「夕月夜と地上の星」
──もう月が出てる
瞑想を止め 見上げた空に
ひとつ。
誰かが置き忘れたように
ぽかり。
…月が、浮かんでいた。
「…そろそろ今日の寝床を探すかな。」
少女の呟きに応える者はいない。
ほんの少し前までは常にワイワイと騒がしく、隣に誰かの温もりがあるのが当たり前だったのだが……
魔王を倒し、勇者を見送り、人間を知る旅に出た今。
魔法使いフリーレンは一人だった。
あのやかましい日々がウソのように。
「…似てるね。」
…そっと、一人ぼっちの月に向かい
少女はささやく。
──私みたいだ
夕暮れにあてどなくぷかりと浮かぶ月は
彼女と同じ。
自由で気ままで、そうしてどこまでも……孤独だった。
深い森のなか供もつけず、月と同じようにたった一人泉の中央に佇む魔法使いの影は
2020