事実を頭が飲み込むのにかなり長いことかかった。
「好き、すき」
今日が休みでよかった。 動ける気がしない。
弦一郎さんはいつも早寝だけど、今日は特にお疲れだったみたいでリビングのソファで寝てしまっていた。 風邪ひかないように掛け布団を掛けたけど、足りるかわからない。 思い切って隣に潜り込んでみた。 狭いソファから落ちないようにするとぴったり身体が密着する。 温かいし、このまま寝ちゃおうか。
実家の犬にじゃれつかれて床に押し倒されるような格好になった。
「つぐみ! 大丈夫か!?」
途端に血相を変えた弦一郎に助け出される。 つぐみとしてはいつものことだったが、強く抱きしめてもらえるのが嬉しくて何も言わなかった。 ただの心配からの行動ではないことを知るのはもう少し先のこと。
つぐみの頬に口づけを、してみたい。 だが唇を奪う時とはまた違う難しさというか緊張感がある。 悶々とするうちに今日もまた別れの時がきてしまった。
「弦一郎さん」
名前を呼ばれそちらを向くと、背伸びしたのかつぐみの顔が近づいて頬に口を当てられた。 頭が真っ白になった。
「つぐみ……」
その朝は珍しく弦一郎さんがお寝坊だった。 夢の中で私を呼びながら、現実の私をぎゅっと後ろから抱きしめてくる。 大きくてあったかい体に包まれて嬉しいけど、何回も夢の私を呼ぶからちょっとだけ寂しい。 どんな夢見てるんだろう。 朝ごはんの時聞いてみよう。
つぐみを膝の上に乗せて、結婚関連の雑誌を一緒に見る。 共に生きる未来の話をすること、その未来を心待ちにする彼女の笑顔の愛しさにたまらない気持ちが溢れ、思わず腕の中に入れていた。 あの夏何かが違えば、まだ知らなかったかもしれない心。 その心と幸福をくれたつぐみを永遠に守ると誓った。
弦一郎さんとのキスはとても気持ちがいい。 ただ唇を合わせるのも、ちゅって音を立ててするのも、お互いの唇を舐めあうのも、舌を触れ合わせるのも。 ほっぺや首筋や、他の所にするのも全部……。 そして今、扉が閉まる直前またキス。 披露宴会場の盛り上がりをかすかに聞きながら、手を繋いだ。