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    nantonac64

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    漫画用シナリオ

    【オリジナル漫画】『these stones』時計編 シナリオ5漫画用シナリオ


    [ササラギ小隊の厨房。二人の隊員が何かをしている。一人がタッパーを開ける。]

    these stones

    ???「ヴルちゃん、見てよ。」
    ???「グラタンがしっかりと冷凍されてる。ジーニアスもたまにはいいもの作るよね。」
    ヴル「ああ、全く以てその通りだ。」
    ヴル「いつもこれならばよいのだがな。」
    ???「そして、これをレンジってやつに入れれば……」
    ヴル「いつでもマッキンリーの料理が食べられるということだ。」
    ???「ホント画期的だよねぇ。特許取れるんじゃない? コレ」
    ヴル「ただ、これだけの機械を作るにはコストがな……」
    ???「あー、そっかー。」
    ???「めちゃくちゃお金ないと無理かー。」

    [ヴルの所持している通信機の受信音が鳴る。]

    ヴル「……すまないな、ザッツよ」
    ザッツ「その着信音、いつものでしょ? 気にしないで行ってきなよ」
    ヴル「ああ。有り難くその言葉に従わせて貰おう。」

    [ヴルは厨房から出て、廊下で通信機を起動する。]

    ヴル「俺様だ。」
    ???「お忙しい中、私のようなものの通信に出てくださり、感謝いたします。」
    ???「我が主」
    ヴル「それは構わん。お前が連絡をしてくるということは、火急の用だろう?」
    ヴル「何があったのだ?」
    ???「お気遣いをして頂き、有難うございます。」
    ???「要件なのですが、…………例のアレが動きました。」
    ???「いえ、動かされた……」
    ???「が、正しい表現でしょうか。」
    ヴル「……ラスタよ、それは確かか?」
    ラスタ「はい。間違いありません」
    ラスタ「何しろ、この情報はセブンスが裏を取っています。」
    ヴル「………そうか。二人共、よくやってくれた。」
    ラスタ「勿体ないお言葉です。」
    ヴル「しかし、些か厄介なことになったな。」
    ラスタ「全くです。」
    ラスタ「ヤツも命は惜しかったのでしょう」
    ラスタ「予想外なことではありません」
    ラスタ「それと……気になることがあります」
    ヴル「うん?」
    ラスタ「実は────」

    [場面変更。マクスの病室。]

    マクス「あったよ。この人が時計を買っていったんだ」

    [マクスはマフィーに帳簿を見せるように前に出す。]

    マフィー「本当」
    マクス「サドマン=スニキット……」
    マクス「という方だ。」

    [目を見開くマフィー。クリス、マッキンリーも驚いた顔をする。]

    クリス「そ、それって……」
    マッキンリー「三ヶ月前の行方不明者……」
    マッキンリー「……その一人だ」
    マクス「………犠牲者に?」
    マッキンリー「……残念ですが」
    マクス「そうか……。」
    マクス「今度来るときは、妻の時計も……と言っていたな……」

    [時計を見つめるマクス。クリスの目に、マクスの胸元から淡い光が漏れるのが映る。クリスは呆然とした顔になる。その時、ノック音が部屋に響く。]

    ???「面会中に失礼します。」
    ???「マクスさんとご家族様に新しい先生を紹介したいのですが、今大丈夫でしょうか?」
    マクス「あ…ああ、はい。どうぞ。」
    マフィー「新しい先生?」

    [マクスの返答に、扉が開き、一人の白衣の女性と看護師が一人、入室してくる。]

    レンカ「……失礼します。」
    レンカ「……マクス=アップリーさんと、ご家族の方……ですね?」
    マフィー「あ……はい。娘のマフィー=アップリーです。」
    マッキンリー「義弟のマッキンリー=コゴットです」
    レンカ「私は今後、マクスさんの……」
    レンカ「……ケアに協力させていただきます、レンカ=ベルドリッチです。」
    レンカ「それで、ええと……」
    レンカ「そちらの方は?」
    クリス「あ、僕は…」
    マクス「僕のお店のお客さんです」

    [驚いてマフィーとマッキンリーがマクスの方へ振り向く。構わずにマクスは微笑んでいる。]

    マクス「ちょうど娘が彼と友達だったみたいで、わざわざここのことを娘から聞いて、」
    マクス「訪ねてくれたんです」
    レンカ「そうでしたか。」

    [マクス、レンカをまっすぐと見る。レンカはその視線を見て半歩片足を下げるも、すぐに直す。マクスは微笑んでいた。]

    レンカ「……その、こちらのオリエンテーションが終わり次第、また主治医の先生と伺います」
    マクス「分かりました。待っていますね」

    [レンカと看護師は会釈すると、病室から出ていく。]

    マクス「……、話が途中になってしまったね。」
    マフィー「……………」
    マクス「不安そうな顔をしないでおくれ、マフィー。」
    マクス「僕が少しでも元気でいるために尽力してくれる人が増えるんだから。」
    マフィー「………うん………、そう、だよね。」
    マクス「それで、君たちはこれからどうするんだい?」
    マッキンリー「さっき、スニキット氏には奥さんがいるって言ってましたね。」
    マッキンリー「奥さんがどこにいるかは……?」
    マクス「さすがにそこまでは……。」
    マクス「街の人に聞いてみたらどうかな。」
    マクス「僕の店は街の外れにあったけど、そう遠くないところに住んでいると……彼は言っていたよ」
    マクス「今、奥さんが街に住んでいらっしゃるかまでは、分からないけどね……」
    クリス「でも、行ってみないことには始まらないし、いないならまた考えます」
    クリス「体、辛いでしょうに押しかけて、頼み事までしちゃって……すみませんでした」
    マクス「良いんだよ」
    マクス「僕は君が来てくれてよかったと思っている。」
    マクス「もしそれでも僕に申し訳ないと思う気持ちがあるなら……そうだな……」
    マクス「僕と約束をしてくれるかな」
    クリス「約束、ですか?」
    マクス「もしこれから迷うことがあったら、その時は躊躇わないでほしい」
    マクス「……ってことをこの二人に守らせてほしいんだ」
    マフィー&マッキンリー「」
    クリス「それは、どういう……?」
    マクス「その時、っていうのは、きっと僕自身が決めた後の話だから。」
    マクス「今、それがどういう意味かは理解しなくても大丈夫。」
    マクス「君がその約束を守ってくれればそれでいいんだ。」
    マクス「……二人も、分かったね?」

    [マフィーとマッキンリーは呆然としている。マッキンリーは少し項垂れた。]

    マッキンリー「………はい、」
    マッキンリー「義兄さん……」

    [マクスは微笑む。]

    マフィー「……ごめん、お父さん」
    マフィー「私はもう少し、考えさせて……」
    マクス「……うん、良いよ。好きなだけ考えてきなさい。」
    マクス「僕は待ってるから」

    [マフィー、父に背を向けて部屋から出ていく。]

    マッキンリー「……じゃあ、俺たちは先に街へ戻りますね。」
    クリス「え、マフィーさんは?」
    マッキンリー「後でジーニアスにでも迎えにこさせる。どうせ暇だろうしな」
    マッキンリー「……今は一人にしてやりたいんだ。」
    マッキンリー「あいつだって、育ってきたんだからさ……」
    マッキンリー「それに、」
    マッキンリー「働かにゃ、義兄さんの治療代が払えねえからな」
    クリス「……そうですね。」

    [マッキンリーの複雑な笑顔に、マクスが穏やかに笑って返す。]

    マッキンリー「じゃあ、帰ります。」
    マクス「ああ。気をつけて帰るんだよ」
    クリス「あの、ありがとうございました! また、お見舞いに来ます!」
    マクス「ありがとう。楽しみにしているよ。」

    [病室を出る二人に手をふるマクス。二人が出ていったあと、彼は静かな動作で胸に手を当てる。ややあって、病室のドアがノックされた。ゆっくりとした動作で、マクスは扉を見る。]

    ???「どうも、ハタフクです。入室しても?」
    マクス「……はい、どうぞ。」

    [扉が酷くゆっくりと開く。マクスは扉を見つめている。恰幅のいい白衣の男が入室する。]

    ハタフク「先程、ご家族がいらっしゃっていたみたいですな。」
    ハタフク「たくさんお話はできましたかな?」
    マクス「はい、ハタフク先生のお陰で」
    ハタフク「いやいや、私はあなたのご病気に、未だ医者として何もできていません。」
    ハタフク「医者でありながら、恥ずかしい限りで……」
    マクス「お気になさらないでください」
    マクス「一時は衰弱し、話すことも辛かった僕を救ってくださったのは先生ですから。」
    ハタフク「そう言ってもらえれば些か……。」
    ハタフク「しかし、今日こそは……いや、今日から」
    ハタフク「あなたの治療についてさらに追求をできるようにですな……」
    ハタフク「このレンカ=ベルドリッチ先生に来ていただいたのだよ。」

    [ハタフクの後ろに立つレンカ。分からない程度に複雑な表情を浮かべている。]

    ハタフク「レンカ先生、彼に新しい治療法の説明をお願いできますかな?」

    [レンカ、一瞬の間。]

    レンカ「……では、説明致します……。」

    [場面変更。森の中。木の幹を背に座り込むトポリの姿。その足元に何者かの影が現れる。]

    ???「トポリさん。こんなところで寝ていたら、風邪を引いてしまいますよ。」

    [トポリがゆっくりと目を開くと、そこにはルッツがいた。]

    トポリ「……あはは。ちょっとは褒めてよ。」
    トポリ「これでも怪我しないで帰ってきたんだからさぁ。」
    ルッツ「………と、言うと?」
    トポリ「………どこから漏れたんだろうね。」
    トポリ「見つかっちゃってたみたい。」
    ルッツ「………………」
    ルッツ「そうでしたか。」
    トポリ「やっぱり驚かないね」
    ルッツ「ええ、まあ。予測はしていましたから。」
    ルッツ「そのルートを掴めていないのが残念でなりませんよ。」
    トポリ「東の国ではソース、っていうんだっけ?」
    ルッツ「俗語や隠語の類いですよ、それは。」
    トポリ「あ、そうなの。」
    ルッツ「しかし、それなら私達のこともハッキリしていないということです。」
    ルッツ「目はつけられているでしょうが、それならそれで問題はありません。」
    トポリ「………損な役回りだよねぇ、ホント。」
    ルッツ「損をしない立ち回りをすればいいのですよ。」
    ルッツ「例えば……」
    ルッツ「そこで立ち聞きをしていらっしゃる方々に交渉を持ちかけてみる、とか。」

    [トポリとルッツがあるところに目線を向ける。二つの影が木々の間から現れる。]

    ???「我々に交渉、とは大きく出たものだな。平民風情が、という言い方はやめておいてやろう。」
    ???「ほぼ言うとるやないですか。やめなさいよ」
    トポリ「………漫才師の人?」
    ???「あらぬ誤解はやめていただきたい、そう言われてもおかしくはないですがな。」
    ???「こら。私を巻き込むんじゃない」
    ???「いや漫才の元凶あんたでしょうが」
    ???「そんなことよりだ。我々の存在について、お前たちはおおよその予想がついているという解釈で良いんだな?」

    [無言でトポリが立ち上がり、ルッツが体ごと二つの影に向く。]

    ???「何も話さない、か。」
    ???「やましいことがあるからだろうな。如何にも平民らしい手だ」
    ???「平民かどうかって関係あるんか?」
    ???「……まぁ、どちらにせよ、」
    ???「これ以上の問答は不要、でしょうな。」

    [トポリ、ルッツの二人は全く表情が変わらない。無言を貫き、佇んでいるようにすら見える。]

    [二つの影が己の得物を手にした。]


    【第五話終了】








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